物資集めのプロローグ 仮拠点設営と……
「くぅ……眠っ……」
あたりが暗くなり始めたころ、ようやく中身の質量が分かるぐらいまで命石を入った袋を手にぶら下げ、疲れと眠気であくびをしながら神殿の入口部分へと戻ってくる。
細かい砂が入り込んでギシギシと開きづらい扉を蹴り開けると、薄暗いちょっとした空間が俺を出迎えてくれる。
人っ子1人位なら普通に暮らせる最低限の広さの空間。俺が弛んだり、慣れたりせず目標まで突っ走るには丁度いい簡素な内装だ。
日暮れのせいで光源が無くなり仕方なしに引きずってきたサソリの死骸を扉近くへ放置し、インフィムから貰った就寝具?らしい布の筒を瓶から取り出す。
んーっと、ここをねじればいいのか?
上の蓋らしき部分をねじると、ぽふん、と小気味いい音を立てて青色のテントが展開する。
「おわっ!? って……ただのテントか……」
展開の音の割にしっかりとした布張りのテントは、俺一人ならば体を痛めずにすごせそうな空間が用意されていた。強度は……さすがにそんなすぐ壊れるものを持たせる訳ないか、とあの少年神を信用する事にする。
テントだけで……まぁ、なんとかなるか。
扉のお陰で、初めからバレてない限りはサソリたちは入ってこなさそうだ。用意はこのテントだけでも1人でなんとか夜を越せるだろう。
そこまで確認すると、俺は張り詰めていた緊張の糸を緩めてほぅ……と息を吐く。2回目とはいえ、戦闘は疲れるものだ。日頃からあいつらの飯代を浮かせるために干上がり気味の用水路で魚を追いかけたりしていただけまだマシではあるのかもしれないけれど……。やはり疲れる。
このまま寝たい気分であるけれどそうはいかないので、今日でへし折った鉄ハンマー(偽)を素焼きの椅子に手早く錬金し、特に確認もせず勢いよくそこに座り込む。
「あ、やっべミシミシってぇぇえええ!」
ミシミシ……ベギッと素焼きの椅子の命が砕け散った音を聞き取った瞬間、咄嗟に身を投げ出して回避する。体力が尽きた所での無理な回避に息も絶え絶えで振り向くと、亀裂が入り俺の尻を貫かんとしていた元、素焼きの椅子が存在していた。
くっそ……疲れで厚さ間違えたか……。
砂岩で作れば重くて使い回しが悪い。かと言って木材を作るには戦闘中にこべりついた砂漠的なイメージのせいで砂からの変換が割に合わなさすぎる。金属も同じ様にいまほしいからこそメッキ以外は出来なくはないが労力が大きく、狩りのあとにしたいものでは無い。
と、いうことで土をこねて焼いてできる素焼きを選んだわけだけれど……この有様である。
「はぁぁ……すわってやるか……」
何度目かになるため息を吐いてサソリの死骸の前で腰を下ろして胡座をかく。
今日中に終わらせないと、明日やって中身が自己消化でドロドロだった、とかじゃシャレにならない。
こいつはなーに食ってるかなっと?
大量に居たから生態系の底辺かその少し上あたりだろうと思って放置していたけれど、離れると砂嵐やら何やらでここに帰れなくなりかねない今、ビー玉サイズしか出さないクソザコな集積も貴重な命石供給源。 建物が見える範囲でサソリ狩りをして7匹も仕留められたコイツは、いまのところのメインターゲットだ。
「と、なれば撒き餌でもして効率上げを多少なりとしなきゃ……ねっと!」
考えながら手を動かしてる間に甲羅がはぎ終わったサソリをひっくり返し、甲羅程ではないもののかなりの硬度の腹にとりかかる。
足を最後の生き残りのハンマーで叩いて脆くし、引っこ抜いてから指をかけて力任せに皮を剥いでいく。
今回用があるのは皮ではないのでワニ皮のようなごわごわな虫皮に穴が空いたり脆くなるのもお構い無しでグイグイ、べりべりと剥ぐ。
この無駄に強度があり過ぎる肉相手に腑分けで胃を探すとは……気が遠くなるな……。
垂れた汗を袖で拭い、あとひと踏ん張りと力を込め皮を引き剥がしていった。
あとから思えば、このクソめんどくさく体力を使う作業は始めの分解研究の時にやれば良かった……と多少なりと後悔が残っていた。それは、まぁその時考えにも上がらなかったテンションのせいだった、としか言いようがないのだけれど……ね。
前までのプロットでは、これ以降に大サソリとのタイマン再戦をやる予定になってました……が、
いまさらになって、無理臭くね?となって止まってました……
ようやく、代案が思いついたので再開です……