プロローグ、緑の雪崩の脱出編?
「……っ!? っ!?」
緑の激流にもみくちゃにされ、縦に、横に振り回される。どちらかが上かもわからない。草の味が口に広がり、吐き出すことも出来ない。
めちゃめちゃに手を、足を振り回してとにかくかき分ける。
窒息する前までに上に出ないとまずいっ!
緑の雪崩の中を溺れて、視界が回り始めた頃。思いっきり突き上げた左手、その手の先は何も触れなかった。つまり……外だ!
出たッ!
「……っ! っ!」
指先を引っ掛け、体を持ち上げる。埋まった体を押さえつける葉っぱをかき分け、とにかく頭を出す。
「……っ! ぷはぁ!」
空気がうめぇ!
薄明かりの天井を見上げながら空気を肺へ取り込む。バクバク高鳴り続けている心臓をなだめ、埋まりっぱなしの肩から下を引き抜こうとして……止まる。胸が出た所で腕が限界を迎えてガクガクする。
見てみると、バタついてる時に色々な物にぶつけたのか腕はアザだらけになっていた。コレは……無理だな。
体を引っこ抜くのを諦め、緑の絨毯の上に体を横たえる。この状況が公転する訳では無いけれど、這い上がるまでに体力を結構使ったせいで全身がだるい……。横になれた安心感と、葉っぱの柔らかさで眠気がだんだんと湧いてきて……。
「そこに居たのか。君は」
かけられた声で吹き飛んだ。
声の主の方を見たいのに、眠気は感じないはずの全身は怠く体を起こせない。五月病の時みたいに、何をするのも億劫で……何が……?
やっとの思いで顔を動かして見た声の主は、予想に違わなかった。緑の海の上で頭に数枚の葉っぱを乗せたまま浮かぶ少年神。
逃げないとやばいんじゃ……?これ……。
だるい体で未だにハマり続け、葉っぱの汁塗れで色々吸い付いて体温で蒸された足を引っこ抜こうとする。
それを止めるように、少年神が口を開く。
「あぁ、起きなくても良いよ。この葉っぱの薬効が効いてるせいで体自体が眠りを必要としてるだけだからね。」
……薬効?
ただの葉っぱの筈なのになぜ……?
たったそれだけの事を言うことも出来ず、スイッチが切れたようにさっきの倍以上の眠気が意識を刈り取る。
意識が飛んでいく刹那、ミチ、ビキ、と聞き覚えのある音が体の中から聞こえたような気がした。