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竜騎士姫と反逆の獣  作者: 灰色人
第一章≪紅き竜騎士の再臨≫
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第11話『討伐隊』

 翌日、まだ早朝だという時間に城門の前にクリスをはじめとした騎士団員が集まっていた。


 これから、討伐に向かう。他の荷物は荷馬車にすべて乗せて、剣だけを手にする。


「いい、シュウジ。あなたはまだ未熟よ、そのことは忘れないでね」


「わかったよ」


 力を過信するなというのだろう。


 おそらく、そうやって過信して何人も死んだのだろうか、クリスの表情はどこか悲しげだった。


「兄様、行きましょう」


 先に出発した先遣隊と同じように、全員徒歩で街を出る。


「ああ……」


 リィゼに返事をしてシュウジも歩き始める。


「兄様、本当によかったんですか?」


「何が?」


 リィゼの質問の意図が分からずにシュウジは聞き返す。


「兄様が無理して一緒に行く必要はなかったのではないですか、という意味です」


「それでも人助けしてお金もらえるのであればね」


「では、行きましょうか。私も兄様のお手伝いをしますので」


 そういいながらリィゼはシュウジの隣を同じペースで歩く。


 クリスの話では目的地までは徒歩で三時間ほどらしい。先に先行している部隊は竜騎士が十五人ほどで先に守りを固めるそうだ。


 だいぶ歩を進めた。三分の二くらいは進んだあたりでシュウジは思い出したようにつぶやく。


「クリス、ちょっと聞きたいんだが」


 隊列の中央で赤い髪を揺らしながら歩く後姿を見つけて声をかける。


「何? どうかしたの?」


「目的地をはっきり聞いてなかったと思って」


「そうね。そういえば言ってなかったわね」


 どうでもよさそうにクリスが話し始める。


「今日行くのはクロス村よ」


「クロス村?」


「ええ、普通の農村ね」


「農村……ね」


 農村と聞いて数日前後にしたリィゼの村のことを思い出した。


「昨日村の人間が魔物が出たと行って助けを求めてきたの」


 ――そりゃそうか、相手は本当の化け物だもんな……。


 昨日戦ったオークのことを思い出す。たった数日でとんでもない量の思い出が増えた気分だった。


「そろそろ着くわね……」


 その時だった突然悲鳴が聞こえたのは。


「っ! 全員戦闘準備ッ!」


 中央にいたクリスは声を聴いた瞬間に駆け出し始める。


「リィゼっ!」


「はいっ! 兄様!」


 剣を抜き放って鞘をリィゼに渡してからクリスの後を追うようにシュウジも足を動かす。


 走っていく最中、周りの騎士団員が変身を始めていた。


「シュウジ、変身しておけっ! すでに戦闘は始まっている」


 クリスに追いつき、並走をする。


「クリスは?」


「私もする」


「だよな」


 クリスの言葉にシュウジはニヤリと笑みを浮かべた。


「「変身ッ!」」


 二つの声が重なり、二つの影に赤と青の鎧が重なる。


「――■■■■■■■■■■■■ッ!」


「――□□□□□□□□□□□□ッ!」


 瞬間、シュウジとクリスの竜は吠える。形容しがたい咆哮があたり一面に木霊する。


 二人が次に踏み出した一歩は、先ほどまでと違い地面を抉りスピードを上げた。


「シュウジ、見えたぞ!」


「――――――――――」


 クリスの言葉に目を凝らしてよく見た先に、魔物に襲われている竜騎士たちを見つけた。


「このおぉぉぉぉ!」


 クリスが剣を持ち上げて飛翔する。


 今まさにクリスの部下に襲い掛かろうとしていたのは、昨日戦ったのと同じオークだった。


 ただ、昨日見たオークよりも二回りほど小さい。


「グオォォォォォオオ!」


「させるかあぁぁぁああ!」


 オークの腕が降りぬかれるよりも早く、クリスの斬撃がオークへと突き刺さる。


 ――すごいな……。


 体制を崩されたオークを見ながら、シュウジは足に力を貯めてさらに加速する。


「――■■■■■■■■■■■■■■ッ!」


 地面を這うようなすれすれからシュウジは剣を振り上げる。


 まるで大根を包丁で切り落とすように、オークの腕が体から離れ、地面に転がり落ちた。


 その巨体もバランスを崩して地面へと崩れる。


「おい、大丈夫か?」


「はい、隊長。ありがとうございます」


「隊に戻って、体制を立て直せ。ここは私たちが引き受けた」


「了解です。そちらの方は……」


「ああ、大事な助っ人だよ」


 どこか含みがあるような表情でクリスが部下に告げる。


 二人のやりとりを横目で見ながら、シュウジは剣を上段に構え、オークを見つめる。


「―――――■■■■■」


 喉を鳴らしながら挑発するシュウジの前に、まだ完全に倒れ切ってないオークがよろめきながら立ち上がった。 


「待たせたな」


 クリスが二刀に分かれた剣を構えて近寄ってくる。おそらく、すぐにでもとどめを刺すつもりだろう。


 その声には殺気が込められていた。


「行くぞ――――」


「――□□□□□□□□□□□□ッ」


 反応するように後ろに控えていた竜が咆哮を上げた。


 足が地面を抉り、二刀がオークの腹部を切り開いた瞬間に、氷の竜は開かれた腹部に頭から突っ込み貫通させる。


 青かったはずの竜は血に染まって、真っ赤な竜へと変わり果てていた。


 ――えげつない……。


 動かなくなってしまったオークに心の中でそっと手を合わせて、シュウジは次の標的を探し始める。

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