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漫才

作者: 蟹地獄
掲載日:2026/05/17

舞台袖。

出囃子が鳴る。

♪テケテンテンテン テンテン♪

拍手の中、スーツ姿の二人が登場した。

ツッコミの高井。 ボケの森田。


高井「どうもお願いしまーす!」

森田「ありがとうございます〜。今、『この二人まだ解散してなかったんだ』って顔した人いましたね。」

「やめろ。開幕3秒で刺すな。」

「いやでも最近コンビ多いですからね。気づいたら解散してる。」

「地下アイドルみたいに言うな。」

「この前なんか久々に会った芸人が、『今エクササイズの講師やってる』って。」

「同じ芸人として負けた感じがするなぁ」

「しかも人気講師」

「完全に負けたなぁ」

(笑)

森田が急に真顔になる。

「ところで僕ね、最近ちょっと大人になりまして。」

「ほう。」

「怒らなくなったんですよ。」

「へぇ、前におまえ、牛丼つゆだくじゃなかっただけで店員に『俺の喉のコンディションどうしてくれんの?』って言ってたのに?」

「あぁ、あの頃は若かった。」

「先週だよ。」

「まぁそんなこともあったね。でも今は違います。」

「ホントに?。で、どう変わったの?」

「まず、道で肩をぶつけられても怒りません。」

「ほぉ〜、偉いね。」

「『あ、この人も人生あるんだな』って。」

「急に仏。」

「ただ、そのあとめちゃくちゃ舌打ちはします。」

「してんじゃねぇか。」

「チッチッチッチッチッチッチッチッ!!!!って。」

「圧がつよ!」

「でも心は穏やかです。」

「口が戦国時代なんよ。」

(笑)

高井が客席を見る。

高井「そういえばもう夏ですね。」

森田「夏といえば怖い話ですね。」

「何おまえ怖い話できんの?」

「ありますよ。実体験。」

「ほう。」

「夜中、家で一人だったんです。」

「うん。」

「そしたら急に後ろから『パキッ』って音がして。」

「怖っ。」

「振り返ったらね。」

「うん。」

「床に落ちてたプリッツ踏んでました。」

「しょうもな!!」

「しかもサラダ味。」

「味の情報いらんのよ。」

「でもね、そのあと本当に怖いことが起きた。」

「何?」

「誰も買ってないんですよ、プリッツ。」

「えっ!?こわっ!?」

「僕ポッキー派なんで。」

「そういう問題じゃねーだろ!!」

客席がどっと沸く。

森田が調子に乗る。

森田「あと怖いと言えば最近AIが怖かったですね。」

高井「なにぃ?急に現代的。それで?」

「うん。あれ、なんでもAIに仕事奪われるっていうじゃないですか。」

「まぁ言われてるね。」

「でも安心しました。」

「なんで?」

「AIには絶対おかんのLINEは再現できないからね。」

「どういうこと?」

「おかんは『今どこ?』だけしか送って来ない派だからら。」

「まぁ家族あるあるですな。」

「そんで俺が『仕事中』って返したらさ、」

「うん。」

「そう。」

「何?!」

「いや、『そう。』だけ返ってくるのよ。」

つめた!」

「しかもそのあとスタンプ。」

「どんな?」

「泣いてるパンダ。」

「情緒が読めん!」

「何を訴えてんのか全く分からん。」

(笑い)

高井がため息をつく。

高井「お前って変なことばっか考えてるよな。」

森田「いや僕、普通ですよ。」

「どこがだよ。」

「この前だってコンビニで店員さんに『温めますか?』って聞かれて。」

「ほぅ。」

「『僕の心もですか?』って。」

「キモすぎるだろ!!」

「そしたら店員さん。」

「うん。」

「『そちらはセルフでお願いしまーす』って。」

「うまいな店員!!」

「負けました。」

「負けましたじゃねーよ!」

「普通に負けました。」

「普通じゃねーよ!」

森田、しみじみ。

森田「ところでさ…。」

高井「なに?まだ何かあるの?」

「接客って人間が出ますよねぇ。」

「そりゃ店員さんも人間なんだから当然でしょ。」

「昔コンビニで、『袋いりますか?』って聞かれてさ。」

「ほぅ。」

「『人生のですか?』って聞いちゃって…。」

「いや結婚式のスピーチじゃないんだから…。」

「そしたら『そちらは破れておりますので』って言われた。」

「誰がボロボロの人生だ…ってその店員さん絶対さっきの人だろ!」

大きな笑い。

高井はもうあきれ果てている。

高井「ダメだお前と話してると疲れる。」

森田「でも最近気づいたんですよ。」

「今度は何?」

「人間、疲れてる時ほど優しくされたいじゃないですか。」

「まぁそうだね。」

「だから僕、疲れてる人には優しく声かけるんです。」

「へぇ、どんな?」

「牛丼屋で死んだ目してるサラリーマンに。」

「何してんの!」

「『紅生姜べにしょうが、今日キレッキレの味ですよ』って。」

「なんの情報だよ!?」

「『攻めるなら今日です』って!」

「もうわけわかんね!」

「そんで『僕ですか?僕のことなら気にしないでゆっくり続きを食べてください。』って。」

「怖くて食えんわ!」

会場、大爆笑。

高井がプンスカしながら言う。

「もうええわ!!」

「どうもありがとうございましたー!」

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