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さあ、家を出よう その3

 3人は佐々木さん宅へと向かった

 今回の対象となる佐々木靖子さんは、右膝は35度位、左膝は45度くらいしか曲がらなかった。

 当然のことながら、両下肢の筋力は弱く、膝を少しでもまげて歩くと膝折れをして倒れてしまうので、歩くときは膝を新転移でロックし棒足状で歩いていた。

 この状態では、階段はもとより坂道ですら歩くのは危険がある。外出には車椅子が必須になるだろう。

 佐々木さん宅への道は、見てきた限りでは車椅子を使うのはかなり無理がある。

 さてどうしたらいいのだろうか。

 とりあえず、佐々木さんの状態を他の職員と検討するために、八島の指示のもと翔太が生活動作をビデオに記録した。もちろん本人はもとより家族の了解をえてである。

 一通りの動作を記録し、家屋の見取り図を作って、佐々木さん宅を辞することにした。

 帰り道、駐車場へ下りる階段の所まで来たとき。

「ここからまっすぐ行くとどこに出るんでしょうね」

 翔太が疑問を呈した。

「確か上の道としたのみとを繋ぐ道に出るはずだが・・・」

「行ってみましょう」

「・・・そうだな行ってみるか」

 3人はそのまままっすぐ歩いていった。

 先は村沢の行っていた通りの道へ出た。

「ここまでは車椅子で来れそうですが、さすがに車を止める場所がないですね」

 八島の指摘通り、そこは車は離合できるが車の量もそこそこあるようで、車を止めておくことは出来なさそうである。

「仕方ないな、このルートも駄目か・・・。

 さあ戻ろう」

 3人は施設へと帰ることにした




 施設へと帰ると関係者が集まって報告会という名の会議を開くこととなった。

 参加するのは、施設長、老健看護師長、老健のPT・OT・ST、通所の介護職、相談員、ケアマネージャー、送迎車の運転を担当する運転手である。

 今回は、相談員である村沢がケアマネージャーも兼任することとなっている。

 報告会においては、簡単な環境の説明が行われた。

 カンファレンスルームには大きなテレビも備え付けられている。これを使って翔太がとってきたビデオをポイント以外は早送りにして再生した。ビデオでは家までの経過だけでなく、佐々木靖子さんの家での状態も流した。

 それらを見て通所リハをどのように行うのかの検討に入った。

 施設長を務める桜坂隆二(医療法人社団桜坂の理事長桜坂隆一郎の弟)医師によって全体の進行が進められた。

「まず通所リハを利用することは決まっているので、利用に当たっての問題点を洗い出してみよう。

 誰が見ても解るがどうやって家から出すかだな。村沢たのむ」

「はい。まず本人の状態から短距離は出来るかもしれませんが、歩行を期待するのはほぼ無理と考えられます。当然車椅子対応ということになります。

 そうなりますと、今ビデオで見た経路を車椅子を使うということになります。

 家から車が通る道まで一番近いのは見ての通り上の通りまで行く道ですが、最後の階段が急で車椅子はもちろん、歩いても無理と判断せざるを得ません。

 さらに駐車場のある所まで行こうとすると、途中に2段の階段があり、ここは車椅子を抱えておりるにも真ん中に手すりがあり無理と考えております。

 皆さんからの助言をお願いします」

 さすがに直ぐには誰も何も思いつかなかった。

 しかし資料を見ていた運転手の畑野が手を挙げた。

「この階段から駐車場へ降りずまっすぐ行ったらどこへ出るのですか?」

「上の道と駐車場のある道を結ぶ別の道へ出ますが、そこは頻繁に車が通る上に車が離合できるくらいの幅で車を止めておくことは出来ないと思います」

「まっすぐ行くのは車椅子で行けるのですか?」

「それは問題ないと思われます」

「では、車を駐車場に止め二人で最初の坂をおろしたところで、運転手が車をとりにいき、その先の道で利用者と車が合流すればどうでしょうか」

「そうすると、他の送迎者はのせておくことは出来ませんね」

「さすがに最初に迎えにいかなければならないでしょう。

 それと雨の日はかなり難しくなると思われます」

「雨の日は車椅子用のカッパを使ってはいかがでしょうか」

 八島が提案したが畑野はそれを否定した。

「家から出た最初の坂が、雨にぬれると滑る可能性が高いですね。

 体がぬれることより、介護する側が滑ると、利用者さんに転落等の迷惑をかけてしまうことになると思いますが」

 通所を行う上で利用者を危険にさらしてまでも行うことはさけるべきである。これは当然のことである。

「まとめると、送迎の一番目に入れて、車を駐車場に止め、二人で迎えにいき。最初の坂を降りたら、運転手が先に車を移動させ先の道で合流するということでどうでしょうか」

 畑野は自分の提案をまとめてみた。

「今、畑野君が行った方法で行うようにすることに異存はないか?」

 施設長の言葉にだれも異存を述べることもなく、みんなが頷いた。

「ではその方向で動くことにしよう。

 後の調整とかは、村沢頼むぞ」

 施設長が最後を締めて会議は終わった。

 佐々木さんの送迎の問題はこれで片付くだろう、しかし実行してからが新たな問題が浮上することが多々ある。これで安心せず気を引き締めていかなければと村沢は思った。

前回、ケアマネージャーを同行させることを忘れてました。

ということで、村沢には佐々木さんのケアマネージャーを兼任してもらうことにしました。

現実にはこのように兼務ということもありますが、実情はかなりの無理を強いられます。

施設ならではのことではあります。

次回は第2話最後。今年中に更新できればと思ってます。

来年は第3話から始めたいな、第1話の助崎の話も書きたいしリアルの仕事もあるし、がんばります。

第3話は失語症の話になる予定です。

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