姉よ。
姉よ。
どうしてお前はそんなに……狡いのだ。
「姉さん。 ロブスターの食べるところは、頭じゃない。」
部活帰りの私は、食卓に並べられて居る自分の皿の上に、ロブスターと思しき食材の爪の部分と頭の部分が、ちょいん、と、乗って居るのを見て、瞬間的に犯人を見出し、今言及している。
「お母さんが、半分こして食べろって言ってたもん。 爪あるじゃん。」
「もん、じゃないわよ帰宅部。 あたしはあの爪と頭で何をするの?」
「……食べ、ないの!?」
くわ! と、目を見開いて私を見る高校二年生である姉という小さい怪物。
中学三年の私は163cmであるが、姉は150cm以下である。 前に聞いた時は、150cmと言い張って居たが、絶対に嘘だ。
「いや。 爪は食べるけれど、頭はどうするの。」
「しゃぶれ。」
そして、リビングのソファーで寝転がって、テレビを見ながら、ぎゃはは、と、笑う姉。
ビキィ! と、何か自分の中で何かが折れた感じがした。
私は、ロブスターの頭を素手でむんずと掴むと、寝そべってテレビを見てぎゃははと、笑って居る姉の口に、頭の部分からおもむろに突っ込んだ。
「ほむおっ!?」
「お手本、お願い。 ねぇ、姉さん。 しゃぶって見せて?」
「ほ、ほっひいほ! ひゃふへはいほ!!」
「何を言ってるか分からないわ姉さん。 ああ、そうだ。 しゃぶるなら、このままロブスターの頭を口の中で前後させてあげましょうか?」
ガッ! と、姉の頭を後ろから掴み、ロブスターの首を握ってニヤリと笑う私。
姉の結わいでいるツーテールの片方がふわりと私の手に当たる。
「はへへ! はへへ!!」
「やーだ。」
じょぷ! と、ロブスターの頭を引いて、押した。
「おぶっ!!」
こうかはばつぐんだ。
抜群すぎて、姉の唇にロブスターの二本の髭? 角? まあ、尖った物が刺さった。
「直美!! お姉ちゃんに何してんの!?」
そして、その光景が母に見つかった。
目の前には、涙目の姉。
姉よ。
お前は本当に何がしたかったのだ……。