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新しい職場と友の悩みその3

 店に誰かが入ってくる気配があった。

 「あら、久しぶりね。

 おひとりですか?どうぞカウンターが開いてますよ」

 入ってきた客に、ここのママが応えた。


 そのすぐ後に翔太は突然肩を叩かれた。

 思わず振り返るとそこには大池の姿があった。

「よっ、不景気な顔をしてるな」

「先輩・・・」

 一度あったきり、しかも職場で言葉すらかわしていないのに。どうして覚えているのか不思議でたまらなかった。

「おまえ、山内のとこの新人だろ。

 俺は一度見た顔は結構覚えているんだ。

 まあはっきり言うと、山内のとこに行ったときに、お前うさんくさそうに俺の顔を見ていたから、よけいに覚えているんだ」

「それは・・・失礼しました」

「今日は新人たちの飲み会か?」

「わかるんですか?」

「今の時期、研修やその他色々落ち着いてくるところだから、飲み会にかこつけて愚痴の言い合いだろ」

 そういうと翔太の隣りへ座った。


 3人ともなんでわかるんだと思ってしまった。

「俺たちもそうだったからな」

「な・・・、なるほど・・・」

「3人ともPTなんだろ。

 もし困ったことがあって上司にも相談できないことがあったら、俺が相談に乗ってやるぜ。

 割引料金でな」

 大池は突き出しをつまみながらママの方を向くと

「この間入れてた瓶がまだ残っているだろ、あれをだしてくれ。

 君たちも飲めるだろ・・・飲んでるから大丈夫だな。

 彼らにも出してくれ」

「いいんですか・・・。

 ごちそうになります」

 翔太が礼を言うと、柳司が小声で聞いてきた。

「この人誰だい。

 翔太のところの先輩か?」

「昔うちで働いていた先輩らしい。

 今は医療相談室を開いているらしい」

「おいおい、らしいばっかりだな。

 間違ってないぞ」

 大池は3人に名刺を渡した。

 そこには、医療相談所メディカルコンレーション主宰と書かれていた。

「さっきの割引てのはこれでか」

 2人は納得がいったようだった。 

「そうだ困ったことがあったらそこに連絡してくれ。

 それなりに割引はする。

 今日は、難題だった相談事も解決したし、気分もいいから愚痴位聞いてやれるぞ」

「さすがにそれは・・・」

 翔太は、まだ2回目の出会いであり、ちょっと顔を合わせた位なのにそこまで世話になるのはと考えたが、柳司のことを聞いてみるのもいいのかと思った。

「そうだ、柳司、さっきのこと相談してみたらどうだろう」

「でも、あれは・・・。

 職場の恥みたいなことだし・・・」

 柳司が渋っていると。

「何だ言ってみろ。

 今日は特別に無料で相談に乗るぞ」

 大池はその先を促し、一路が

「いいですか、割引でなく無料で」

「何のかわいい後輩の悩みだ。

 それに給料もまだまだ少ないだろう。

 こんなときに商売っけなんか出せないさ」

 酒が入って少し酔っているようだ。



 柳司は先ほどの話を大池に聞いてもらった。

 大池は少し考えるようにして。

「難しい問題だな。

 ところで、赤坂と言ったな。

 職場はどこだ」

「隣りの小町市の寄居整形外科です」

 大池は思い当たったように。

「あそこか。

 ということは、助崎PTが居るとこか。

 なるほどな、あいつなら考えられるな」

「ご存知ですか?」

 赤坂の問いに

「まあ同期だからな。

 あいつも悪いやつではないんだが、一つのことにこだわりすぎて他のことが見えなくなるからな。

 もう少し色んなことを考えられるようになるといいんだが。

 でも、さすがに他のPTの批判を患者さんにするとはな。

 ああいうのは本当に仲のいい仲間内だけでするべきなんだが。

 問題にならなきゃいいけど」

「やっぱり問題ありますよね」

 柳司が同意を求めると

「その批判されたPTや病院に伝わらなきゃ問題にもならないだろうが。

 いや、場合によったら伝わっていても、向こうが問題にしてないかも知れない」

 大池も深刻な顔をしていた。

「知っていて問題にしないってこともあるんですか?」

 3人ともそんなことあるだろうかと考えていた。

「あるぞ、いくつか理由はあるがあるぞ。

 ひとつは、批判された側が全く相手をしていない場合。

 あきらめている場合。

 他にも色々あるが、結局相手にしている暇があったら、自分の仕事をちゃんとする方がましだからな」

 手元にある水割りを一口飲むと

「それでも、やっぱり問題は問題だ。

 赤坂君、そこは君と助崎と2人だけなのか?」

「いえ、もう一人経験3年目の先輩がおられます」

「そっちはどうなんだ」

「彼もかなりストレスになっているようで、もしかしたら退職もあるかも知れないです」

「そうなると色々問題が出てきそうだな」

 大池は深く考えているようだった。

 既によいはさめているようだ。

 しばらくの逡巡の後

「彼に関しては俺の方からそれとなく話を通してみよう。

 もちろん君から聞いたことは匂わせもしないようにするから、大船とまで言わないが期待はしてくれ」

「いいんですか。今日知り合ったばかりなのに」

「かまわんよ。かわいい後輩の相談に乗るのも、問題を解決に向かわせるのも先輩の義務だ。

 それと君は、今まで通り何もなかったように仕事を続けて、もし何かあったら俺に連絡をくれ」

「ありがとうございます」

 柳司は少し落ち着いたのか、その顔に笑みが戻っていた。

 


 その後は普通に先輩に対するたわいのない愚痴?を言い合い、大池もそれに少しおちゃらけながら乗っていた。

 仕事のことで悩んでいた柳司もだいぶ落ち着いたようで一緒に騒いでいた。

 1時間位騒いで、今日はお開きにということで、互いに連絡先の交換等をした。

 これで柳司も明日からの仕事が少しはしやすくなるだろかと思った。

第1話は3回で終わる予定でしたが5回ほど続きます。

最初の構想と大分変えたので回数が増えました。

構成力のなさが露呈しました。

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