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灼熱砂漠のプロローグ


「……死ねるわコレ」


 1面に広がる砂、砂、そして、砂。

 見渡す限り広がる砂漠。目をいくら凝らしても人かげどころかサボテンひとつすら見つけることがかなわない砂地獄。

 日差しがじりじりと、か弱き人よいよいよもって死ぬがよいとでも言わんばかりに俺を加熱する。

 軽口や冗談も喉から先を通ってこないくらい暑い。クソ暑い。 


 汗がぽたりと体から滴って砂を濡らし瞬きすら待たずに消える。いくら拭っても汗は止まることなく、ココは人間が生息できる地域ではないのだとひしひしと感じる。


 「世界救う前に自分救わなきゃなぁ……こりゃ……」


 水筒をひっくり返しているような速度で体の水分が抜けていくのが感覚でわかる。

 空から降りてきて、日差しでたっぷりと焼けた砂に頭から突っ込んで起き上がってすぐにこのザマなのである。コレでは対策を取らない限りカップラーメンを作るよりお手軽にミイラが一体作成されてしまう。


 「ひとまずは水……だな」


 まず、干からびる前に水分を取らなくては、と足先に力を込めて足元へ差し込む。


 砂漠の地中には雨水が残って湿った砂があったはず。


 足元を走る紫電から目を背けつつ、力の範囲内に水が存在していることを祈りつつ、金。入れ物として初めに錬金しておいたガラス瓶に爪先を引っ掛け、掘り起こす。


「やっぱ、砂漠だしこんなものかなぁ……」


 質がゴミ同然な程に酷い濁りの磨りガラスの瓶を拾い、ため息を吐きながら1口分しか溜まっていない水を透かして見る。

 揺り動かしてみてもぴちゃぴちゃと気休め程度の水音しか聞こえず、この程度の量では焼け石に水だということくらいは考えずにも分かった。


「しかも割に合わない……。」


 1時間の間勉強し続けた位には重い頭をお押さえつつ、ガラス瓶の蓋をこじ開ける。

 耳障りなガラスが砂で削れる音を立てて開いた瓶の中に収まっていたのは、微妙に茶色く濁った水。

 力の範囲内にあった水を移動するイメージでここに入れたものだったのだけれど、予想した数倍の濁りかたをしている……。


 けれど、飲めるかどうか確認しない訳には行かないしなぁ……


 渋々ガラス瓶を口に当て、一息に呷る。


「マッズ……」

 

 予想通りと言うか何というか、ジャリっとした食感とthe土っていう味に顔が歪むのが分かる。まだ雨の日の水たまりの方が泥の味がしない気がする……


「けど、飲めないわけではなさそうかな……」


 拠点が見つかるまではこの水としばらく一緒になることを想像し、苦虫でも噛み潰している最中のような顔になる。

 ため息を吐き、足を踏み鳴らす。

 砂が錬金され、濁りガラスの棒が足元からせり上がってくる。

 それを掴んで振り向く。


「武器調達位は……時間が欲しかったんだけどなぁ……」


 唐突にできた日陰。

 それを作った主を睨みつけるようにして見上げる。


 さて、俺の異世界生活の下ごしらえ(プロローグ)の初戦はどうなる事やら、ね?



▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



「勝てるかボケェェェェエッ!」



 ドズンッ、ドズンッと地面が揺れる。俺の真後ろで甲高い声を叫びながら追いかけてくるソイツの攻撃を影で判断して避け、また揺れる大地を蹴って走り出す。今、俺は人生最高の速さで走っている自信がある。


 手に持ったままのへし折れたガラスの棒を金の延べ棒に錬金し、手のひらサイズになったソレをポケットにしまい込んで走りやすいように態勢を整えていく。靴裏にまとわりついた砂を陶器に錬金して、雪山登山とかに使う鉤爪を生やす。


 そんな感じに装備改良の為に脳の大半を割いているせいでソイツが上体を起こしているのを見逃してしまう。




 「ッ危なァッ!?」




 錬金で形だけ変えた熱砂の柱を自分にぶつけ、なんとか位置をずらすとその柱が次の瞬間には貫かれている。毒とかの前に胴体がもたない太さの針に冷や汗を垂らし、服の中に入り込んで湯気が出そうな熱で俺を焼肉にしようとする砂をたたき出す。



 逃げる為の準備のが完全に無駄というか、裏目に出て距離が詰められ過ぎてる……。やらなきゃ良かった……。でも、戦うとして……。




 「デカイサソリなんてどうやって殺せばいいんだッ!?」




 目の前で威嚇しているデカサソリ。ビルサイズな巨体を重さを感じさせずに運ぶ大槍のような脚部。甲冑みたいな質感を持った白色の甲殻。叩き潰すことに特化したように根元が大きく肥大してハンマーみたくなった黒ハサミと、逆に耐久を削って切ることに特化したような白ハサミ。


 表情が見えないというのに怒り、というものがにじみ出た顔。ガラスの棒が突き刺さってるのにコチラを見逃してくれそうにないほど精度よく狙いをつけてくる赤色の複眼。



勝てる気が全くしねぇ……。



「キシャァァァァアッ!」



「危ねぇぇえっ!」




 黒ハサミが俺の立っていた小高い丘を押しつぶし穴を一つ作り出す。


 コイツ、野生の生物とかじゃなくて生物兵器とかその類だろ……。こういうのが雑魚でわらわら出てくるとか言われた時には、女神を毎晩呪うと思う……。




 嫌な考えに冷や汗が止まらないが、考える事は止めず黒ハサミに砂の塊を当てて勢いを殺しては回避。白ハサミは逆に錬金で穴を開けて下へ回避する。回避するだけでは埒が明かないのは分かっているし、自分は薬一つで車に轢かれてても全快するようなゲームのキャラ(バケモノ )ではないことだって分かっている。

だから一発喰らえば終わりなクソゲー状態なことだって理解している。


 

 ただ、逆転するにも価値の高いものへ錬金するには時間が掛かる。

 しかも回避しながらどうにかさっき作り出した鉄の柱は、そこでスライスされた上に押しつぶされぺたんぬしている。まさか、鉄を紙みたいに両断するとは考えていなかったし生物が鉄を押しつぶせる事も想定していなかっ。


 ドラム缶サイズ作るのにも4秒もゆるゆるとかけて変化する鉄ですらダメ、それ以上の硬さがありそうなものは当然時間がかかるし、それが両断されない自信はもはや無い。



 最後の策が通用しなきゃ……死だな、これは。



 力を1面の砂へ走らせ紫電が走り回る砂漠の上、サソリとの根気勝負を今、始める。

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