No.1 日焼け止めは紫外線を遮断する。
本気で他の方法を探してみようか?
全ての物事には解決法が必ずあると思う。しかし、それは必ず一つだけとは限らない。また結果は同じでも様々な過程を踏む事は出来るはずだ。
①日焼け止めは紫外線を遮断する
俺の名前は紫藤洸也、15才だ。ごく普通の家庭に生まれ、多分普通に恵まれているとおもう。特に突筆する事ではないが顔はブサイクではないぞ。しかし何かの才能がある訳でもない。まあ自己紹介はこれくらいにしておくか。頼むから突っ込まないでくれ。
因みに今日は佐神高校の入学式の日。
高校受験も終わり、俺は自由になりたかったのだが、俺の通う高校は生憎大学付属ではなかったので、俺はまた受験という忌々しいモノを三年後に控えている。
ふとベッドの横の窓を開けてみる。桜の花が満開である。窓から差し込む日差しを俺は直視して感じた。そして俺は叫んでいた。
「窓の方向が東向きだからって、この日差しは何なんだ!!日焼け止めが必要かもしれん!!」
俺はベッドから飛び降り、タンスの引き出しを開ける。そこには俺の求めていた物があった。オーガニックの日焼け止めが。
バタン。突然向かい側の扉が開く。
「お兄ちゃん大丈夫?」
こいつは俺の妹の由莉だ。
よく俺の事を心配してくれるみたいだが、俺にとってそれは単なるお節介に過ぎない。
「俺の部屋にはいるな!!俺の部屋の平均湿度はお前の部屋のとは違う。お前の体調は保証出来ん。」
俺はタンスの横の鏡の前で慎重に日焼け止めを塗りながら突き放す言い方をしたつもりだ。
「ゴメン〜」
由莉は俺の話を軽く受け流した。
いつもそうなのだ。真剣に対応するのも馬鹿らしくなってくる。
因みに余談になるがこう見えても由莉はモテる。スタイルは良いし、性格も明るく活発。おまけに、ちょっと茶髪でツインテール。これがどう男の感性を揺さぶるのか未だに疑問を感じるが。
俺達は一階のダイニングへ朝ごはんの為向かった。
「お兄ちゃん。朝ごはんだよっ テヘ♪」
由莉がプレートを差し出し、首を30度ほど傾け舌をだす。もしかしたらこれが男を誘うのか?俺には分からないが。そういうのは三次元ではキモいということを教えるべきだろうか?
「ああ。」
俺はやる気なく返事した。
俺の両親は海外に出張しているので、家には基本的には俺と由莉だけだ。毎日由莉が朝ごはんを作ってくれるので俺としてはありがたい。時間効率上な。
今日の朝ごはんは目玉焼きと味噌汁とおにぎり。洋風と和風が混じっているがそれはもう慣れた。目玉焼きの上に「お兄ちゃん大好き」とケチャップで描かれていたが、俺は見向きもせずフォークでぐちゅぐちゅにかき混ぜる。
「ううっ…酷いよ。」
そんな小声が聞こえた気がしたが御構い無しにかき混ぜる。かき混ぜる。かき混ぜる。かき混ぜる。正確にはゴチャゴチャにするというのだろうか?
朝ごはんを無事済ませ時計をみる。三時間後にタイマーが鳴る様に設定もして置いた。どのみちそろそろ家を出た方がいい。入学式に遅れるのは流石にまずい。
「行ってくるよ。」
「バイバ〜イお兄ちゃん!」
あいつを見ていると頭がおかしくなりそうだ。
佐神高校の入学式のプログラムの半分が終わりつつあった。俺は壇上に立った生徒会長の話を体育館で聞いていた。体育館では大型扇風機が何台かあったので、大勢の人数による蒸し暑さは回避出来た。
「……で新入生の皆さんに簡単にこの学校の生徒会の仕組みを…」
俺は脳に全シナプスを集中させて考えた。この生徒会長の目的を。
こいつは何をしたいのか。生徒会の仕組みを入学式で話すという事は少なくとも、新入生の中から、良い人材を引き抜こうとしているのかも知れない。俺は腕を組みながら考えた。
いやまさか…
俺の集中力はここで途絶えた。
ピリリリリリリ俺のバックからアラームの音が聞こえる。いや警報と言っても過言ではない。
一斉にみんなが俺を見つめている。本気で他の方法を探してみようか?いや、俺のやる事はただ一つ。
俺はカバンから日焼け止めを取り出すとすぐ肌に塗り始めた。この日焼け止めは三時間おきに塗れと書いてある。俺は決して間違った事はしてないはずだ…
「あ、あの…」
生徒会長の声がスピーカー越しに聞こえる。しかし俺は淡々とオーガニック日焼け止めを塗り続けた。
入学式の途中に日焼け止めクリームを塗る新入生など前代未聞に違いない。周りの生徒も唖然としている。
そうこれで良いのだ。