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失くしたもの その2

side hospital


「先生急患です!」

 一週間前、彼は救急部で夜勤をしていた。

「すぐ行く」

 49床の余り大きくない病院。

 そこが彼の仕事場だ。

 彼は脳神経外科医。

「患者は?」

「お風呂場で倒れたらしいです。

 今、救急車でこちらに向かっています」

「意識は?」

「ないそうです」

 救急隊からの情報を看護師から聞きながら準備を始めた。

「CTの準備も必要か・・・」

 救急室はこれから運ばれてくる患者を迎え入れるべく準備が進んでいた。


「到着しました」

「よしすぐ中へ」

 救急隊からこれまでの処置内容を聞きながら、看護師へと指示を飛ばす。

 体に打撲の跡はない。

 倒れた状況等から考えても脳血管障害の可能性が大きい。

「すぐルート確保、CTを」

「場合によっては緊急オペの可能性もある。

 すぐ準備を」

 看護師たちは彼の指示を受け、テキパキと準備を進めていく。

 患者はCT室へと運ばれていく。

 後には家族だろうか、泣きながら心配そうな顔をした若い女性と小学生位の娘がいた。

「患者さんの奥様と娘さんです」

 看護師が教えてくれた。

 CTが彼の手元へ届けられた。

 それを目にした彼は家族を別室へと誘った。


 病状を家族へと説明するのは結構難しいことだ。

 解りやすく、そして的確に情報を伝えなくてはならない。

 その解りやすくが難しいのだ。

「佐川さん、あなたの旦那さんは今非常に危険な状態にあります」

 彼はCTをシャーカステンにはさみ、そこに移されたある部分を指差しながら

「ここに白く移っているのは、脳の血管が破れ出血している部分です。

 出血そのものは治まっているようですが、血液が固まって脳を圧迫しています。

 このまま放置していると生命の危険に陥ります」

 奥さんは不安そうな顔をしたままじっとと聞いている。

 娘さんも不安そうな顔を隠せない。

「そこでこの血液の固まりをとるために手術が必要です」

「手術ですか・・・。

 手術をすると助かるんですね」

 すがるような顔をして彼を見ている。

「手術をして血液の固まりを取り除けば、命の危険はなくなるでしょう。

 ただ・・・後遺症が残る可能性が強いです」

「後遺症ですか・・・」

「この出血部位ですと運動と、もしかすると言葉に障がいが出るかもしれません」

「それはどうにかならないのですか」

「大変申し訳ありません。

 私たちも最善を尽くしますが、どうしてもさけられないものがあります。

 出来る限りのことをしますが、障がいが残ることはさけられないと思います」

「でも手術をすると助かるのですね」

「生命の危険は避けられます」

「解りました、お願いします」

 看護師が家族に手術の説明などの手続きに入った。

 彼はすぐ手術の準備へと入った。



side yousuke sagawa


 目を覚ました。

 俺を覗き込む顔があった。

 俺の妻だ。

 泣いている。

 どうしたんだ。

 声をかけたつもりだった。

「う〜ううう」

 声になっていない。

「よかった。

 目が覚めたのね。

 ずっと眠っているのかと思った」

 妻は涙を浮かべながらもうれしそうな顔をしている。

 何があったのか全く解らない。

「うっう〜うう」

 何か聞こうとしても声になっていない。

「声が出ないのを心配しているのね。

 病気のせいで今声が出ないのよ」

 病気?

 俺は病気なのか?

 いや、さっきは看護師みたいな人がいたな。

 みたいじゃなく看護師ならここは病院ということになるな。

 ということは、俺は今病院にいる。

 病院にいるということは、俺は病気なんだ。

 病気と言ったがどんな病気なんだ。

「あなたはお風呂で倒れたのよ」

 そうだお風呂に入ったことは覚えている。

「その原因は脳出血だって言っていたわ」

 脳出血、そんな兆候なかったが。

 いや、最近血圧が高めだと言われていたな。

 それが原因か。

「で、救急車でここに運ばれて、緊急で血液の固まりをとる手術をしたの」

 手術?

 昨日倒れて手術して・・・ん、何日経っているんだ。

「倒れてもう一週間すぎているわ」

 妻は俺の疑問に気づいたのか。

 昨日のことと思っていたが一周間経っているのか。

「これから声を出す訓練や、体を動かす訓練が始まるから少しずつ戻ってくるわ」

 声が出るようになるのか。

 訓練とは、どんなことをするのか。

「だからもう少し休んでいた方がいいわ。

 体力もまだ戻ってないでしょうし」

 確かにそうだ。

 とにかく声をなんとかしたい。

 妻だから意志が通じているが他人だったらどうなんだろう。

 とりあえず妻の言う通りにしておこう。

 別に寝むる訳ではないが、今は余り考えずにいておこう

いつものごとく遅くなりました。

次回から佐川の治療が始まります。

なお佐川以外の名前は意図的につけていません。

病院も桜坂グループ以外の病院です。

桜坂グループは第4話で登場予定です。

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