プロローグ。説明はワルを巻き込んで
ショタ神の胡散臭さが出なくてめっちゃ悩んでました……
FGOのアンデルセン&劇作家のオレンジをイメージして書くことで少し妥協……
「……なんであそこにコムギが?」
気がつけば俺は、目の前のそいつに向かって掴みかかっていた。感情だけが体をつき動かして、浮いているソイツを瞬く間に胸ぐらを掴みあげて地面へ押さえつけた。
「どうしても何も……死なせない為、さ。」
どうにも信用しきれないそいつがへらへらと笑うのがどうにも許せなくて、コムギがいまどうなってるのかすらも分からない自分が不甲斐なくて、奥歯がギリッと音を立てる。
それを見透かしているのか、インフィムは紐に繋がれたまま暴れる犬でも見ているような顔で俺を見つめる。
「……説明、してくれ。初めにコムギと、見当たらないミドリについて、を。」
目を閉じ、深呼吸してまとめた考えを彼へぶつけると、上出来だとでも言いたげな顔をしてまた浮き上がる。
「そうだね。君の大切な物の状況はキチンと知っておきたいよね。壊れかけてたんだし心配も……するか。」
モノ扱いされる事に不快感は湧き上がってくるけれど、それを噛み殺して神を見据える。
人間同士でも分かり合えないのに、相手は神。よく考えれば価値観がとことん違う存在なのだから、ある程度は自分が堪えなければまともな情報は伝わらないのだから……。
「うん、うん!その心構えは大切だよ!
同じ存在ではない事は確定的に明らかなんだからねぇ!」
そして、その考えは合っていたようで、心構えを噛み砕いて自分のものにした所で、彼は子供みたいな、それなのに大人っぽい矛盾した笑顔を浮かべる。
彼は空中に腰掛けていた体勢から地面に降り、パン、と手を叩くとコムギの入ったクリスタルの元へ歩いていく。時々こちらを振り向いているのを見ると、後ろについて行けばいいらしい。
1歩後ろをついて、資料の山を乗り越えながら登りコムギのクリスタルの前まで着く。
そこで彼はコンコン、と水晶を叩きながら口を開く。
「この娘は、この砂漠でも1番毒が強いサソリに刺されてる。
こうしてなかったら……もう1時間も持たないんじゃないかな?」
「え?」
カレーって美味しいよね、とでも言うみたいにさらっと言われた死の可能性に改めてクラっと目眩がする。
けど……ここで倒れるわけにはっ!
遠のく意識を頬肉を噛む痛みで引き戻し、コチラを見つめてくる彼の目をきっちりと見つめ返す。
「それ位……耐えなきゃこれからやっていけないし……助かったよ。鍛え直すなんて手間が増えなくて。」
心底安心した、と言ったふうに神はため息をつくと、俺を見据えて『クエスト』を投げかける。
「君は、この子を助ける為にどれだけの仕事が出来るかい?」
今までに最高潮に黒幕みたいな悪い笑顔を添えて。