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プロローグは神託にて

 「……さい! …………おき……さい……! 」


 遠いところから声が聞こえてくる。

 アニメにでもでてきそうなその声は、どうやら俺へと声をかけているようだ。

 母さんか……? いや、実家はかなり遠いしモーニングコールなんてする訳が……? 


 「起きて下さいっ! 」


 頬に伝わるぴたり、という感覚が意識を引き戻していく。

 反射的にその手を払うと、ぬるり。


 「何だァ!? 」


 上にのしかかっている何かを蹴り飛ばし、跳ね起きる。見渡すと、灰。灰色と白、黒の斑模様の風景が1面に広がり、所々に何かが崩落してできた黒の瓦礫の山が積み上がっている。


 売れない芸術家のアトリエみたいなあべこべ感のある風景をひととおり見渡し終わると、すぐそこにうずくまった黒いヒトガタにようやく目をやる。


 胸より下の部分は泥玉をこねて作ったような荒さしか見当たらない黒い塊で、両腕はヘドロ塗れでどこかで見た見覚えのある形。そして顔は……。

 顔に目をやった瞬間、俺は姿勢を正し土下座して頭を床へ振り下ろす。


 「痛いなぁ……もぉ……」


 「すまなかったっ! 」


 アゴから下は完全に泥ゴーレム状態な黒泥パック状態な美形の少女だった。泥まみれでも美形と分かるだけ、泥さえ取れればそれこそ絶世の、と言った感じの美少女に生まれ変わるんではないか。

 美少女かどうか、よりも寝ぼけて蹴った相手が女性だったというのが問題で、俺はもはや反射の域で土下座を行っていた。女系家系に生まれた俺にとって女性を傷つけない事は本能にも近い物なのだ。



 「えぇ……?

救世主くん、君はなぜにジャパニーズドゲザを……? 」


 「蹴り飛ばした! スマンッ!」


 「いやぁ……強引に連れてきた私が七割悪いんだからソレくらいはいいよ……? 」


 「ありがとうっ! 」


 3割も俺のせいなのか、とか、なんで土下座を知っているのか、こっちではアナタじゃなくてキミで呼ぶのか、とかの疑問はさておき。許されたからには土下座を続けることは失礼だろう。

 なぜか頭突き1発でひび割れてしまっているタイルをにじにじと移動して尻の下に隠し、一息ついて小説で初めのテンプレだろう質問を投げかける。


 「これは異世界転移、とかいう物で合ってるか? 」


 「イエース! キミは私の世界の『救世主』となってもらうために私が直々に連れてきたんだっ! 」


 ゴーレム少女(仮)は泥まみれな上からでも分かるドヤ顔でズビシィ! と効果音がつくようなポーズをギシギシ言わせながらとっている。

 そのポーズ、無理しすぎてないか?

 まぁ、それは置いておいてもやっぱり、なろうものっぽいテンプレみたいな流れなようだ。世界の危機に、いわゆる『勇者』を呼び出してどうにかしてもらおうとする神様に呼び出される、と。

 なら……次はコレかな?


 「『救世主』は文字通りの意味なのか? 」


 「またまたイエース! この世界は私の部下の3匹がやらかし続けていてね……。

その3匹を殺して欲しいんだ。それ以外には一切の邪魔をしないし、頼まれればある程度の支援はできると思う。今言った事は嘘ではない、とキミの世界の神に誓おう。」


 ふざけていたポーズを取り止め、女の子座りを身体中ギシギシ言わせながらして上目遣いでコチラを見上げてくる。聞こえてくる音を無視すればゲームに出てくるようなほとんど完璧な格好だ。強いて言うなら、泥が邪魔ではあるが。

 無理してギシギシ言ってるゴーレム(仮)を頭から適度に追い出しつつ、考察を続ける。

 こういうパターンだと神様が黒幕、なんて事がテンプレなんだけど……ここまで必死に言ってくるなら本当にこの言葉は信用してもいいのかもしれない。

 だいたい、小説で出てくる神は泥まみれなまま廃墟の中で召喚の儀なんてしないだろうし。我が日本の神話群でならやらかしてそうではあるけれど、泥の隙間から見える色合い的に西洋系の神なんだろうからそれが平常なんて事は無いと……願いたい。

 って、そう言えば聞きそびれてた。コレを聞かなきゃこの前提変わるよね。肌に鉄鉱石塗る部族とか居るし。


 つばを飲み込み、息を整え決意を固めて問いかける。


 「キミは神さま、で合ってるよね……?」

 

 「うん。 私はこの世界『ボタニス』の創世神にして主神の『エデラ』だよ。

 あっちの世界で退屈しているキミに誰しも夢見るようなチート生活の切符を渡しに来たんだ。

 力が残ってないから、キミを今すぐ元の世界へ戻すなんて事はできないけどね?



 さて、私の世界を救ってくれるかい?救世主くん。」


 黒くヘドロに汚れにまみれた姿であるにも関わらず、その神が俺へと向けてくれた表情はもう2度と忘れる事は出来ない物だった。抱擁力溢れる母性と幼女のあどけなさの混じりあったその力ない笑顔は、俺に自らその手をとらせるには十分すぎる物だった。

 即答に近い勢いで手を取られることを想定していなかったのか、少し驚いた顔をした神へ自分なりの満面の笑みを浮かべ、そして答える。


 「上等だ!世界くらい救ってやんよっ!」

 

 ぬるり、と手に伝わるヘドロらしき感触でさっそく決意がゆるぎそうだった。



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