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運命の人

 さっきは興奮して簡単に考えてしまったけど、告白をするのだ。

 それはもう考えただけで恥ずかしい。


 コウならきっと告白を断ることはないだろう。

 うん。きっと大丈夫。

 だってアタシ達めっちゃ仲いいし。


 コウにアタシ以外に好きな人がいるなんて考えられない。

 それくらいは自惚れてもいいはずだ。


 ていうかコウ絶対アタシのこと好きでしょ。

 あれで実はアタシ以外に好きな人がいたとか言い出したらむしろ殴る。


 だから失敗するとかそんなこと考えなくてもいい。

 今の関係が壊れるとかもない。

 後は伝えるだけだ。

 絶対成功する。そう確信できるくらいアタシたちは仲がよかったはずだ。


 でも──。


 だからといって告白するとなると、それはとても勇気がいることだった。

 ベッドに寝ころんだまま何度もうめき声を上げて転がっている。

 普段は冷静な弟のダイキまでもが、その声を聞いて心配になり、アタシの部屋までやってきたほどだった。


「コウさんと結婚することになった……?」


 事情を説明すると、ダイキが怪訝な表情を浮かべた。


「や、する事になったっていうか、コウが婿養子に来てくれるなら結婚することを許してもらえたというか……」


「で、告白できるの?」


「………………が、がんばる」


「姉さん度胸はあるくせに、いざというときにヘタレだから。どうしてそんなこと言っちゃったのかな」


「……だって、ムカついたんだもん……」


 感情的になるのはアタシの悪い癖なのはわかっているんだけど、なかなか直らない。

 ダイキだってそれはわかっているので、ため息をつくだけだった。


「はあ。今からでもやっぱり無理だって言ってくれば」


「ダメだよ。だって『約束』しちゃったから」


「……じゃあもう告白するしかないんじゃない」


 実に論理的な答えに思わず苦笑がこぼれてしまう。

 いかにもアタシの弟らしいクールな答えだ。


 感情的なアタシと、論理的な弟。

 正反対だとよく言われていたけど、おかげでこうして冷静になることも多かった。


「うん。ありがと。アタシのことを心配してくれるなんて珍しいね」


「……。姉さんが僕のことをどう思ってるかわからないけど。これでも僕は姉さんの弟だよ」


 確かに、家族というのはそういうものだろう。

 アタシだってダイキが好きかといわれたらちょっと違うけど、もし困っているようなら助けたいと思う。

 それが家族というもののはずだ。


「ありがとうダイキ」


「それに、姉さんみたいな面倒な人を好きになるのはコウさんしかいないと思うし。ここで失敗したらきっと一生結婚できないよ」


「えっ、そこまではいわなくてもよくない……?」


 アタシってそんな面倒な女だと思われてたの?


『約束』してしまった以上、それはもう覆らない。

 でも逆に考えれば、約束した以上、告白が成功すればアタシ達の関係を認めてもらえるということだ。

 それはわかっているのに。


「うう……。どうすればいいの……」


 告白がこんなに大変だなんて思わなかった。


「コウから告白してくれないかな……」


「もうヘタれてるよ」


 そんなの都合のいい妄想だってわかっている。

 でも想像くらいなら許されてもいいじゃないか。

 奇跡とか、運命とか、そういうものが実際にあるのだとしたら、今こそ起きるべき時なのに。


 そのときだったんだ。

 あのメッセージが届いたのは。


『大切な話がある。明日の放課後、屋上に来てくれないか』

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