古代墳墓の冒険
ということで今、私は古代墳墓の敷地に立っている。ここまで案内してくれた神官長はそそくさと帰っていった。
「お化け屋敷はいやよ」といっていると穴から大量のアンデッドが出現してきた。
ターニングで焼き尽くすがまだまだ出てくる。
それを何度かのターニングで片っ端から焼き尽くしてほっとしたとき、後ろから「危ない!」という声が聞こえ、振り向くとバイパー(大蛇)の頭を剣士が切り落としてくれていた。
「ありがとう…!?エリック?」
思わず駆け寄って抱きついてしまった。
エリックは「クリス、お久しぶり」と挨拶してくれた。
その時、あの悪魔の言葉が頭をよぎった。「エリック、だめ。あなたは危険なところに行ってはいけないわ。古代墳墓は私一人で制覇するからあなたは安全なところにいて」
けれども、私が抱きついたままそんなことを言ってもあまり説得力がなかったのかもしれない。
エリックは「男は自分の好きな女性を守るものだよ」といって私の唇にチュッとキスをした。何だかくらっとしてぼーっとしたまま私は頷いてしまったらしい。私ってなんて馬鹿なんだろう。
結局、私とエリックで地下墳墓の探検をすることになった。まずいわ、エリックのそばにいるだけでなんて幸せなんだろう。
幸せな気分のままライトの呪文を唱え、もう一度ターニングをしたら地下一階のアンデッドたちは皆消えてしまった。多分、アンデッド以外のモンスターはいなかったようで、奥まで行くと魔法陣とゲートがあった。
「この魔法陣を壊せばアンデッドの大量出現は無くなるんじゃないかしら」
ということで魔法陣とゲートを破壊したらその後ろに地下に通じる階段を見つけた。
地下二階に降りると動物がどんどん襲ってきた。こんなところに動物の生態系などあるはずないので多分これは魔法で配置されたものだと思う。本当は火か何かで追い払いたかったけれども、おそらく魔法で支配されていたようで、ひたすらに突進してくるばかりであった。なので、エリックが前衛で魔法の剣でモンスターを仕留め、私が後衛でキュアをかけるという役割分担になった。
剣を振りかざすエリックはやっぱりかっこいいのである。
迷宮の一番奥にはトロールがいて無謀な攻撃を仕掛けてきたが、エリックがあっさり返り討ちにして倒してしまうと、その後ろに地下三階に通じる階段が見つかった。地下三階と地下四階はヒューマノイド型モンスターがうろついていた。狂戦士のように会話もせずにひたすら攻撃してくるだけだったのでもう黙々とエリックが魔法の剣で屠るだけだった。多分このモンスターたちも魔法で支配されていることが明らかだった。
地下五階に到達するとちょっと空気が変わった。通路はすべて中央に繋がっている様子である。仕方がないので中央の部屋に入ると、そこには恐らくは古代の帝王であったろう骸が横たわっており、そこから影が起き出してきた。
その影は何か呪いのような叫びを始めたので速やかにターニングを行いアンデットをディスペルした。影はサッと消え去り、もはやそこには呪いの残滓は見当たらなかった。骸も気づいてみると既に砂と化していて原型はとどめていなかった。恐らくは古代の呪いが解かれたので骸の時間が動き出した結果、一気に風化したのかもしれない。
王たちの眠っていた寝台の下には大きな宝箱があり、宝剣や指輪、護符などが収納されていた。おそらくは呪いはかかっていなかったようだけれどあまり必要なさそうだったので全てマジックバッグに放り込むだけにした。
よく見ると、王の寝台の周囲にはたくさんの死体やすでに白骨化したものも見られた。もしかすると、帰ってこなかった多くの冒険者たちはあの呪いの王に敗れてそこで永遠の眠りについたのかもしれない。
部屋を出て安全そうなところで結界を張ってご飯にした。モンスターと死体だらけというところを除けばピクニック気分である。エリックはちょっと不安そうだったが、グレータープロテクションを破って侵入してくるモンスターはそうそう沢山はいない。
そのため、私はエリックのそばにいるという幸せを十分に堪能したのであった。
食事をしてからその階を調べるとさらに下に向かう階段を見つけたので降りてゆくと、ドラゴンの巣があった。そこに眠っていたのは青いドラゴンで、あの赤龍よりもひとまわり小さいものであった。
竜のブレスを浴びないようにギリギリまでプロテクションで防御しながらエリックが一気に切り掛かると奇襲が成功してほとんど反撃のないままにドラゴンを倒すことができた。さすがエリック。
その下の階からは精霊や上位精霊のジンやイフリートやダオ、マーリドなんかが数限りなく出てきた。もうエリックも攻撃が追いつかなくなってきたので私も魔法のメイスを持ち出してきて精霊の頭を殴りつけた。だってエリックの横で一緒に戦えるなんて幸せじゃない!
で、そのあとはまたアンデッドたちが現れたのでターニングである。多分私はものすごくハイになってきたんだと思う。ゴーストとかバンパイヤとか結構出てきたんだけれど、ドンドンとターニングをかけて、追い返したあと、残ったアンデットはエリックが片付けるという感じだった。
で、最後の部屋でリッチが出てきたんだけれど、ハイになった私とエリックはリッチを殴りまくってあっという間に退散させてしまったのである。
で、その奥の部屋に行くと「パン、パン、パン」とクラッカーが鳴って「おめでとうございます!あなた方が最初の達成者です!」と三人の明らかに高位の悪魔が拍手している。
そのうち一人には明らかに見覚えがあった。
「あ、あなた、ヴァッサゴーでしょう!この間病院で会ったわよね!またエクソシズムを掛けてあげましょうか?」というとヴァッサゴーは「こ、今回はダンジョンの管理者として出てきただけなのでエクソシズムは勘弁してください!」と震え声で言った。
そ、そうですよ、今日はダンジョンをクリアしたあなた方に素晴らしい景品をお渡しするためにここにいるのです!我々は悪魔君主のヴァッサゴーと地獄公爵のアスタロト、そしてベルフェゴールという高位悪魔なのです。今回の景品は「ソロモン王の指輪、ロンギヌスの槍、そして聖杯」という豪華3点セットなのです!更にこのダンジョンを最初に制覇したという人への記念プレートですね!さあ、どうぞ!と渡してくれた。
さあ、この記念品を持って地上にお帰りください!自動転送装置が働きますよ!という間に視界が揺らぎ、気がつくと手に持っているのは古ぼけた槍とこれも銀色のコップ、そしてちょっと豪華な指輪である。それと、銀の文字で私とエリックの名前が刻印されたプレートということになる。
エリックが手を振ると、恐らくはアンデッドたちを住宅街の方に逃がさないために待機していたのであろう、軍勢が立ち上がり、その指揮官らしき人が「王子殿下!首尾はいかがでしたか!」と手を振ってきた。私はエリックにエスコートされながら指揮官らしき人の方にゆっくりと歩いて行った。レンドルフも指揮官の横にいた。
エリックは「こちらはヴァロア侯爵だ。この軍勢は彼のものだよ。ヴァロア候、彼女は聖女のクリスティーナ・シンクレア伯爵令嬢だ」と紹介してくれた。
ヴァロア候は私の義兄なのですとレンドルフは紹介してくれた。
それで、とりあえず一同はヴァロア候の屋敷に向かうことになった。




