プロローグと、分岐点。
説明口調直そうと色々したけどダメでしたァ!
……遅れてすみません。
悪い顔をした神は浮かび上がり、ソファーに腰掛けるような体勢で落ち着くと、コチラを見る。
「仕事を頼むにも、まずはこの世界の救い方を教えなきゃ話が進まない。
だから……少し昔話をしよう」
風もないのにヒラヒラと衣服をたなびかせ、彼は物憂げな表情を浮かべる。宗教画の一枚にできそうな程完成されたその表情のまま目を閉じ、語り出す。
「この世界はさ、色んなことを大雑把に管理するボクらと、それを調和させてバランスを取る精霊。その二つの存在によってバランスをとっていたのさ。
けど……」
そこで話を切ると、絵の世界でしか有り得ないような完璧すぎる顔を憤怒に歪ませる。
「奴らが裏切った!」
歪んだ顔をさらに歪ませて激情に任せた絶叫が研究所に響く。怒りに震えた声が反響して何処かへと吸い込まれていく。
荒らげた息を整え大きく深呼吸すると、ハッとした表情でこちらを見る。
「……すまない。ちょっと気持ちが高ぶってしまってね……。
続きを話そう。
大雑把と、繊細。その二つを繋ぎ合わせる存在として、3匹の神獣が存在したのさ。
天空の龍神。
大海の白鯨。
大地の赤蛇。
大きな力を弱め、小さな力を増幅させて世界をかき回す存在であるその3匹。
そいつらが突然裏切った」
ギリィ、と歯を噛み締め、懐に入れていた首飾りを取り出して握りしめる。握られる寸前に微かに見えたのは……乾いた爪。色とりどりのひび割れた楕円の薄板が首飾りの紐に通されていた。
「あいつらは、欲望のままに暴れ回った。神も、精霊も分け隔てなくその腹の中に収めて、自分の土地を作り上げ、そして、眷属たちだけでそこを満たそうとした。
……けど、そんな事をして世界が持つはずがない。
私の親友たちが人柱となって、崩壊を食い止める為の支えになっているけれど……もう持ちそうにない。
さて、救世主くん。この死にかけの世界、救う自信は? 行動する勇気は? そして、欲望はあるかい?」
泣きそうな顔。今にも崩れ落ちてしまいそうな顔で、少年神は問いかけた。
それなら……俺はこう答えるべきだ。
ただただ生きてきた俺が、こんどこそ本当の意味で生きる為に!
コムギの事を思って濡れた目尻を擦り、口角を思いっ切り上げる。虚勢でも、勢いをつけるために思いっ切り胸を張り、叫ぶ!
「ああ、全部ある! 救ってやるよ! お前も、この世界もッ!」
泣きそうな彼が、ちょっと素直に笑ってくれた気がした。