プロローグと獣娘童話
ヒロイン(予定)がそろいました!
「はぁ……だから強襲するのだけはやめておけと……」
水色がかった緑色の草地に額をつけて頭を下げた俺を、新しく現れた2人目の影が覆う。
その人物が発した声は凛として張りがあり耳に心地よい音を届ける。その声はコムギを慈しむような雰囲気を伴って、コムギを慰める。
頭を上げてその人の顔を確認する。森の清純さを表しているような透き通った緑色の長髪。モデルのような体型をぴっちりと包み込む黒に近い深緑色のライトアーマー。 赤い筋のついたギザギザが縁取る上へとピンと立った三角耳。凶暴さを前面に押し出したようにつり上がった口と、その印象を変えてキレッキレなオフィスウーマンとかのイメージへとしていくバランスの良い凛とした顔。
そんな麗しい女性は1通りコムギをたしなめた後、俺へと向き直って声を発する。
「主人も主人だ。女性には優しくすべきだと一人でブツブツ言っていたのは主人ではないか。言葉は簡単に覆すものでは無いぞ?」
目を釣り上げ、怒った顔をした彼女はそれだけ言うと、ハッとした顔をして申し訳なさそうな顔をする。
「自己紹介もせず説教するのは流石に失礼だったな……すまない。
私は亀だったミドリだ」
薄々そうかも、と思っていたけれどやっぱりミドリだったか……。
元々の世界でのミドリは、水槽の中で飼育している20センチにもなっている6歳のミドリガメ。本当の種族名はミシシッピアカミミガメで外来種で駆除対象の一種ではあるけど……。逃がさないで飼う分には問題は無い。
今更緑色だからミドリだなんて名前つけたのが申し訳なくなる。ペットへの名前は大体そんな感じな名前でつけているものであるけど……。こうやって人間型になってさらに美人さんだとさらに申し訳なさが倍増というか……。
「「主人?」」
いきなり止まって何かあったのか、と2人が覗き込んでくる。2人ともとてつもなく可愛くなっているから……。何というか、鼻の奥が熱く……。
今では疎遠になってしまった友人からはウサギとかめかよ!だなんてよく言われた俺のペットたち。今までのいとおしさも合わせ、何と言ったらいいのかわからない気持ちがあふれる。
これが萌えか……。
「いや、何でもない」
「?それならいいんだけど……」
「では、この場所の大体の説明でもしようか?主人。
泥団子に連れられてここに来て人形になれたはいいもののやることが無かったからな、2人で散策しておいたんだ。住む場所に使えそうだし、情報はあるに越したことはないは主人の口癖みたいなものだろ?」
それだけ言うと俺の両手をつかんで二人は引き起こす。
「こんな場所でするのもなんだし……」
「中で話をしようか!」
二人が体をずらして俺の視界を開くと、目がくらんでからそれ以降は2人と地面しか見えていなかった視界に瓶の中の景色が広がる。
水色がかった草の生えそろった草地がサッカーもできそうなくらいに広がり、その奥には一種の豪邸にも見える建物が建っている。
水晶みたいな水色な透明素材が散りばめられたその建物。ツタ模様の彫刻が柱に刻まれいかにも高級感漂っていて、踏まない場所のことごとくには玄関のドアノブにいたるまで装飾が刻まれている。
ニカッと笑うミドリと柔らかな笑顔で手を引くコムギに連れられ、そこへと駆け出していく。
どんな機能が付いているのだろうか? 内装も贅沢になっているのだろうか?
ワクワクとした気持ちを抑えることなく口角を思いっきり吊り上げて笑顔を作って駆けていく。