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その剣は誰がために  作者: 山と名で四股
7/15

7.

「どうだいエリック君は。なかなかしっかりした子だろう」


「はい。とても同じ年とは思えませんでした」


「彼は苦労しているからね。それとどうやら亡くなった彼の母親はかなり優秀な人だったみたいだね」


「私は、エリックと3年後に一緒に養成所に行くのですよね?」


「僕はそのつもりだけどリズは嫌なのかい?」


 娘の態度に首を傾げる


「あまり男の子と話した事がないので、その……お友達になれるか自信がなくて」


 くすりと笑ったガスタンは


「大丈夫だよ。失礼な事をしなければ彼はリズの事を大切にしてくれるはずだよ。明日以降、君達は色々な事を一緒に乗り越えていかなくちゃならないから、きっとその間に仲良くなれると思うよ」


「あの…私も何かお手伝いをした方が良いのでしょうか?」


 娘の言っている事の真意を悟ったガスタンは


「エリックと比べているのかい?」


「そ、そんな事は……」


 図星だとリーズの顔が言っている。


「リズの気持ちはうれしいけど。リズがエリックと競っても仕方ないよ。リズにはリズがやらなくちゃならない事があるだろうからそれを頑張れば良いと思うよ」


「私にできる事ですね」


「そうだよ。リズは勉強しなきゃいけない事がたくさんあるんだからね」


「わかりました。私は、自分にできる事を頑張ります」


 笑顔で応える娘の頭を撫でる。


「では、お父様。リズは自分にできる事を頑張ります」


 さっと挨拶するとリーズは部屋を出て行った。




 翌日、予定どおり屋敷に現れたエクソシストであるポーカーが、2人を連れて外へ出た。


「さて、親父さんから聞いていると思うが、2人にはエクソシストになるための訓練を受けてもらう。本格的な訓練は、養成所で始める事になるが、それまでの3年間で2人には基礎を叩き込むつもりだ」


 両腕を組み話すポーカーは、いつもと違い真剣そのものだ。エリックとリーズも真剣に話しを聞いている。


「そこで、まずは2人の今の状況を把握したい」


 そう言うと2人の前に一本の剣を見せる


「これからこの剣をこうしてずっと持っていてくれ」


 ポーカーは、剣を肩と水平になるところまで持ち上げて見せる。


「「はい」」


 2人はポーカーから剣を受け取り、ポーカーのように持ち上げた。初めて持った剣の重さは、2人が想像するよりも重かった。だが、2人が持っているのは大人が使うショートソードだ。剣の中では最も軽い部類に入る事を2人は知らない。


 持ち上げる事は2人ともできたが、持ち上げてすぐにリーズは重さに耐えきれずに剣を下ろす。そして少し後にエリックも耐えきれずに剣を下ろした。


「まあ、こんなところか」


 何かを量ったようにうなずくポーカーは


「次は、これだ」


 庭に打ち付けられた細い杭の上に飛び乗ると片足で立った。


「この杭の上でバランスをとれ。どのくらい立っていられるかを見る」


 順番を譲り合うが、先にエリックが試す事になる。エリックが杭の上に立ち、片足になる。しばらくは耐えていたが、次第にふらふらするようになり、最後にはバランスを崩して杭から落ちた。


 次にリーズが、同じように挑戦する。不思議と姿勢が決まりピタリと動かない。


「お、姿勢がいいな」


 ポーカーが感心する。最初は余裕だったリーズも足に疲れが来たのか膝が震えだし、最後はこらえきれずに杭から降りた。2人がポーカーを見ると


「2人の基礎力は大体わかった。力はエリックの方があるがバランスはリーズの方がいいな。だが、2人ともこのままじゃとても戦う事はできない」


 2人はがっくりとするが


「そのための訓練だ。今日から2人には、日課通りに生活してもらう。時々テストするからサボるとすぐにわかるからな。日課は、この庭の端から端までを全力で走るのを30回」


 エリックとリーズがいる庭は、かなり広い距離にして80mくらいはあるだろうか。


「次は、この杭を2本立てるから。この杭の上で片足立ちを30分」


「その後、この剣の素振りを300回だ。まずはこれを日課として2人にはやってもらう」


 2人は覚悟するようにうなずく


「あと、余裕があれば持久走をしておくんだな。まだ身体ができていないから無理に筋肉をつける必要はない。剣はすべての武器の基礎になるから今のうちに馴染んでおけ。バランスは重要な要素だからな集中力を高めるためにも杭の上では意識するように取り組むんだ」


「「はい」」


「いい返事だな。だが、日課が終わったときにその元気があればいいがな。今日は日課を見てやるから今から始めるぞ」


 ポーカーに促され、2人は庭の端までやってくると


「いいか全力で走るんだぞ。手を抜いたりしたらやり直しだからな」


 2人はポーカーの合図に合わせて全力で走る。2人の足の速さは若干エリックが早い程度で大きな差はなかった。必死に反対側の壁に手をつく2人を見たポーカーは


「次行くぞ。準備しろよ!」


 と声をかけ、すぐに合図を送った。ほとんど休む間もなく全力で2人は反対側の壁に向かって走った。肩で息をする2人に休息はほとんど与えられず、再びポーカーの合図で走り出す。徐々にスピードが落ちていく。


「ほら、全力で走れと言っただろう」


 サボるつもりはないが、身体がついてこない。それでも2人は壁と壁との間をひたすら行ったり来たり繰り返す。何とか走りきった2人は、30回目を終えるとすぐに庭に大の字に寝ころんだ。


「ほら。休憩はまだだぞ。次は杭の上に立て」


 まだ呼吸も落ち着かない2人だが、ポーカーに言われるままに立ち上がる杭の上に上がり、片足を放す。走り回った影響ですぐにバランスを崩しエリックが杭から落ちた。リーズも何とかバランスをとっているが、呼吸が整わずやはり杭から落ちてしまう


「疲れていても集中を切らすな。いざと言う時こそ必要なのは集中力とバランスだぞ」


 呼吸を整えながら2人は杭に上っては降りる事を繰り返す。すでに両足とも立っているだけでブルブルと震えるほどふらふらになっている。30分と言う時間がまるで3時間もあるように感じる2人が限界を感じた頃、ようやくポーカーからやめてよいと声がかかった。


「最後は、素振りだ。一回一回しっかりと振りぬけ。適当に振ると危ないからな絶対に気を抜くなよ」


 二人はショートソードを手に取るとポーカーの見本通りに素振りを始める。すでにがくがくと震える足のせいで剣をまともに振ることができなくなる。特に力のないリーズは剣を持ち上げる事も辛そうになっていく。


「疲れても苦しくても相手は待ってくれないからな」


 厳しい言葉で2人を責める。見張られている以上2人は手を抜くこともできない。ふらふらしながら剣を振り、エリックがようやく300回振りぬく事ができた。だが、リーズは200回にたどりつけない回数ですでに剣を持ち上げることもできなくなった。


「よし。今日はこれまでだ」


 リーズは悔しさからか涙していた。


「リーズは、あとで残りの回数を振る事」


 ポーカーの容赦ない言葉に涙を拭き頷く。


「これから俺が良いと言うまでこの日課をこなせ。明日からは2人だけで訓練するんだ。さっきも言ったが手を抜けばすぐにわかるからな。もし、手を抜くようなら俺はすぐに指導をやめる」


 2人が顔を見合わせる。


「手は抜きません」

「私もです」


「よし、必ずやり遂げろ。今日は、身体を十分休め、身体をほぐしておくんだな。明日からしばらくは身体が動かないと思うが、そのうち痛みもなくなるはずだ」


 ポーカーはそう伝えると屋敷の中に戻る。


「ずいぶんと厳しいスタートだけど2人はどうだい?」


 影で見守っていたガスタンがポーカーに確認すると


「2人のためにも手は抜きませんよ。次は2週間後あたりに来ます」


「2人は何とかなりそうかな?」


「さあ。それは2人次第でしょうね。2人の想いが強ければ乗り越える事ができますし、弱ければここであきらめるでしょう」


「なら2人は大丈夫だね」


「親のひいき目ですか?」


「いや。僕の感だよ」


 ガスタンとポーカーは、外で転げたままの2人を見る


「きっと乗り越えるでしょうね」




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