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新しい職場と友の悩みその4

 飲み会が終わって数日がたった。

 その間、柳司との連絡もする暇もなく忙しかった。

 

 今、翔太には一つの問題が起きていた。

 片麻痺の患者さんが、下肢装具を作ることを拒否しているのだ。

 最初は作ることに反対をしていなかったが、話が進むうちに作らないと言い出した。

 患者さんの娘さんが、装具を着けるとちゃんと歩けなくなると本に書いてあったから、装具を着けるのはだめだというのである。

 現在医者が説得しているがなかなか納得しない。

 しかも、その娘さんは看護士をしているという。

 医療従事者がどうしてと思ったが、山内部長が言うには。

「医療従事者と言っても色んな人がいる。

 特に今は健康関係の色んな本や、健康番組がある。その中から自分がこうだと思ったものだけを信じたくなるもんだ。

 だけどすべて嘘を書いてある訳じゃないから、無理強いもできない。

 その信じている根拠を否定せず、説得しなければならない。

 話が回ってきたときに、君は説得できるか?」

「今、説得できる材料を色々調べています。

 準備だけはしとこうと思ってます」

「そうか、どうしても駄目なときは無理するなよ。

 相談にも乗るから」

「無理なときは相談します」


 その日の昼休み、担当医で脳神経外科の河野医師が、リハセンターへ来た。

「佐川正一さんの担当者は居るか?」

 例の装具問題の患者さんの名前だ。

 翔太はすぐ手を挙げた。

「私ですが、何か?」

 当然装具のことだろう。

「彼の装具の問題は聞いているな。

 明日中に決定したいんだけど、なかなか納得してくれなくて何かいい案がないか君も考えてくれないか」

「明日中ということは、定期での装具士さんがこられるのに間に合わせるためですね」

「そうだ、彼の親戚にPTが居て、反対している娘さんの従兄弟になるのだが。その彼が装具を作ると歩けなくなるから絶対作るなと言っているそうだ」

 本に書いてあったからと聞いていたが違ったのか?と翔太は思った。

 山内部長が聞いてきた。

「そのPTの名前と勤務先わかりますか?」

「助崎というそうだ」

 柳司が言っていたPTだ。

「勤務地は小町市の寄居整形外科だ」

 その場に居たみんながすこいいやな顔をした。

「知っているのか?」

「ある意味有名ですから。

 彼はいつもそういってますから」

 山内部長のその言葉にみんなうなずいていた。

「そうすると説得はなかなか難しいかな」

 翔太は飲み会のときの柳司のことを思い出し

「友達が同じ職場に居ますので、何か参考になることがないか聞いてみましょうか?」

「そうか、お願いする」


 翔太は早速連絡することにした。

 メールでと思ったが、すぐ返事が聞きたいし患者のことに関することには礼儀と思って電話で連絡を取ることにした。

 柳司はすぐに電話へ出た。

 電話口の柳司はすぐ出たにしては落ち着かなかった。

 翔太は患者さんの名前等出さないように、そして助崎PTの親戚であることを知られないように、でもそれとなく匂わせるような感じで柳司に意見を求めた。

「それは難しいね。

 実はこちらもとうとう例の先輩が退職するみたいで、一悶着あっているんだ。

 わるいけど、自分の方から言えるのは、その家族の意見を最大限くむことしかないだろうな。

 実際、彼がそういった患者さんは、他の人の言葉なんかに耳を貸さないし、いくら説明しても聞いてくれなかった」

「苦労してるんだな。

 とりあえずこちらで考えてみる。ありがとう」

 柳司も忙しそうなので手短に切り上げた。

 

 翔太は電話の結果を医師に伝え、自分の方でもメリットを詳しく説明することを話した。

 河野医師は少し残念な顔をして

「やはり普通に説得しかないか。

 出来るだけ早く作った方がいいんだけどな」

「申し訳ありません、いいアイデアも浮かばなかったので」

「しかたないよ。自分の考えにとらわれる人は、他人の意見等なかなか聞いてくれないからな。

 君も出来るだけ進めてくれ」

「わかりました」

 医師の方にも諦めたような何とも言えない脱力感が感じられた。

 翔太も説得する自信はなかった。

 

 次の日翔太も問題の娘さんに一生懸命説明したが、やはり無駄だった。

 昔は医師が作ろうと言ったら家族もすぐ承知してくれたらしい。

 しかし今は、何をするにしても同意が必要になっている。

 しかも、今はネットやいろいろなメディアによって様々な健康情報や医療情報が蔓延している。

 それらがすべて正しい情報であればいいが、中には完全に根拠のない情報もある。

 煽るために医療を否定するのもある。

 その中から本当に正しい情報を得ることは、医療の専門家でも難しくなってきている。

 知らず知らずのうちに、自分にとって都合のいい情報だけを選択することも多々ある。

 新しい研究の結果としてあげられているものもある。それがすべて正しいかと言えばそうとは限らない。

 特に検証が十分でない研究結果を、新しいからとすぐ信じてしまう人も居る。

 これらの情報の中から自分の都合のいい物だけをピックアップする人が多くなっているらしい。

 そうなると医師が最良と判断した内容も否定してくる。

 そのために最近はセカンドオピニオンという、その判断を検証できる制度がある。

 ただこの制度を自分に都合のいいことを言ってくれる医師を見つけるために利用している人も居ると聞く。

 セカンドオピニオンと言っても結局は医師の判断を患者が取り上げるかどうかが問題になる。

 力関係を考えると、ある程度医師側が強い方が治療が進みやすい

 だからといって医師が、あまりに強くなっても患者の利益にはならない。

 患者が強くなっても患者の利益にはならない。

 昔は医療従事者と患者の信頼関係が強かったんだなと、翔太は感じた。



 結局、家族の同意は得られず、装具は作らず治療を行うこととなった。

 翔太はスタッフルームで他のスタッフと雑談をしながら。

「装具を作ってくれれば、歩行ももっと治療スピードが進むのになあ」

 周りのスタッフも同意してくれた。

 それを聞いた山内部長は。

「終わったことをあれこれ言っても仕方がない。

 我々は今現在の状況で出来ることをしっかりやっていくことだ。

 今回のことは、我々が患者との信頼関係を築く以上に、他のセラピストが信頼関係を築いていたということだ。

 これをいい教訓にして、患者さんとの信頼関係を築いていかなければならない。

 いい勉強になったと思う方がこれからの患者さんの役に立つ」

 そう言うと翔太に向かって。

「装具が出来なかったからといって、治療がうまく出来ないとか言うなよ」

「わかってます。

 でも、装具があった方が治療しやすかったなと。

 もちろん自分の持つ最大の治療を行います」

「それでいい

 そろそろ帰ろうか」

 山内部長の締めでみんなが帰宅準備を始めたとき、河野医師がやってきた。

「岩波君。

 佐川さんが明日転院になった」


 突然のことで、一瞬何のことかわからなかった。

どうやら5回目で区切りをつけれそうです。

リアルが忙しくなりそうなので書きだめをしておかなければ。

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