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プロローグ、ベッドは揺れる。主に重みで

 手を開け閉じして力が強くなったかそうでないかを確かめていると、膝の上で子供が身じろきし始める。


 お、起きるかな?


 撫でるペースをさらに緩め、少しづつ距離を離していく。

 起きた瞬間に知らない奴に頭を撫でられているのを知る、なんていう負担を受けないようにって感じのおせっかい極まりない理由だけれど……まぁ、勘弁して欲しい。


「ん……むぅ……」


 少年の意識が戻ってきたのか、目が微かに開き始める。サファイア色の瞳がぼんやりと周りを見渡し、元の世界基準なら天使とか形容されそうな顔を眠気でとろかしながら体を起こしていく。


 そろそろ……声かけるべき……なのか?


 迷っていると、ぼんやりとした顔がこっちを見たまま固まっているのが見える。なんというか……二度見している、とか虚をつかれたとかいう言葉が似合いそうな固まり方だ。


「よぉ?」

「はぁ」


 声をかけてみたはいいものの、疑問形だったのが不味かったのか少年の反応も反射かなにかと言った蛋白さだ。……どうしたものか。


「……ふぅ。救世主くん、ようやく目覚めたかい?」


 ……は?


 息を一つ吐き気持ちが整理できたらしい少年が口にしたのは、一般人なら一言目に俺を指す言葉として使うはずがない言葉。今度はこっちの思考が真っ白にさせられる。


 この口調……、あの神……か? よく見てみれば、服装も煌めいて無いだけしか違いもないし、顔も双子レベルで一致しているような……というか、一致してるな、コレ。


「えっと……さっきの神さま、であってるのか?」

「……君の記憶は気絶する直前に見ていた人物すら忘れるのか。」


 見覚えのとてつもなく有る顔でため息を吐くと、少年は全身の服をそよ風のようにはためかせて浮かび上がる。

 そこでようやく俺はこの少年が少年神と同一人物だと完全に理解した。


 ……元の世界からの癖とはいえ、コレは直さなきゃ致命傷かもな。


 自分の癖というか性質に頭を抱えようとする俺を、バカか? 君は、と少年神が頭をデコピンで弾くと、見覚えのある皮袋を懐から取り出す。


 今度は、なんだ?


「ほら、キミが一々気絶なんてするから話が進まないじゃないか……」


 もう嫌だ、といった気持ちのたっぷりと篭ったため息を吐き、皮袋の片方から三枚のコインを俺の顔面に投げつけてくる。


「おわっと!」


 直撃する寸前でコインを手でキャッチし、飛んできたコインをよく見てみる。

 女神の横顔の鋳造された赤褐色のコイン、恐らく銅貨。

 大きな木とそれを守る盾の鋳造された白いコイン、たぶん銀貨。

 女神と対照の向きを向いた王の横顔の掘られた金コイン、金貨だ。


「キミが恐らく考えているだろう通り、この3枚は金貨、銀貨、銅貨。この世界で通用する通貨だ。

百枚づつで上位の硬貨に行くように価格制度は成り立ってる。」


 カチャカチャと同じものを手で弄びながら少年は謎かけをするようにここまで言うと、銀貨を1枚こちらへと放り投げてくる。


「金貨1枚を、コレに錬金してくれ。

……コレが説明の最後の錬金だからゆったり確実に、しておくれよ?」


「あぁ、わかった!」


 少年が投げてきた白銀色のコインを手に取って表裏をきっちり確認。それが終わり、準備を完全に終了してから……金貨へと力を、込めるっ!


「重ぉっ!?」


 手を押しつぶそうとされているように手が一気にベッドへ埋まり、そこからジャララララ、とバケツをひっくり返したかのような量で湧き出てくる。

 葉っぱほどの暴力的な量では無いとはいえ、金属の群れなだけあって重さは相当なもので、ベッドの上じゃなかったら手が潰れていたかもしれない。


「しめて102枚の銀貨、確認完了っと。

コレで、キミの能力を説明するだけの下準備は済んだって訳さ。」


 スプリングが悲鳴を上げるベッドの上。俺の手を金属の池から引っこ抜いた少年神は、若々しい見た目に相応しい可愛らしい笑顔を浮かべた。


 いつの間にか殺されかけていたりとか、いろいろあったけれど……この子は正面から、誠意を持ってぶつかって行けばそれほど恐れる相手ではないのかもしれない。


 その笑顔にこんな事を考えたりなんてしながら、俺に宿った『錬金』ソレの本質がどんなものなのか。つばを飲み込み、俺は彼に笑顔を返した。


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