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ジョージ・タウンへのお買い物

オーガの襲撃の後始末が落ち着いたので、ちょっと延期になっていたお買い物を実行することになった。エリック様と私で街に出てお買い物するのである。

しかし、どうやら、街の方にも一部にオーガの襲撃があったことからこの街の領主との会議があるということである。で、その後、領主夫人とお茶会をするということのようである。

(えーっ、もはや名前だけとはいえ伯爵令嬢なのに準備を侍女もなしに一人でやらなきゃならないの?そんなの無理じゃん。いい加減な格好で行って恥をかくだけじゃないの)

それでその日は一日中どよーんとして過ごしていたのである。

夕方頃になってレンドルフが「どうしたんです?聖女様。何か拾い食いでもしてお腹でも壊したんですか?」

「ち、違いますわ、オホホ」

(男の子にはこう言う女の子の気持ちって理解されないのだろうねえ)

「え、えっと、多分皆様には認識されていないと思うのですが、一応、私は伯爵令嬢なのです。けれどもせっかくのお茶会にお誘いいただいたのに侍女もいない私では十分な準備もできません。そうなればワイズマン子爵夫人をがっかりさせてしまうだろうと残念に思っているところなのです」

ワイズマン子爵は北辺の領主ではあるけれど、王都の社交界にはあまり顔をお出しにならないようで、私も名前しか知らない方である。


「そうですねえ。これはちょっと団長に相談しましょう。」といってレンドルフは向こうに行ってしまった。

夕食後も特に何も言われなかったのでまあ期待しないでおこう。


翌日、朝早く起きてお風呂に入って出かける準備をしたけれども、クリスティーナはそもそも自分一人で髪を結ったことなどないのである。

それでも頑張って三つ編みを結ってみたけれど、毛が跳ねてしまって残念ということにしかならなかった。

自己嫌悪感一杯のまま朝食のために食堂に行くと、先にエリック様とレンドルフが来ていた。

レンドルフは私を見て「ぷっ」と吹き出して「おはようございます、聖女様。今頭に鳥の巣を作るのが最新ファッションなんですね!」とからかってきた。


(うっ、そ、そこまでいうことないじゃない)

「わ、私は髪を自分で結ったことはございませんので…」

(あ、いけない、あまりの情けなさに涙が出そう)

じわっと涙が溢れそうになってきた。

こんなことで泣くなんて、涙をまわりに見せたくない。

「さ、先にお部屋に戻らせていただきますね」っていって涙を見せないように食堂を出てゆく。走って部屋に戻るともう鍵をかけてわんわん泣いた。

伯爵令嬢と言われても、聖女様と言われても、私は自分の髪の毛ひとつ結うこともできない女なのだ。

もちろんレンドルフ様にあんなことを言われても当然なのである。けれども、私だって精一杯やったのだからちょっとくらい「頑張ったね」っていってくれてもよかったじゃない。


その頃、食堂では騎士ダニエルが「レンドルフ様。聖女を泣かせちゃいましたね」と静かにいうと「問答無用!」ともの凄い勢いで剣を繰り出した。レンドルフはわずかの差で飛び退いたためダニエルの剣は燭台のローソクを切り落としただけで空を切った。

「ま、待て待て、話せばわかる」とレンドルフは言ったが、多くの騎士や兵士たちが「たとえ副団長といえども聖女様を泣かせた罪は許されない!」と或いは剣を、或いは槍を繰り出してきたのである。

レンドルフは大柄な体をまるで豹のように捻って攻撃をかわしたが、「これはやってられない」と一目散に食堂から逃げ出した。多くの騎士や兵士たちは「レンドルフ様、逃げるとは卑怯ですよ!」と彼を追いかけはじめたのである。


クリスティーナがようやく泣き止んで諦めて外出の準備を始めようとした時に、ドアが乱暴にノックされた。

どうしたんだろう、と扉を開けてみると真っ青な顔をして、ゼイゼイと肩で息をしているレンドルフ様がいた。

「どうしたのですか?」と聞いてみると、レンドルフは「せ、聖女様、追われているのです。匿ってください!」と私の部屋の中に入ってこようとする。

さすがに驚いて「きゃー!レディの部屋に勝手に入ってこないでください!」というと、廊下の向こうでアレン君が「レンドルフ様を見つけたぞ!」と大声を上げた。

それから数人の騎士や兵士がやってきてレンドルフ様に剣を突きつける。

「とにかく!私の目の前でレンドルフ様を傷つけることは許しません!」と私が大声で叫ぶと彼らは不承不承剣を引いた。

「一体どういうことか説明してください」と騎士たちに言うと、彼らはさっきの食堂で私が泣きそうになった件でレンドルフ様を処罰すべきだというのである。

まあ、確かにあの時のレンドルフ様のからかい方には傷ついたけれど、そもそもは私が髪を結うのが下手だったから自己嫌悪に陥っただけである。

「よくわかりました。私のことを気遣ってくださってありがとう。けれども、私は大丈夫ですからこれ以上騎士団の中で騒ぎを起こしてはいけません。レンドルフ様を追いかけたり傷つけたりすることは禁止します」と言うと騎士たちは「やはり聖女様はお優しい」とか何とかいってニコニコしたけれど、そこにエリック様が現れて、「本日は私と聖女様が街に行くのでレンドルフに留守を頼もうと思っていたがこの騒ぎの罰としてレンドルフは今日は一日中、自室で謹慎だ。ダニエル、アレン、君たちは騎士団の警備に当たれ。先日もオーガの襲撃があったばかりだ。気を抜くな」と命令するとレンドルフは「了解しました!」と言ってそそくさと自室の方に戻って行った。

ダニエルやアレンたちは「団長、団長と聖女様のおられない間は敵を一歩も入れないように全力で警備します!」と元気よく言って解散してくれた。

私もほっとして緊張を解いたが、エリック様は「子爵様が侍女をお貸しいただくと言ってくれたので、お茶会の準備は大丈夫だよ。さあ、他の準備はできたかな?そろそろ馬車の用意もできているよ」と私を促してくれた。

私はお茶会のために焼いたクッキーや厨房のコックにお願いして焼いてもらっていた砂糖菓子を持って部屋から出ると、エリックは私の手を取ってエスコートしてくれた。その動きはあまりに自然だったのでわたしが何か言ういとまもなく手を取られてしまった。

私はこれまでも舞踏会などで婚約破棄された侯爵家のラミレスにエスコートされたことは何度もあるのだけれど、エリック様にエスコートされて心臓がドキドキしてしまったし、きっと顔も真っ赤っかになっていたのではないかと思う。

玄関に着いていた馬車に乗り込むとエリックの顔が真向かいにある。なんだかエリックを直視できなくてつい下を向いてしまう。

エリックによると領主の屋敷に到着後はエリックと領主が会談し、その間に私はお茶会に向けての準備をする。お茶会が終わる頃にエリックと領主がやってくるらしい。また、お茶会は領主夫人とその娘さんが参加するだけのシンプルなものらしい。

「エリック様、様々なお気遣いありがとうございます」とだけやっと言えた頃には短い馬車の旅は終わって領主の屋敷に到着した。

家の前には領主ご夫妻と侍女らしい女性の三人が迎えに出てくれていた。夫人とその侍女らしい女性は私を見てハッと息を呑んだみたいだけれど、すぐに夫人は体制を立て直して「王子様、聖女様、ようこそいらっしゃいました」とにっこり微笑んだ。エリック様はそれに会釈してから子爵とともに先に中に入ってしまった。

で、侍女らしい人は「さあ、これはやりがいがあるわ。しっかり磨いて王子様の横に立つにふさわしく飾り立てましょう」と言いながら私の腕を掴んで引っ張って行った。夫人はふふっと笑って「じゃあデボラ、よろしくね」と言って屋敷の中に引っ込んでしまった。侍女はデボラという名前らしい。

「さあ急いで湯浴みをして、髪にバラの香油を塗り込みましょう。」

(少しタイプは違うけれど実家にいた侍女のサラみたいだなあ)ともう帰ることのない実家を思い出してしまったが、デボラは「さあ急いで指と爪を磨きましょう!時間はないのですから」とテキパキと手際よく次々に準備をしてくれる。

そうして湯浴みから上がると、デボラは「さあ、ドレスを選びましょう。ちょうど、あなたの瞳と同じ夕暮れ色のドレスがありますから、それを試されてはいかがですか?」とドレスを出してくれた。

やや薄紫がかったグレーの生地に上品にレースがあしらわれているドレスである。

それを着せてもらうとデボラは「さあ、これで王都の社交界にデビューできるお嬢様の完成ですよ」と嬉しそうである。

(数ヶ月前までそこに居たんですけれどね)と思ったのだけれどもそれを口にしても仕方がない。ここまできちんと仕上げてくれたデボラには「ありがとう」とお礼を言う。

「どういたしまして。でも、しっかりとお礼を言えるということはきちんと躾けていただいているということで良いことですよ」とデボラはすまして言う。

「さあ、そろそろ時間でしょうからお茶会の席にお向かい下さい。」とデボラに送り出してもらってお茶会の席に向かうことにする。

屋敷の中のよく日の当たる中庭にパラソルが設えてあり、そこには先ほどの子爵夫人が既に座っていた。

「遅くなりまして申し訳ありません」と夫人に言うと夫人は「ちょっと待ってね。もう一人来る予定ですから」と言う。

椅子に座って「どなたがいらっしゃるのですか?」と尋ねると夫人は「実は私の娘なのです。今はこの領地で育てていますが、あと半年もすれば王都に連れて行って社交界にデビューさせようと考えております。なのでこのお茶会も娘の練習の意味も兼ねているのです」という。

「一人娘でいらっしゃるのですか?」と問えばそうだという。ということになると社交界で婿養子になる貴族を捕まえねばならないので大変そうである。

などと話をしていると桜色のドレスを着た少女が屋敷の方からやってきた。「お母様、遅くなりました」とお辞儀をする。

夫人は「さあ、皆さんお揃いのようなのでお茶会を始めましょう」とお茶会を始めたのである。

私は「ワイズマン子爵夫人、今日はお茶会にお招きいただきありがとうございました。私はクリスティーナ・シンクレア伯爵令嬢ですわ。よろしくお願いします」と挨拶した。子爵夫人は「私のことはリディアと呼んでくださいね」と返された。

娘さんは初めてのお茶会で緊張しているようで、「私はリンダ・ワイズマン子爵令嬢です、よ、よろしくお願いします」とカチコチで挨拶した。

「じゃあリンダ様のことはリンって呼んでもいい?」って聞いてみれば「お、お姉様、も、もちろんです」と初々しく返事してくれる。

「今日はクッキーとかお菓子も持ってきたのでリンも一緒に食べましょう」といって和やかなお茶会になった。

彼女たちはやはり聖女としての私、特に病院の患者を全員治した話はここにも伝わっているらしく、その話を聞きたがった。けれども、そんなことを認めるわけにはいかない。私はあの病院でひどい治療が行われていたことでそれをやめさせるために騎士団まで掛け合いに行ったこととそれで軟膏を使う治療に変更させた話を主にしゃべって、病院の話は多分神様がひどい治療を受けて苦しんでいる患者たちを憐れんで治してくださったのでしょうというストーリーを話したのである。すると、子爵夫人が「そうなんです。先日、オーガがこの街に攻めてきた時は自警団の活躍で何とか撃退することができたのです。けれども何人かは怪我してしまって、それで彼らをあの熱した油や焼きごてによる治療を受けせねばならないのかと覚悟したら、あの軍病院のドノヒュー医師が駆けつけてくれて軟膏治療を行った結果、化膿もせずにすぐに傷が回復したのでもうみんな感謝しているのです。これも聖女様が軟膏を作っていただいたおかげですね」とおっしゃった。何だかちょっと照れくさい。

けれども、このオーガの襲撃に対策するためにエリック様と子爵が会議をせねばならなくなったということのようである。

リンは王都の社交界のことを聞きたがった。どうやら、ここには家庭教師もいないためにひたすら教本を読んで勉強するしかないようである。なのでリンは実際の社交界のことを何でも知りたがっているのだろう。結構賢い子なので理解力は良さそうである。

私は「もしエリック様の許可がいただけたら社交界のマナーを家庭教師としてお教えしましょうか」と言ってみた。夫人もリンもそうしてもらえれば大変ありがたいということのようである。

私はエリック様が王子様ということについて聞いたのである。

王都には王太子がいて滅多に舞踏会などには出席しないが、たまには出席することがあって何度か遠くから見たことがある。彼は常に何人かの美少年や美青年を引き連れていて、令嬢とダンスなどすることはなく、おそらく多くの令嬢が王太子のハートを射止めようとアタックしたのだろうが、ことごとく振られてしまうので「氷の貴公子」というあだ名がついている。

その弟君はどこか辺境の騎士団長をしているということであったが、そもそも王都には近づかないらしく、舞踏会などでも一度もその姿を見たことはない。もう幻の王子様なのでいくらそのハートを射止めようとしても令嬢は誰もアタックすらできないのである。

「そうなのよ。今もあんな騎士団の男所帯の中でしょう。王室が何を考えているのかわからないけれど、あの王子様も春を迎えてもいいはずなのにねえ。頑張るのよ」って夫人に励まされてしまった。リンも「お美しいお姉さまならば王子様のパートナーに相応しいです」とか言い出すので、私は思わず「い、いやいやいや、エリック様と私がそんなことになるなんてないですから」と否定してしまった。


そうしているうちにエリック様と子爵が連れ立ってお茶会の場所にやってきた。私たちが立ち上がってご挨拶すると子爵は「お美しいお嬢さんですなあ」とか言っていたが、エリック様が何の反応もしてこないのでつい「あの、エリック様?」と呼んでみるとエリック様は「あ、ああ。子爵様はしっかりクリスティーナを磨いてくれたね。見違えたよ」と呟くように言った。

もしかして会議でお疲れなのかしら。けれどもリンの家庭教師の件について許可をもらわなければと思った私は「エリック様、実は、当子爵家の一粒種でいらっしゃるリンダ様には家庭教師がおられないそうなのです。できれば私が週に何度かこちらに参らせていただいて家庭教師をしようかと思うのですがいかがでしょう」と聞いてみた。

エリック様は「そうだね。騎士団の業務に差し支えないように週2回くらいならいいんじゃないかな」という。

それを聞いてリンは「エリック様、ありがとうございます。またお姉様に教えてもらえるのね」と喜び、子爵夫妻もエリック様にお礼を言っているが、私は「え?私って騎士団に何か業務を命じられていたかしら。ただの居候じゃないの?」と疑問符が増えてゆくのを止められなかったわけである。


子爵様の屋敷を辞して2人で歩いてゆくことになった。

「エリック様って王子様だったんですね」

「なぜ?」

「私にとってはエリック様って騎士団長だったものですから」

「騎士団長で何の問題もないよ。さあ、お店が見えてきたから行こう」


「ドーシー夫人の店は信用できる仕立て屋だからとにかく普段着とドレスを頼もう」

店の中に入ると色とりどりの布に溢れていた。エリック様は「ドーシー夫人、このお嬢様に普段着を5枚とよそ行きを7枚くらいお願いしたい」と注文する。ドーシー夫人は「さあ、遠慮せずにどうぞ。お嬢様の採寸を致しましょう」というので奥の方に入るとエリック様は入り口の椅子に腰掛けて待っていただけるようである。

採寸の後、ドーシー夫人は様々な色の布を出してきてどのお色がよろしいかしらと言ってくる。私はエリック様に「エリック様はどのお色がよろしいかしら」と聞いてみた。エリック様はご自分の瞳の色と同じサファイアブルーの色の布を選んだけれど、それ以外についてはうーんとうなって腕組みしている。

「エリック様、今回は決める色が多いですからドーシー夫人と私とで選ばせていただいてよろしいでしょうか」とエリック様にいうと彼はほっとしたように「じゃあお願いする」といって後ろに下がり、代わりに私とドーシー夫人があれこれファッションのことを喋りながら色を決めていったのである。

できるだけエリック様をお待たせしないようにと急いで布の色を選んだのだけれど、それでも一時間ほどはかかっただろうか。

店の外に出ると、エリック様は「あれだけたくさんの色の中からドレスの色を選ぶって女性は大変だねえ」と感嘆とも呆れともつかない声を上げていらっしゃった。

「そうだ、美味しいレストランがあるんだ。そこに行ってみないかい?」とエリック様が言うので私も賛成してその小さなレストランに入ってみた。そこは猪や鹿の肉のステーキが美味しい店で、岩塩や香辛料で味付けされたお肉のステーキを二人で頬張ったのである。

その後、雑貨屋に行って上等な石鹸や香油を買ったり、食器屋や宝飾店などを回って(こちらでは何も買わなかった)その日の午後を二人で目一杯楽しんだのだった。

そろそろ陽も傾いてきたとき、エリック様が「ちょっと丘のほうに行こうか」と言ってきた。私が「はい」とうなずくと彼は私の手を握ってきて並んで歩くことになった。

(手、どうしよう)

つないだ手をふりほどいてもいいのだろうけれど、何だかエリック様の体温がそこから流れてきて自分の体温が上がっている感じでドキドキする。

そのまま丘の上について大きな石の上に二人で腰かけて夕陽を見る。

距離が近いのでエリック様の体温を半身で受けて熱い。

「もし僕が王子の位を失って国を追われることになったとしてもついてきてくれる?」

「う、うん」

(え?まあ、もし国から逃げ出すことになれば当座の生活費はお父様に泣きつけば出してくれるでしょう。で、どこかの国に落ち着けばエリック様ならば騎士として雇ってもらえることは間違い無いでしょうし、私も村の治療師にでもなってお金を稼げば生活はやっていけるかしら。って、私ってば何現実的に考えているのだろう)

何だか頭が混乱しているのを感じながら、手を繋いだまま丘を下って子爵様の屋敷に向かう。

子爵様にお礼を申し上げて帰りの馬車に乗った。

馬車でエリック様と目が合うとエリック様はにっこりと微笑んでくださる。それで顔が熱くなって視線を落としてしまうということを何回か繰り返しているうちに騎士団に帰りついたようである。

エリック様は先に降りて「さあどうぞ手を」って言ってくれた。

おずおずとその手を取って馬車を降りるとその向こうに騎士たちが待っていた。

「お帰りなさい、団長。何事もなく無事に警護の任を済ませました!お帰りなさい、聖女様。いつにも増してお美しい!」と騎士たちが言っている隅にレンドルフ様が立っている。心なしがやつれている様子である。

「はい、レンドルフ副団長はしっかり反省されたようです!もう二度とあのような暴言は吐きますまい!」って騎士たちがいうとレンドルフ様も「聖女様、ご無事でお帰りで何よりです」と明らかに疲れた声で言うと、騎士たちは「では我々は仕事に戻ります!」と解散していった。

エリック様は私に向かってにっこりして「今日は疲れただろうけれど大丈夫かい?」と聞いてきた。私もにっこりして「今日はエリック様のおかげで楽しい一日を過ごせました。ありがとうございました」とお辞儀した。エリック様はレンドルフ様を連れて団長室の方に向かい、私は自室の方に向かうことになった。

部屋に戻るとさすがに疲れたのでベッドに倒れ込んで、そばにいるピィちゃんに向かって「あの王子様、私のことを本当はどう思っているのかしら。他国に逃げ出す時についてきてってまさか駆け落ちとか考えているのかなあ」

ピィちゃんは「ピィ、ピィ」って鳴くだけである。

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