さあ、家を出よう その4
佐々木さんの通所リハが始まって一月が経った。
村沢はその状態が気になっていた。
中には通所になじめなく2〜3回で来なくなる人もある。その場合は通所施設を変えるなり、訪問介護や訪問リハ等訪問系に切り替えたりする。
今回は送迎バスの配車だけでなく本人の体調等も考え、週1回の通所から始めている。なれてきたら週2回、週3回へと増やしていく予定だ。
実は通所リハは意外と体力を使うのである。最初から回数を多くしても体力が続かず中途半端で終わることもある。そのため今回は長らく外に出ていないことも考慮して少ない回数から始めているのだ。
村沢自身もそろそろ佐々木さん宅への訪問時期である。月1回状態等見るためにも必要な訪問だ。
もちろん通所時は度々様子を見に行っている。しかし毎回見に行くわけにはいかず、また他の受け持ち利用者もあるためそう頻繁に一人だけに構っている訳にも行かないのである。通所スタッフからの報告はその都度受けて入るが、やはり目で見るのと聞くとでは違ったものだし、会うことで本人からの声も聞ける。
村沢は通所ルームへ向かった。
既に今日の迎えは終わっていた。
スタッフは利用者の健康チェック等終わらせており、入浴介助へ赴くもの、利用者と歓談するものなど慌ただしく動いていた。
村沢はそんな中書類と向き合っている通所リハの責任者矢沢初巳のもとへと近づいた。
「おはよう。どうだい、佐々木さんは?」
「おはようございます。
今の所順調です。他の利用者にもなれてきていますし。
この分ならもう週2回に引き上げても大丈夫そうです」
「そうか、もうそのくらいなっているのか?
それならそろそろ週2回にしてもいいかな?」
「体力的にも十分みたいですし。
もしかしたら週3回でも大丈夫かもしれません」
「一挙に週3回はきついだろう」
「いいえ、本人も回数を増やしてほしいみたいなことを言っていると、スタッフや他の利用者からも聞いています」
「なら試しに週2回を2週位続けてみてそれで大丈夫なら週3回に増やすように調整してはどうだろうか」
「そうですねそのように調整しましょう。
それにしても今回は大分慎重に行きますね」
「今回だけに限ったこととは思わないが・・・やっぱりうちの祖母と重ねてしまうのかな?
私情を挟むとはケアマネ失格かな」
「いえそんなことないと思いますよ。
余り急ぎすぎたらその分失敗も大きなものになりますから。
慎重すぎても行けないですけど、今回はうまく言っているからいいと思いますよ」
「そうか、それならいいが」
「それに本人にも変わってきたことがあるんですよ」
「明るくなってきたとは聞いているが」
「それとは別に、なんと最初はしてこなかったお化粧をしてくるようになったんですよ」
「それはいいことじゃないか。
身だしなみに気をつけ始めたということだろう。他人との関わりを大切にし始めた証拠だ。
いい傾向だ」
「そうですね。
会っていかれますか?
今お風呂に入っていますが、もうすぐ上がってこられると思います」
「いや、これから訪問にいかなければならない利用者がいるし、明日が訪問日なので、その時家族と一緒に会って色々聞いてこようと持っている」
「そうですか。
じゃあ佐々木さんには村沢さんがこられたことを伝えておきます」
「そうしてくれ。
しかしこのきてすぐの入浴は何とかならないのかな」
「確かにそうですが、入浴を最後にすると体が冷えて風邪を引くかも知れないですし。
それにこれを言っては元も子もないですが、送迎の関係上やっぱりこの時間の入浴がスムーズに事が運ぶんですよ」
「そうか・・・まあ仕方ないのかな?」
村沢の中には納得できないものがあったがそれは表に出さずその場を辞した。
それから3ヶ月が経った。
村沢のもとに矢沢から、佐々木さんが体調不良で休みが続いているとの連絡が入った。
あのあと週2回から1週間ですぐ週3回にしたが、特に問題なく通所を利用していたのだが、ここ2週間休みが続いているというのだ。
一般で言う所の五月病が出てきたのだろうか?とりあえず佐々木さん宅を訪問することにした。
村沢が訪問すると、佐々木さんはベッドに横たわり乾いた咳をしていた。
旦那さんに聞くと少し前から風邪を引いたらしく熱も少しあるとのことだった。
「お医者さんには見せたのですか?」
「一回主治医に往診してもらいました」
旦那さんの答えにいつ頃か質問をしてみた。
「近々でいつ頃見てもらいました」
「4日前ですが」
「その後は見てもらっていないんですね」
「ええ、昨日位から少し熱も上がってきて、咳も少しひどくなっているようですが、薬もまだありますし妻がいいというので」
「出来たらすぐ見てもらった方がいいですよ。
私が電話しましょうか?」
村沢は奥さんの様子に一つの懸念を感じていた。
肺炎。そう高齢者がかかりやすい病気の一つだ。もしそうだとしたら早めの治療が必要となる。命を落とすかも知れないからである。
旦那さんはすぐ主治医に連絡を取った。電話の途中で村沢が症状を説明した所、幸い訪問診療の時間になっていたらしく訪問の最初できてくれることとなった。
すみません今回で終わりの予定だったのですが、ちょっと通所時の村沢の行動も入れようと考えたら1回増えました。次で終わりです。絶対終わらせます。終わるはずです。終わったらいいな。いえ終わりです。
まだまだ構成力がないですね、ついでに文章力もまだまだ。もう少し上手になりたい。
結局この話年を越してしまいました。
第3話は予定通りの失語症の患者さんの話にします。この話は一般の人はもちろん医療・介護従事者に読んでほしい作品にする予定です。
来年もよろしくお願いします。