運命ってやつ?
キラキラネームって大変そうですね・・・。
「清田優獣です・・・」
俺は力なくそう言った。何でこんなに何度も名乗らなきゃいけない名前をこんなものにしたんだ・・・!怒りに荒れ狂う俺の心の中とは裏腹に、彼女はキラキラと微笑んでいた。
「運命ですね!」
・・・は?いやいやいや、ちょっと待て。まさか、美女と野獣とか言うんじゃ・・・。
「美女と野獣じゃないですか!」
当たってしまった。いや、分かってるよ?あなたのこと知ったときから美女と野獣だと思ってましたよ?でもまさか自分のことを堂々と『美女』って言うだなんて思わないじゃないですか。と、言うか、別に俺の中身王子じゃないし、名前とはいえ野獣とか傷付く・・・。
「これからよろしくお願いします!王子様♡」
彼女は俺の心を全く理解していなかった。よろしくってどういうことだよ・・・。彼女は意外とロマンチストで、不思議ちゃんらしかった。マジか。ていうか美女と野獣ってこんなストーリーだっけ。俺の疑問を1ミリも理解していない彼女。
「はぁ」
呆然と立ち尽くす俺を置いて、彼女はスキップをしていった。
嵐のような人だ・・・。俺は彼女が立ち去っていってから、重大なことに気が付いた。よろしくってことは、また俺に話しかけるってことでは!?
俺はあの嵐のような数分で、学校のアイドルである彼女への憧れは消えていた。代わりに、平凡を壊される恐怖を覚えた。
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キャー!!!まさか、こんな早くに運命の人と出会えるとは。
私――桐須美女は興奮していた。
私は、キラキラネームである自分の名前が、あまり好きではない。美女、なんて、自分で言うことじゃないだろう。そんな名前を付けた親を恨みたい気持ちだったが、その名前に込められた意味は嫌いではなかった。
ベルのように美しい心を持ち、野獣のような、本当に心が綺麗な人と出会って、幸せな人生を送れますように。
ベルも好きだし、意味も悪くない。私は親を恨むのを止めた。
でも、野獣みたいな人はそうそういない。私に絡んでくる男の人は、皆私の顔目当て。可愛い、は何度も言われたことがあるけど、優しい、は凄く少ない。それに、皆下心丸見え。恋愛感情なんてこれっぽっちも湧いてこない。
でも、彼は違った。下心なんて全然見えないし、彼は私にキャーキャー言わなかった。普通の人と同じように接してくれて、それが良かった。落ち着いた。それに、キラキラネーム。凄い共感できそう。
明日も話しかけよう。そう心に決めた。そして私は、彼のクラスを聞いていないことに気が付いた。
クラスを聞き忘れた美女、どうするのか???