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第十七話 凱旋勇者、頭を抱える

shiba様からレビューを頂きました。凄く嬉しいです!本当にありがとうございます!

「がっはっはっは! お主、おなごのわりに強いのぉ」

「爺さんこそなかなかやるじゃねぇか! いやそれにしてもこっちの世界の酒はうめーなおい!」


 ミウやユレールと村長室に入った俺は、その場でずっこけそうになったのを必死に堪えた。


 それにしても何で、何で……。


「アネーゴまでこっちに来てるんだよ!」

「おお勇者~久しぶり~一緒に呑むか~?」

「いやいや呑まねぇし! 質問に答えてないし!」

「なんじゃ呑まんのか。全く年だけは成人をむかえたくせに情けないのう」

「いや爺ちゃん、なに普通にアネーゴと馴染んでるんだよ! 大体ふたりの事知ってるの?」

「ふん、馬鹿にするなよ小僧。さっき聞いたわい」

「さっきかよ! いや、だからどうやって来たのか説明しろよ! いや、それ以前に何で言葉通じてるの?」


 とにかく村長室で酒盛りする二人を一旦止めて事情を説明させることにする。大体村長室で酒盛りって色々ヤバすぎだろ!


「ふん、判ってないやつじゃ。良いか? 既に夕方の5時を過ぎとる。つまりもう職務とは関係ないという事だ!」

「事だ~~~~」

「村長室で酒を呑んでるのが不味いだろ!」


 はぁ、もう言ってて疲れる。とにかく本題だ。アネーゴにユレールの件も含めて聞く。


「うん? 別に難しいことなんてないってばさ。古文書を色々調べてたんだよね~ほら? 異世界から召喚する魔法があるなら異世界に行く魔法もあるはずだろ?」

「いや、だからそれは召喚した相手を送還する為の魔法だろ?」

「それが盲点だったのさ。逆にいえば戻せるならいけない理屈がない。だから本当徹底的に調べて、そしたら出てきたんよ。未完成ではあったけど、私達の世界にある物を別の世界に送るって魔法がね」 


 別の世界にって……そんなものがあったのか。でも、そういえば地球ではこの世界ではありえない技術で作られたと思われるオーパーツの伝説が残ってる。有名所では水晶の髑髏とかだ。


 そういえば、異世界には普通に水晶の頭をしたスケルトンタイプの魔物がいたっけな……うん? まさか? いや考えるのはよそう。


「とにかく、その魔法にあんたを元の世界に戻した魔法の術式を色々組み合わせて、試してみた結果――上手くいったってわけさね!」


 そんなあっさりと……確かに二人とは俺からしたら45日ぶりだが、時間の流れが違う以上、むこうでは精々10日と少し程度な筈なんだが――


「アネーゴ、ところで試してみたっていうけど、それ最初は何で試したんだよ? 鼠とかか?」

「なにいってるんだい。その結果が今目の前にいるだろ?」

「…………はい?」

「だからその結果のふたり、あたしとユレールがいるじゃんって」

「ちょ、ちょっと待て! あんた! ぶっつけ本番でそんな魔法試したのか?」

「そうだけど?」


 体重が一気に100倍ぐらいになったようなズンッとした気分になった。ありえないだろ……失敗した時の事考えなかったのか?


「アネーゴは魔法バカだからいいとして! ユレールはなんでそんな馬鹿な実験に付き合ったんだよ! もっと自分の身を大切にしろよ!」

「おいコラ勇者、誰が馬鹿だコラ」


 ガラが悪いアネーゴは放っておいてユレールに訴える。こんな無茶して、なんかあったら泣くに泣けないだろ!


「で、でも、勇者様に会いたいと願ったのは私ですし……」

「そうだぜ全く。こいつあんたが元の世界に帰ると決まってからずっとめそめそしてるからさ~」

「ちょ、アネーゴってば!」


 マジですか……いや、でもそう考えると、俺が帰る時、ユレールにアネーゴが何かを伝えるような仕草を見せていたのも納得できる。


「はぁ、それにしたってなぁ……大体、これからどれぐらい滞在する気だよ?」

「うん? 一生」

「あぁそうかよ。一生、は!? 一生! な、何バカな事言ってんだよ!」

「そんな事言われても仕方ないだろ? あたしはこっちに来る方法は判っても帰る方法なんて知らないんだからさ」


 は? と発しつつ頭が痛くなるのを感じる。なんだそれ? 戻れない?


「いや! 来たんだから普通に戻れよ!」

「だから、こっちに来れたのはあんたが帰った魔法の残滓を拾ったから、それで残っていた糸を辿るようにしてやってこれたんだよ。でも帰りとなるとその糸がないだろ? 勇者が召喚されたのなんて随分前すぎてもう魔力の残滓すら見当たらないんだからさ」


 俺は頭を抱えた。なんでこう厄介事ばかり。


「おま、何してくれてんだよ! どうすんだよ! ユレールだって困ってるだろ!」

「あ、あの!」

「おう、ユレール! 君からも何とか言って――」

「ふ、不束者ですが宜しくおねがいします!」

「……はい?」 


 何をイッテルノカナ? ユレールサン?


「いやぁめでたいめでたい。全くお前も隅に置けないのう。そこの猫耳の娘どころか異世界でこんな可愛らしくて胸の大きい娘さんさえも射止めてくるのじゃから」

「爺ちゃんまで突然何を言い出すんだ! そんな事勝手に決めるなよ!」 


 くそ! さては爺ちゃんが早合点したな! そういうところあるからな爺ちゃんは!


「何だ? 何が不満だ? こんな可愛らしくて、しかも聞くところによるとまだ18というではないか。24のお前にはもったいないぐらいじゃ。この子は年下で可愛くて巨乳。そっちのミウちゃんも15歳でこんなにも愛らしいこんな好条件そうはないぞ?」

「あのなぁ……大体年齢だって、本当なら同じだったんだよ。こっちにもどったら時間の流れが違っていたってだけで」

「あぁそういえばあんたの爺さんから聞いて驚いたよ。こっちで24歳になったんだってね? まさか弟同然だったあんたが同い年になるなんてねぇ」


 いや、そこはもっと疑問に思えよ。魔法使いだろ?


「こっちは向こうと4倍の差があるんだよ。だから向こうでの1日はこっちの4日になる。俺は向こうの世界で2年過ごして18歳になったけど、こっちの世界では16歳の時から数えて8年経っていたことになるんだ。だから法的には24歳になる」

「ふ~ん、それならやっぱりあたしはこっちの世界にいた方がお得だね。それだけ長生きできる」

「いや、体感時間は変わらないんだが……」


 本当思考が単純でいいよ。


「ところで孫よ。こっちのアネーゴちゃんとは言葉が通じてるのじゃが、ユレールちゃんやミウちゃんとはまだなんじゃ」

「あ! そういえば言葉はどうなってんだよ?」

「おいおい、忘れたのかい? 私は絶世の魔女とも名高い大魔導師よ?」


 いや、それ自分で言うかよ……。


「だから、言語の違いぐらい魔法でちょちょいのちょいさ! 翻訳魔法があればね!」


 翻訳魔法……そういえばそんなのがあったな。しかし、地球でもそれが通じるのか。


「あ! そういえば、そもそもなんでミウがいるんだよ~久しぶりじゃんミウ~」

「にゃ、にゃにゃん! バレてたにゃん!」

「そりゃそんなところにいたら判るって。ほれほれういやつじゃ~久しぶりにモフらせろ~!」

「にゃん! やめるにゃ! ふぁ、耳と尻尾をつかむなにゃ~~ん!」


 ミウが悲鳴を上げた。あぁそうだ。ミウはアネーゴが苦手だったんだよな。こんな風にすぐにいじられるから――

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