2、四月一日 斗真side
嫌です。諦めません。
静かな室内で僕の声が響いた。
「僕が諦めたときが、諦めるときです。」
真剣な顔で僕は大人達に向かって宣言した。大人達はなんとも言えない顔で僕を見てくる。
何故こうなったのか?何度考えてもわからないが、諦めたくないのだけは、はっきりわかっていた。
この話し合いの少し前高校一年生になる四月一日交際が一周年になる少し前のエイプリルフールのこの日僕の彼女は嘘みたいに記憶を無くした。
・・・僕のことだけを・・・
その後、自宅に帰りこの数日のことを考えていた。
あの日、四月一日彼女の友人から通信アプリで彼女が階段から落ちたことをしった。慌てて彼女のスマホに電話をかけるが繋がらない。いてもたってもいられなくなり病院へ駆けつけた。これが虫の知らせというのか、そこには彼女のお母さんと僕と会うまでに一緒にいた彼女の女友達と看護師がいた。
ホッとした、よかった、怪我はないみたいだ・・・。
彼女の名前を呼んだ。だが、彼女の反応がない。
あれ?聞こえなかったかな?もう一度呼ぶ。
「光!!」
聞こえてるみたいだけど、返事がない。キョトンとしている。近くにいた、僕のことを知っている彼女のお母さんと友人が僕のことを教える。
「さっき、通信アプリで連絡したんだよ」
「心配して来てくれたみたいだね、よかったね」
だけど彼女からは信じられない答えが帰ってきた。
「えっと、・・・ごめん、誰だっけ?」
そこにいた、看護師、彼女のお母さん、彼女の友人は固まり思わず「「「え?」」」という声が出た。
一番最初に動いたのは看護師だった。「少し、待ち合い室でお待ちください先生を呼んできます」そう言って颯爽とかけていった。
そして詳しく検査するので時間がかかるらしく僕と彼女の友人は帰された。
なにがなんだかわからないまま連絡を待った僕は彼女の両親から連絡があり彼女の今を教えてもらえた。記憶がないのは今のところ僕のことだけらしい。他のことは全て覚えているのに僕とのことだけを忘れているらしい。そんなことあるのか?思わずうつむいて呟いてしまった。絶望的な気持ちだった。15歳という年でこんな気持ちを経験するとはおもわかなかった。彼女の両親は気を使って色々言ってくれたが頭に入らず最後の言葉だけが頭にぽんと入ってきた。
「いつキミの記憶が戻るかもわからないそうだ、娘もキミも若い。この春からは高校生だ、新しい生活を送ってくれてもかまわない、キミには申し訳ないが恐らく娘は・・・」言葉を継ぐんだ彼女のお父さんは僕に気を使ってくれた。たったの15歳の僕に。
「嫌です。諦めません。ぼくが諦めたときが、諦めるときです」
この言葉を自然と言ってしまった。
彼女の両親は少し困った顔をしながら「そうか、」と少し微笑んでくれた。その困った顔と微笑みに色んな思いがあるのは何となくわかったけど気づかない振りをした。
そして、自宅でじっくり考えた結果。彼女の両親と友人にお願いして、彼女の持ち物から僕の痕跡を少し消してもらったー。
主にケータイの写メと履歴メールなどを消してもらった。僕があげたプレゼントや思いでの品はそのままにしてもらった。そして彼女の友人、クラスメイトにできる限り彼女に僕のことは言わないでほしいと頼んだ。全てを消すのは難しいかも知れないが今はこれでいいと思った。
そして次に、僕は見た目を変えたー。