俺の私の幼馴染っ!
俺の幼馴染が最近おかしい。
教室で目があったら急にニヤニヤし始める。
今日はちゃんと寝癖直したはずなんだけどなあ。
それにしても毎度毎度ニヤニヤしてるなアイツ。
そのたびに女子にあるまじき顔になってるし。
つい最近もあの顔を友達に注意されてたし。
……あっ、また目があった。またニヤついてる。
俺の幼馴染が最近おかしい。
私の幼馴染が最近かわいい。
特に用事もないくせに私のことを見てくる。
こっちが見つめ返してやると、ふいっと目をそらす。
照れてるのかな? 超かわいい。
もしかして私の色気にやっと気づいたのかしら。
中学生になって早二年。ふふん、気づくの遅かったわね。
身長も伸びたし胸だって大きくなったし。……少しは。
横から友達に「顔!」と注意される。いけないいけない。
あっ、また目があった。超絶かわいい。
私の幼馴染が最近かわいい。
俺の幼馴染がやたら絡んでくる
ここ最近一人で登校していると、途中で後ろから声が聞こえる。
俺の名前を呼ぶ声。何年と聞いてきた幼馴染の声。
全力ダッシュで近づいてくる。足音がどんどん近づいてくる。
そしてそのまま飛びついてくる。抱きついてくる。
今となってはもう慣れたけど、最初の頃は押し倒されていた。
一度避けたこともあったけど、もうやらないと誓った。
そのまま地面に激突して、鼻血垂らして泣かれたら……ね?
しかしなんでこんなことしてくるんだろうか。
意味がないのならできればやめて欲しい気持ちもある。
毎日これだから結構腰とかキツイいんだよ。
キツイ、キツイんだ。キツイんだけど、けれども、
「おはよう!」
肩越しに覗き込んでくる笑顔がかわいいので許すことにする。
俺の腰よ、なんとか耐えてくれ。
俺の幼馴染がやたら絡んでくる
私の幼馴染が私を置いて登校する
朝、鞄を持って家を出ると、私はすぐさま走り出す。
今日も今日とて置いていかれた。隣のアイツに置いてかれた。
去年の夏までは、ずっと一緒に登校してたのに。
家の前で待っていてくれたのに。
少し経って彼の背中を見つけた。今日も一人だ。
私が名前を呼ぶと、彼はピクリと反応した。
その反応を見届けて、私は飛びつく。思い切り。
避けられたときは痛かったけど、
身体もそうだけど主に気持ちが、
でも、君ならきっと受け止めてくれるよね?
今日も明日も明後日も。
毎日毎日これだから、君は身体が痛いかもだけど、
私を置いて登校している罰なのだ。
ついでに胸も押しつけてやる。 どうだ、嬉しいか?
私の幼馴染が私を置いて登校する
俺の幼馴染が暑いらしい
俺に追いつくために走ってきたからだろうか。
彼女の呼吸が少し荒らいでいる。汗もかいているようだ。
「暑い、暑い、暑い!」
そう言ってスカートの裾を持ち、バサバサとはためかせる。
それで涼しくなるのだろうか。履いたことないからわからない。
しかし夏が明けたばかりでまだまだ暑いのも確かだな。
「確かに暑いな、少し速歩きにするか」
「ふえっ、え、あっ、うん」
学校のほうが涼しいだろう。クーラーはまだあるし。
俺の幼馴染が暑いらしい
私の幼馴染が恥ずかしいらしい
暑いというのを口実に、スカートをはためかせてみた。
いや、暑いってのは本当なんだけど。
わざと、パンツが見えるように大きくゆっくり……ね?
ふふん、効果は絶大だったみたいね。
急に歩くスピードをあげちゃって。私に顔をみられたくないの?
もしやもしや、赤面してるのかな? かーわいいっ!
その赤面も、暑さのせいにしちゃう?
今日はいつもより、イジるネタが増えたわね。
あー、楽しみだなー!
私の幼馴染が恥ずかしいらしい
俺の幼馴染がめちゃくちゃ見てくる
視線が痛い。幼馴染からの視線が痛い。
どうしてだ。どうして今日はこんなに見てくるんだ。
なんだ? 今朝なにかやらかしたのか? 俺。
休み時間は当然のことながら、授業中もチラチラ見てくるし。
えー……、全くもって心当たりが無いんだが。
そして毎度のことながら、見つめ返してやるとニヤニヤする。
もしや、朝なにか俺にくっつけでもしたのか!?
そしてそれに気づかない俺を嘲笑って……、
慌てて背中や頭や確認してみたが、何もついていない。
違うのか? それともまだ俺が気づいてないだけ?
チラッとアイツのことを見てみると、やはりニヤついている。
相変わらずこっちをずっと見てきているようだだた。
俺の幼馴染がメチャクチャ見てくる
私の幼馴染はパンツが忘れられないみたい
教室についてからずっと監視してみたけど、
どうやらパンツが忘れられないみたい。チラチラ私を見てくる。
ほんっとかわいいんだから。……あっ、またこっち見た。
ふふん、思い出してるんでしょうね。私のパンツを。
今日は私のとっておきのパンツなんだから。
黒色でふりふりの、勝負下着? ってやつなんだから!
忘れられないよね? 忘れられるはずないわよね?
別動作してこっちを見てないふりしても関係ないんだから。
背中がかゆいの? 頭がかゆいの?
違うでしょ、パンツを忘れられないんでしょ?
ほんとかわいいんだから。
そうだ、丁度いいからちょっかいかけてやろうっと。
私の幼馴染はパンツが忘れられないみたい
俺の幼馴染が何言ってんのかわからない
どうしてこうなったのだろうか。目の前に彼女がいる。
すげードヤ顔で立ってる。今にもふふんって言いそうだ。
「えっと、どういう要件で?」
もしやさっきまで俺のこと見てたことと関連ある?
「忘れられないんでしょ?」
……は? いや、えっと、……は?
「忘れられないんでしょ? 朝のこと」
朝のことって、やっぱり原因は朝にあったのか。
しかし、朝のことと言われても心当たりが無いんだが。
「もう。仕方ないわねえ。もしどうしてもって言うなら、もう一度だけ見せてア、ゲ、ル!」
見せてあげると言われてもなあ、一体何の話をしてるんだ?
てか「あげる」のところ、そんな言い方する人初めて見た。
「なあ、ちょっと話が掴めないんだが」
「もう、恥ずかしがっちゃって。正直に言いなさいって」
だから、ほんとにわからないんだって。
……朝、朝に何があったっけ?
俺の幼馴染が何言ってんのかわからない
私の幼馴染がしらばっくれる
むむむ、どうしても認めたくないみたいね。
まあ、その気持ちもわかるわ。教室の中だし、人目もあるし。
でも、私は諦めない。恥ずかしがってる顔が見たい!
けれど、一向に認めようとしない。
仕方ないわね。こうなったら最終手段を使うんだから。
「でも、ホントのホントは忘れられないんでしょ? 私のパンツが」
「パンツ? いや、何の話だ?」
ふぇ? え、ちょっと待って、
動揺すらしないってどういうこと!?
「いや、だって朝にあなたに見せたじゃない! 私のパンツ!」
「そんなもの見てないぞ? てかいつ見せてきたんだ?」
「スカートをバサバサさせたでしょ! わざと大きくゆっくり動かしてあげたのに!」
「知るかんなもん。とにもかくにも見てないものは見てないぞ」
「もおおおおお! ちゃんと見なさいよおおおおお!」
そう言って、私はスカートをたくし上げる。
どうだ、これなら見えるで……しょ…………、
「あ、あ、あ…………」
嘘、えっ、ちょっと待って、
「な、なんでもないっ!」
私は思わず逃げ出した。
何やってんのよ、私。
私の幼馴染は本当に知らなかった
俺の幼馴染が逃げ出した
ちょっと待てよ、いきなりどこに行くんだよ!
逃げ出した彼女に、反射的に俺は立ち上がる。
考えるよりも先に走り出す。
もうちょっとで授業始まるけど、そんなこと気にならなかった。
教室を出て左に進んでいったのはわかる。
でもその先は姿を見失った。
どこへ行った? どこへ……、
今のアイツは人目につかないところに居るんじゃないだろうか、
酷く赤面していたし、そもそもあんなことした後だし、
……嘘でも見たって言えばよかったか。
いや、今はそんなこと気にしてられない。
途中先生に一回すれ違ったけど、
チャイムが鳴ってヒヤヒヤしたけど、
彼女を置いて教室に戻るなんて考えられない、
俺の幼馴染はどこにいるんだ?
私の幼馴染に合わせる顔がない
からかおうとして、空回りして、
そして教室から逃げ出して、階段の陰で私は何をしているの?
……彼は今何をしてるんだろうか。
チャイムが鳴ったから授業受けてる?
私が帰ってきてないのを心配してる?
……いや、それも私の思い過ごしか。
彼は私にそこまで興味がないんだ、
だから朝も置いて行かれるんだ。
ポロ、ポロリ、涙が流れる。
悲しいな、苦しいな、
好きな人に、興味を抱いてもらえないって。
こんなに、こんなにも辛いだなんて。
先生に見つからないように、音を殺してすすり泣く。
嗚咽を飲み込み、痛みを覚える。
近くの廊下を駆ける音がする。
今は見つかりたくない。教室に戻りたくない。
皆がいるから。何より君がいるから。
こんな顔見せたくないから。
「いた! やっと見つけた……!」
えっ……?
聞き覚えのある声、顔を上げてみる。
私の幼馴染がそこにいた
俺の幼馴染を見つけた
いた、よかった、見つかった、
よかった、本当によかった、
いなくならなかった、どこか行ってしまわなかった、
よかった、よかった、本当に。
そう思ったら、全身の力が抜けてきた。
その場に座り込んで、安堵の息をつく。
涙も流れそうだったけど、かっこ悪いので我慢した。
彼女は静かに泣いているようだった。
えっと、こういうときってどうすればいいの?
わからない、わからなくって、
「だ、大丈夫。今度はちゃんと見たから。パンツ」
言ってから俺は何を言っているんだとそう思った。
でも後悔するよりも先に、
「あ、はは、あははっ、何言ってんのよ、ホントに」
彼女が、小さく笑ってくれた。
「なあ、ひとつ提案なんだけど」
このまま授業終わるまで、二人でここにいない?
僕の幼馴染にそう提案してみた
私の幼馴染はとても優しい
彼の提案はびっくりするようなもので、
でも、私にとっては嬉しいもので、
どこか不安なところもあったけども、私はコクリと頷いた。
彼は私の隣りに座って、何も言わず、何も聞かず、
そっと寄り添ってくれていた。
どうかこの時間がずっと続いてくれればいいのに、
そう思ってしまった。
けれどこのままだと、この時間は終わってしまう。
魔法のような時間も、チャイムの音で解けてしまう。
なら、それなら、
壊れるのは確かに怖かった。でも、
この時間を無駄にして、未来を壊すのはもっと怖かった。
「あの、さ」
彼が私のことをどう思っているのか、
どうして朝に私を置いていくのか、
怖いけど、とっても怖いけど、
どうか私に、教えてくれない?
私の幼馴染に答えを求める
俺の幼馴染の不安を知る
俺が彼女をどう思っているか。
仲のいい友達だと思っている。……いや、ちょっと違う。
どっちかって言うと、好きな人。言うのは気恥ずかしいけど。
気恥ずかしさから、朝に彼女を放って行っていた。
でも、それが彼女を不安にしていた。
彼女を不幸にしていた。
それを知って、俺はすごく後悔をした。
謝った、何度も謝った。
俺はなんてバカなことをしていたんだろう。
そう思って謝っていると、
彼女も俺に謝ってきた。
今日のこともで謝ってきた、
毎日飛びついてきていることについても、
いや、どちらも俺が悪いんだろうけど、
……もし、謝ることで彼女の気が楽になるのなら、これでいいのかもしれない。
ごめんなさい、ごめんなさい。
階段の下で二人して、そう言い合っていた。
最初はふたりとも悲しい顔で、
最後はふたりとも笑い合って、
ごめんなさい、ごめんなさい。
俺の幼馴染が笑顔になった
私の幼馴染は立ち上がった
チャイムが鳴った、魔法が解けた、
教室に戻ろうかと、立ち上がった彼が手を差し伸べてくれた、
私はその手をとって、立ち上がって君の横に、
二人で並んで廊下を歩く。
教室に戻ったらみんなになんて言われるだろうか。
先生になんて言い訳しようか。
そんなことをいろいろ考えてみた。
でも、考えがまとまらない。
それよりも、私は今やりたいことがある。
背伸びして、彼の耳に口を近づける。
「ねえ、私、君のこと――」
カアアッと私の顔が熱くなる。
でも、それは君もだよね?
顔をそらしてごまかしてるけど、耳の先まで真っ赤だよ?
ほんと、ほんと、君っていう人は、
優しくて、かっこよくて、それからそれから、
私の幼馴染はとってもかわいい
俺の彼女の朝は遅い
いつも登校する時間になった。
家を出て、地面に鞄を置いて空を見上げる。
雲が流れて、鳥が飛んで、
しばらくしたころ、ドタバタという音が聞こえはじめた。
もう少しで出てくるかな?
まずいまずい寝坊した、
これじゃ走って追いつくか微妙すぎる、
とにもかくにも急いで支度しないと!
制服よし、鞄よし、朝ごはんは……いいや、
それじゃあドア開けて行ってきます!
……って、あれ?
私の彼氏が空を見上げていた
「おはよう」
「お……はよう。待っててくれたんだ」
「……まあな。それより早く行かなくてもいいのか?」
「えっ……と、まだ大丈夫じゃない?」
「いや、今日お前日直だろ?」
「あっ……、ああああっ!」
「ほら、行くぞ!」
「うん!」
俺の彼女は隣りにいる
私の彼氏は隣りにいる