仮拠点の朝と、お客対応のプロローグ
「っ痛ぅ……」
全身のコリで目を覚ました瞬間に眉間にシワを寄せる。
ここは……あぁ、テントで寝たんだったか。
コリをほぐすように体を動かし、次寝る時は下に砂でも敷いてからテントを張るかとため息を吐く。
予想した以上に床が硬かった。コンクリに直で寝るより人体に有害だとか何をどうしたら出来るのか……。
しばらくの間テントの中で肩を回し、腰をひねって固くなった体にやわらかさを戻す。
ゴギゴギッと時々体から鳴ってはいけない音がしているのが不安ではあるけれど……。
体から異音がしなくなった所で懐の小物入れからガサガサな羊皮紙を取り出す。
出てくる時にちょっとばかり貰ってきたメモ紙に、昨日の解剖で見た事を記しておいたのだ。
解体の眠気でまともな考えが浮かびそうになかったから後回しにしても仕方ないね?
「眠気も覚めてきたし……昨日の結果をもっかい考えるかなっと。」
昨日分解したサソリ。その臓腑に収まっていたのは植物系の何かと、虫肉。
植物の方は、半乾燥地帯によくある、オリーブとかみたいな光沢の強い葉っぱ。
虫肉は混ざっていた甲殻の破片の色合い的に、同じ種族のサソリの可能性が高い。
「草食の強い雑食系かぁ……
オアシスがこいつの行動範囲にあるってことは……そこが狙い目ではあるけど……。
はぁ、ここから離れれない以上どうしようもないか……」
ガサガサとしたメモ用紙を懐に戻し、ハンマーをベルトに差してテントの入口を開く。
「さあて……何か入ってきてないといいけど……なっと!」
空いた隙間から正面に何も居ないのを確認し、飛び出す。
右、よし。
左、解剖跡地、よし。
後ろ、階段、動く岩の塊、よし。
「ってよくねぇ!?」
今まで生きてきて見た事の無かった動く岩の塊は、人の形をしていた。
腰掛けるのに丁度良さそうな大きさのずんぐりむっくりで胴体が八割な丸い岩は、適当な石を繋げて作ったと言われても納得出来る乱雑な石組みの腕で見覚えのない袋の中身を漁っていた。
ゴー……レム?
立ち尽くしていた俺の気配に気がついたのか、振り向いたゴーレム(仮称)が振り向き、目(?)でこちらを捕らえた。
「オォォォォォォオオオオオ!!」
「うぉああ!?」
ゴーレム(仮)はふるふると少し揺れると、目と口らしき穴を大きく怒りに歪めて雄叫びを上げ、腕を振り上げた。
どう見てもこいつ敵だよな?敵だよなっ!?
直感で嫌な予感を感じ、すぐさま横っ飛び。
ゴーレムが振り下ろした腕から、遠心力に負けた石が散弾銃の如く飛ぶ。
石は壁にぶち当たり砂煙へと粉砕される。
「不味い不味い不味いっ!!!」
小さいだけにサソリよりタチの悪い敵が今また、俺へ腕を振り下ろそうとしている。