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帰還した勇者の村おこし~異世界との交易はじめました~  作者: 空地 大乃
第二章 凱旋勇者の高校編

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第十三話 凱旋勇者、なぜかプレイボール

 結局本当に残りの2時限が体育になった。どうかしてるぜ。

 しかも1時限では野球で勝負とかいい出した。ソフトじゃなくてガチで野球かよ……。

 とりあえず先行は東組だ。そして西組のピッチャーだが……。


「ピッチャー真央!」

「いくわよ!」


 うん、まさかの女子だ。四天王に関しては名乗りあげることすらなかったようだ。そもそも男女混合野球って頭大丈夫か?


『プレイボール!』


 主審は王先生が行う。全く気にもされず普通に始まったぞ……またプロテインを粉のまま食ってるし……。


「ははっ、これは驚いた! まさかピッチャーが女子、しかも今日編入したばかりの真央ちゃんとはね! よっぽど人材がいないのかな?」

「ハハッ、全くだぜ! 大体ミットまで届くのかよ!」


 佐藤……お前見た目のわりにそんなに長い喋りができたんだな。

 そして周りも随分と煽っているけど、なんかこういう場合って――

――ズコオオォオオォオオオオオオオオオォオオオン!


「……へ?」

『スットライィイイィイィイイイィイイイクゥウゥウウ!』

「「「「「「「「「「えぇえええええぇえええぇええええぇえええ!?」」」」」」」」」」


 西組も東組も一斉に驚いた。いや、西組もかよ……判ってたんじゃなかったのか。

 それにしても、案の定だな。大体この手のパターンで馬鹿にしたりするととんでもない上手かったりするんだ。


「いやいやいやいやいや! ちょっとまって! おかしいよ! 何今の! ボールの音じゃないよ! 大砲だよ大砲! なんかアクション映画とかで聞く音だよ! キャッチャーミットからもシューシュー音なってるし! 煙も上がってるし!」

「何を言ってマスカー。この程度ベースボールの世界じゃ当然ね。ヘイッ! 真央、ナイスボール!」

「え? そ、そうなのか?」

「まぁでも、あの外国人が言うなら……」

「そうよね。メジャーとかよく考えたら煙ぐらい上がってた気がしたし、外国人がベースボールがそうだっていうならねぇ」


 いやいやねぇよ。いくらメジャーのベースボールでもそんな事そう起きるはずがないし。でも不思議なもんだな。外国人がそれを言うだけで説得力が……。


「うん?」

「リチャード、この程度なら別にサインなんていらないわよ」

「ハハッ、仕事がなくなってしまいマスネー」

「「「「「「「「いや! お前誰だよ!」」」」」」」」


 一斉にツッコミが入った。俺もツッコんだ、当然だ!


 真央のキャッチャーをしていた男がどうみても生徒じゃなかったからだ。銀髪の髪に碧眼だし、そもそも顔立ちが日本人のそれじゃない。どうみても外国人だ。


「オー申し遅れました。私はリチャードです。よろしくデース」

「「「「「「キャー! リチャード素敵~!」」」」」」


 西組の女子から黄色い声援が飛び交う。東組の女子にしても目がハートになっている。それぐらいのイケメンだ。


「いや、周りもそうだろうが、俺が聞いているのは、なんでどう考えてもこの場に関係ない人がキャッチャーやってるのか? て事なんだが……」

「関係なくはないぞ」


 すると、王先生が彼を擁護するように会話に加わってきた。


「リチャードは今日から臨時で雇われて赴任してきた教師なんだ」

「よろしくデース」

「いやいや! どんだけ臨時が多いんだよこの学園!」

「仕方がないだろう。何かネットで公開していたブログが好評で書籍化が決まったからそれに集中するためにやめたいと前の奴がいい出したんだから」

「またそれかよ! なんで書籍化したら辞めるんだよ! 人生ノープランかよ! しばらく兼業で頑張れよ!」

「辞めちまったもんは仕方ないだろう。まぁ臨時ですぐ入ってくれたのはありがたかったけどな。リチャードも折角だから東の連中にも挨拶しておけ」

「はっは~さっき一応しましたが忘れましたか? 頭も筋肉デスカー?」

「いきなり失礼な事いってないか?」

「日本語は練習中らしいからな。まだイマイチわかってないんだろ」


 いやいや、むしろ白々しいぐらい片言なこと以外は流暢なもんだろこいつ。


「日本語は勉強中ですが担当教科は英語ですからヘッチャラデ~ス」

「お前も英語かよ! 臨時教師揃いも揃って英語かよ!」

「やめたのは現国担当だったから本当はそっちが良かったみたいなんだがな」

「いや、だったら現国の教師雇えよ」

「大丈夫ですワターシ、現国もイケマース」

「なら問題ないな」


 いや、それだとさっきの頭も筋肉発言は判って言っていた事になるぞ?

 あぁ、もう忘れてるんだな……て、問題はそこじゃねぇ!


「いやいや、百歩譲って教師なのはいいとして、なんでその教師がキャッチャーとして試合に出てきてるんだよ。おかしいだろ?」

「ですが、真央の球を取れるのは私ぐらいです。他の生徒に任せたら間違いなく死人が出ますよ。それでいいのですか?」

「死人が出るのは困るな。重症ぐらいならともかく」


 いや、重症も駄目だろ。あと、今このリチャード普通に喋ったな。お前らもっと設定を大事にしろよ。


「安心してください。私はキャッチャーだけの臨時選手デース。バットを振るのは女の子相手だけですから、この場は生徒だけにお任せシマース」

「「「「「「きゃ~リチャード様素敵~」」」」」」


 今とんでもない下ネタをぶっこんできたのに女子の声援が鳴り止まない。イケメンならなんでもいいのか? 俺なんてやってもないストーカー疑惑で非難されまくったのに不公平すぎだろ!


「まぁ、特別ルールで選手の入れ替えは自由だからな。それなら問題ないだろう。死人が出るよりましだ。よし! 試合再開!」


 釈然としないが試合が再開。選手の入れ替えが自由に関しては試合に出てない生徒の事も考えてだ。野球は9人ずつでやるから、そのままだと試合に出ないまま終わる生徒が出てくるからな。


『スットライク! スットライク! スリーアウト! スリーアウト! スリーアウト! チェンジ!』


 そんなわけで結局真央の投げた球に誰も掠りも出来ず一回表が終わった。

 そして真央がピッチャーなら因縁のある俺がピッチャーをやったほうがいいだろうって話になり俺は今マウンドに立っている。

 ちなみにキャッチャーは田中だ。


「しまらせていこーぜーーーー! 妹最高ーーーー!」


 うん、そろそろ通報しとこうかな。

 まぁとにかく、一番打者がバッターボックスに立った。


「あん? お前がピッチャーだ? ハッ、身の程知らずもいいところだぜ。いいぜ、この俺がテメェを地獄に叩き込んでやるよオラ来いオラっ!」


 あの四天王が一人のそんな台詞が――西の観戦側から聞こえてきた。

 ちなみにバッターボックスに立ってるのは全く別の男子だ。


 高橋らしい。普通に高橋っぽい穏やかな顔をしている。ちなみに四番バッターで出てくるのかと言えばそんなこともないだろう。

 何せあいつ、言ってることはやたらハッタリが聞いているのだが、見た目はガリガリだ。ひょろ長だ。肌も青白いし眼鏡だ。


 筋骨隆々の逞しい男子なんてことは全く無い。

 本当、なんでこんなに口が悪いのか不思議なぐらいだ。尤も見た目とは裏腹に実はとんでもない武術の達人などという可能性は、全く無い。断言できる、ない。


 異世界で鍛えられた俺は見たものの能力をレベルで判断できる。だから判る。東組西組合わせた時、男子の平均レベルは3、女子の平均レベルは1だ。


 そんな中、この四天王の一人はレベル-30だ。ぶっちゃけ喧嘩すれば女子でも余裕で勝てる。

 そんなわけですっかり野次担当になった四天王を尻目に、俺は振りかぶって――


「よっしゃバッチコーイ!」

「セイッ!」


 軽く投げた。そう、出来るだけ俺は加減して投げた。


――ズドドドドドドドドドドドドオオオォオオオオ!


「ヒィイィィイイィィイ!」


 だが田中は逃げた。ものすごい勢いで逃げた。おいコラ田中! お前ほんのちょっと球が地面を刳りながら進んだぐらいでなんだそのザマは!


「「「「「「「「…………」」」」」」」」


 そして何故か周りが静かになった。いや、だから俺は軽く――


「ハッ! ちょ高橋! 一塁に早く!」

「あ、そっか!」

「チッ、おい田中早くボール取ってこい!」

「いや取ってこいってボールどこ行ったんだよ!」


 どこって! あぁもう! 仕方ないから俺は常識の範囲内で自らボールを取りに行く。しかし自分で投げておいてなんだけど、結構遠くに行ったな。そもそもこのグラウンド無駄に広すぎだろ! 島か!


「よっしゃ! よくわかんないが回れ回れ! ランニングホームランだ!」

「させるかよ! サード! グラブだけ構えろ!」

「え? こう?」


――スパァアァアアアァアァアアアァン!


「へ?」

「げ!」


 俺の投げた球は見事サードのグラブに吸い込まれてくれた。三塁ベースの目の前まで来てた高橋が驚愕するが、それをタッチして――


「アウウウゥゥウウッツ!」


 ふぅ、なんとかワンナウト取れた。


「……なぁ? 今あいつ500mぐらい投げなかったか?」

「え? き、気のせいだろ?」

「そ、そうだよな。プロでも100mとかなわけだし……」

「――あの馬鹿」


 何か色々囁かれている気がするけど、別に目立ってないよな?


「おい田中。あれぐらい捕れよ」

「無茶言うなよ! 何だアレ! 凶器かよ!」

「大げさすぎるだろ……球速もそんな出てなかっただろ?」

「いや、200kmは出てたろ……」


 それぐらい普通だろ?


「とにかくあんなものは捕れない! 投げるのが妹ならともかくな!」


 マジで警察につれていこうかな? とりあえず田中が変わってくれと他の皆にも聞いているけど一斉に首を横にブンブンと振られていた。


 そんなに嫌なのか俺と組むの……ちょっとショックを受けたが、ふとその妹愛が使えないかと思い立つ。


「田中、俺の目を見ろ」

「え? なんで?」

「いいから」

「お、おい、俺は妹以外と目を合わせる趣味は!」

 慌てる田中の頭を掴み、無理やり俺と視線を合わさせる。

 よし、これで大丈夫。ちょっとした幻覚魔法を施した。これで――


「田中、お前はもう俺の球を捕れる。自信を持て」

「は? いや無理だって。やるだけやるけど、どうなっても怒らないでくれよ」


 そして試合が再開されたわけだが。


「ウォオオオぉおおお! アイラブ妹ーーーー!」


 そんなわけで、田中は俺のボールを無事捕れるようになった。妹妹ちょっとうるさいし、周囲も少し引いているけどな。

 それにしても幻覚でボールが小さな妹に見えるようにしただけなんだが、ここまで効果あるなんてな……。



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