黄色い煙とプロローグ
「ちょっと緊張感が顔にも戻ってきたみたいだね……。」
ココアを飲み干し、頬を2度ほど叩いて適度な緊張を頭に取り戻させる。
うん、コレでいけるかな?
「うん、適度に締まりが戻っていい顔になったね。
頭を回すには緩くてもキツすぎてもいけない。やっぱり適度ってものが重要なのさ」
くすす、と小さく笑い声を漏らしながら彼は子供らしい笑顔を深める。「さて、」とあちらも失った話のリズムを取り戻すようにワンクッション入れ、また話を始める。
「ここに君の作り上げた金属の欠片がある。」
ごそり、と懐から取り出されたのは、キラリと輝いた金属。
俺が錬金で作り上げた記憶がバッチリ残っているあのサソリに撃ち込んだ金だ。
「あ、あぁ。確かにソレは俺の作ったやつだ。」
俺が返事するのを待っていたかのように、うむとだけ言うと、インフィムは金を手から生み出した炎をへと放り込んだ。
「何を……?」
金を焼いた所で何にも……って、え!?
青色の炎に包まれた金はぐずり、と形を崩すと、緑の炎を上げて燃え始めた。
金じゃ……ない!?
「これ位でいいかなっと」
ふーっと口をすぼめ、可愛らしく吹いた息で炎はなぎ倒されるように消え、黒く変色した金属と予熱で反応した黄色の煙が上がっていた。
「金の純度は……多く見積もって1%って所かな?
キミ、愚者の黄金って言葉、知ってるでしょ?」
「知っている。 錬金術師の多くが金と偽った金によく似た見た目の鉱石……。鉄と硫黄から出来る黄鉄鉱、時々耳にするから知識では持っていたさ。」
金を焼けば溶けるばかりだけれど、黄鉄鉱は普通に燃える。緑の炎で黄色い硫黄の煙を上げながら。
そこそこに似ているけれど、見分けれる人には1発で見分けられる両者。
なんで錬金術の結果が望んだやつと違うものが出来ているんだ?と疑問が膨れ上がってくる。
小気味よい音を立てて回り始めた俺の頭脳は、次の彼の言葉でまた機能を停止する。
「つまりは、誠意が足りなかったから詐欺された、という事さ。」
「は? 詐欺って……え?」
能力なのに……詐欺? 意味がわからない。まったく! 意味がわからないッ!
「詐欺って……なんだよ……っ。」
「詐欺は詐欺だよ。
安く買い叩けばとうぜん偽物を掴まされる。
高く買いすぎても偽物を掴まされる。
法則に沿って働いている、と言った時になぜ金の話になったと思うかい?」
金……売買が能力に関係あるのか?
「君の能力は、物を自分の価値観に落とし込み、同じ価値のものに変える、と言った感じだ。
つまりは、君の心の中との売買取引。
それこそがが完全なる錬金術。キミの、能力だよ!」
心との売買取引……。
言われると、何故だかしっくりきたような気がしてきて、ほぅ、と息が漏れた。
なろうコンから感想来ました。
✧٩(ˊωˋ*)و✧やっほい