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剥ぎ取りタイムなプロローグ

筆止めてしまっててすみません……

ちょっと迷宮探索(ルフラン)が……立て込んでまして……

「……はぁ」


 ため息をついて頬についた青色の体液を袖で拭う。悪くなったエビやカニのような独特な臭いが鼻につき、尚更ため息が出る。回りにあるのはサソリ2体と、足をもいだタラバガニ(仮称)の死骸。

 そこそこな数の群れがいたはずなのに、倒せたのは手の中のやつも含め、4匹……。


 これじゃ……いつまでたっても……。


 甲羅を剥がれ、筋肉の筋までほぐしてバラバラにされた変わり果てたサソリと、それから剥ぎ取れた金平糖サイズのミニマムな命石を見つめ、俺は呆然と崩れ落ちたのだった。



▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


 頬と手袋の青い血が乾いたころ、ようやく俺は地面に埋まり始めていた膝を持ち上げられた。

 あれだけ頑張って塵レベルの成果である、という徒労と目標までの途方も無い距離感。そこから立ち直るには少しばかり時間が必要だった。


「無闇に狩っても時間の無駄……か。

何か策を立てなきゃな……」


 砂に埋もれた剥ぎ取り前の死骸を掘り起こしつつ頭を回す。大量の命石を手に入れる道筋を、仮にでも良いから建てなければ。


 でかいのは……無理。俺まで再起不能になったら詰みだ。

 かと言って、小さいのは……。1匹1匹じゃ全く足しにもならない。

 なら……数を集める?集めるのは撒き餌でいいとしてもそれをどう処理するか……。


 試行錯誤を頭の中で繰り返しながらも、手はサソリから命石を剥ぎ取る作業を始める。


 頭に鉄(メッキの陶器の)ハンマーがめり込んだサソリを作業しやすそうな砂岩のタイルの上へ放り投げ、そこを作業場にしようと腰を下ろす。


「ん、ここが丁度いいか。」


 少し隆起し、出っ張ったタイルを椅子がわりに、剥がして積んだ砂岩タイルをテーブルにしてサソリを乗っける。


 「さっきみたいに片っ端からもぎりとるのも体力使うし……コッチにも頭を使いながらしなきゃな」


 解体用のナイフを作り出そうとして気がつく。こいつ、鉄でも歯が立たなかったような……と。


 視界の端に砂に埋もれ、刃のすべてをサソリの甲殻に持っていかれたあわれなナイフがちらっと見えた。だから1匹目は手でちぎる羽目になったんだっけか、と記憶がそいつで蘇ってきた。


 やっぱ手でもぎるっきゃないか!


 にっくき白黒サソリとの血縁がありそうな薄紫がかった黒の甲殻。脆い場所から攻略しなきゃならない。

 まず、背中に手をあてて尻尾を捻りながら引っ張る。そうするとブチブチブチとサソリの腹の中から音が聞こえ、もろい部分がちぎれてもげる。


「まずひとつめーっと。」


 もぎった尻尾は撒き餌にも出来なさそうなので入口の方へ投げ捨て廃棄する。

 まずサソリを食うやつはサソリの毒は効かないだろうし、効くやつはそれが混じった肉を食わないだろうというのは予想がつく。

 だから、要らない。

 グチョ、と生物が叩きつけられる気色悪い音が背後から聞こえるが、無視。


「これは使えるかもだし……余計な傷を付けないように……と。」


 次に、尻尾がもげた事で出来た穴へ指を差し込み、カニの甲羅を剥く容量で甲殻を剥ぎ取る。

 ミヂミヂ、と肉を割く音と共に甲殻が剥け、ぷりぷりとした身が顕になる。


 尻尾が無いと……エビっぽいかもな、なんて。


 冗談も頭の中で済ませ、甲殻をテーブルの下へ放り、サソリにしては妙に膨らみがある部分を押さえる。


「ビンゴ!」


 異物が肉のしたに有るのを証明するようにゴリゴリと指から石が逃げる感覚がする。予想通りの場所だ!


 個体ごとに違う場所にあるとかだったらさらに面倒が加速していた所だった……。


 ほっと息を吐き、メス型のナイフをガラスで錬成して出っ張りの表面を傷つける。たったコレだけでダメになったメスもどきをナイフの連れ添い用にぶん投げて破棄し、またサソリに向き直る。


「外は固くて歯が立たず、中は体液が粘付き過ぎてろくに切れない、なんてねぇ……。 つくづくハンマーで相手してよかった……。

 調子に乗って刃物でやってたら……やばかったかもなぁ。」


 小さい生物兵器が雑魚モブのように存在していたのにため息を吐きながら、切れ込みの入ったコブを横から潰す。すると、枝豆を取り出す時のようににゅるっとサソリの体から命石が飛び出してくる。

 今度は金平糖より少し大きいビー玉サイズだ。



 まぁ、誤差だけどな。この程度の大きさの差は……。


 薄紫の命石を皮袋へ投げ込み、指を鳴らす。

1回目を相当ぐっちゃぐちゃにしたせいかそこそこに体中が凝ってしまっている。


 コレから何回もやらなきゃならない作業。一刻も早く慣れなきゃならないな……。


 最後のサソリの尻尾をもぎり取り、俺はまたひとつため息をついた。

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