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新米聖女の講習と新たな冒険に向けて

王都外壁にて

「しかし、団長が王都に入られる日が来るとは思いませんでしたね」

「レンドルフ、これはリンにも怒られたからな。自分の恋人は自分で守れって」

「さすがはリンダ様ですね。良い教育を受けておられます」

「クリスが家庭教師していたからな」

「はいはい、惚気はいいですから、これからの行動を考えましょう。恐らく、城門も王都内の王子殿下の別邸も監視下に置かれているでしょう」

「そうだな」

「ですので、王都に入ったら一旦、ヴァロア候の屋敷にお世話になりましょう。ここは私の姉が嫁に行っていますのである程度は信用できます」

「わかった、そうしよう」

「では、この秘密の抜け道で王都内に入りましょう。少し狭いですから気をつけてください」


王宮某所

「王太子殿下、第二王子殿下が王都内で目撃されたとのことです」

「あの意気地なしがついに王都に来たか。あの噂を流した甲斐があったということかな」

「第二王子殿下はご自身の別邸には向かわれず、ヴァロア候の屋敷に入られたとのことです」

「ほう、ヴァロアか。そういえば乳兄弟のレンドルフの姉が嫁に行っていたな。良い、継続して監視せよ」

「ははっ」


(ちょっといじめたくらいで騎士団に引きこもって王都に近寄らなくなってしまった弟も恋人のためなら王都に来たわけだ。さてどうしてやろうか)


神殿にて

「はあっ、やっと試験が終わった」

馬車で病院から帰ってきた私はさっさとベッドに飛び込みたかったけれど他の二人のルームメイトがいる以上、そんなはしたない真似はできない。

見るとアネットは何だか顔をこわばらせて謎のオーラを発している。

「どうしたの?アネット、何か気分でも悪いの?」と聞いてみると「あなたがひどいのよ。私たちがやっと一人の患者さんを治療している間にあなたは鼻歌を歌ってスキップしながら病院の半分くらいの患者を治療したっていうじゃない。そんな大聖女様ならばもう私たちのことなんて忘れてしまうんじゃないかって心配なのよ」と半べそをかきながら私の胸に飛び込んできた。(いや、鼻歌を歌っていたのは確かだけれどスキップまではしていなかったと思うぞ)

「アネット、あなたは私のお友達でしょ?私はお友達のことは忘れないわ。心配しないで。私たちはずっとお友達よ」と言いながら私も何故か悲しくなってきたのでちょっと二人で泣いていた。

「あのっ、まだ合格発表はまだですのよ。泣くのはまだ早いんじゃないかしら」といきなりソフィアも割り込んできた。「ソフィアも友達よ」

「えっ?」

そうして三人で「みんなずっと友達だよね」と約束しあったのである。


翌日は合格発表の日だった。

私もアネットもソフィアも無事合格していた。合格者は8人だった。

合格した人はその後一週間、聖女としての基礎講習を受けることになる。講習を受けた聖女たちは神殿で、あるいは全国各地で聖女の仕事を行うようになるのである。

教室に一堂に集まった新米聖女たち8人はお互い自己紹介しあったが、私を見て顔をひきつらせて逃げ出そうとする人も少なくなかった。そういう人にソフィアは「クリスは大聖女なんですよ、そんな人に挨拶もできないとは失礼じゃありませんこと?」と逃げ出そうとした人を引っ張ってきてくれたのである。そうして全員と自己紹介が終わったあと、聖女の基礎講習の授業が始まった。

最初は聖女としての立ち居振る舞いの講習である。救いを求める民衆にどのように対応するか、また、途中で治療を切り上げなければならない場合に並んでいた人を怒らせずにどうやって終了させるかについても学ぶことになったのである。マナーの講師は実際に起こりそうなシチュエーションでどうやれば良いのかについて実際に新米聖女にやらせてみてうまくゆく方法を教えてくれたし、質問しても細かいところまでアドバイスをくれたので、かなり役に立ちそうだった。

翌日は治療術の実際であった。キズの治し方や病気の治し方、また、毒に当たった時の対処法など、これも聖女が実際に治療するときに必要な知識を教えてくれた。まあ、この分野についてはヒルダ様の知識があるからほとんど聞かなくても問題なかったけれど。

翌日は薬草学の授業だった。講師は筆記試験の時に文句を言ってきたという教授だったが、部屋に入ってくるなり「君は薬草学の助手にならないか」とか言い出して、他の先生に「シンクレア嬢を助手にとりたいと考えていない先生の方が少ないんですよ。この件については本人の意向を尊重すべきですね」とたしなめられていた。

こうして一週間が過ぎていった。


王宮にて

「はっは、何だこの報告書は。単位を書き間違えているのか?」

「王太子様、我々も何度も神殿に確認しましたのでそれで間違いございません」

「アンデッド五十匹ディスペルなんてどういうことなんだ」

「試験会場には二十匹のアンデッドを出していたそうなのですがその裏に予備として三十匹のアンデッドを置いていたそうです。それが全部ディスペルされたということです。これはパール公爵家のソフィア様もご覧になられたということです」

「ああ、ソフィアも今回の聖女試験に参加していたんだったね」

「ソフィア様にもお伺いしましたが、この報告書の内容は間違っていないということでした」

「ソフィアまでがそういうのなら間違いないのだろう。けれども、この報告書通りならもう人間兵器だよね。それならあの古代墳墓の攻略をお願いしようかな」

「え、あの『還らずの』墓地ですか?お一人で行かせるのでしょうか?」

「そうだね、じゃあエリックと行かせよう。それなら彼女も喜ぶだろう」

「けれども、彼女にどうやって承諾させるのですか?」

「なに、彼女は私と婚約するなんて絶対嫌って叫んでいるだろう?なので彼女に父上のところで私との婚約を発表するか、それとも古代墳墓に行くかを選ばせればいい。私は彼女が私と婚約するというならそれで何も問題ないからね。もし私が彼女と婚約するならば父上も母上もお喜びになるだろう」


神殿にて

「これでやっと講習も終わりね」

「あなたはどうなさるの?」

「私は王太子様のご意向次第ね。まだ何も聞いていないわ。アネット、あなたは?」

「私は当分王都に留まると思います。新年をここで過ごしてからお父様と領地に戻るんじゃないかな?」

「じゃあ、ひとつ頼まれてくれない?ワイズマン子爵家のリンダ子爵令嬢が新年のデビュタントの準備でもう王都の別邸に到着していると思うの。彼女に私は元気よってお伝えいただきたいのです」

「ええ、あなたのことをしっかりお伝えしておくわ」


そうして、ソフィアやアネットとお別れした後、神官長に呼ばれた。神官長によると、これから王宮で国王陛下とご挨拶して王太子との婚約式をやるとのことだった。

「そ、そんな話聞いていません。大体私は王太子様との婚約なんて承諾しておりません」

そういうと、神官長は困ったように、「もし、聖女様が婚約について承諾いただけないならば古代墳墓の浄化をやって欲しいとのことだったのですが」

(え、古代墳墓ってあのお化け屋敷のことよね。い、嫌だ。でも王太子様との婚約は論外だし)

「古代墳墓の浄化は私一人で行えということでしょうか」

「おそらくそうなると思います。並のものがあそこに行っても単に殺されるだけですから」


王宮にて

「王太子様、聖女様は古代墳墓を選ばれたそうです」

「……そうか。ではヴァロアを呼べ」


ヴァロア邸にて

「王太子殿下から聖女様が古代墳墓の浄化を行うためにその周辺の警護を命じられました」

「王太子殿下がエリック殿下のことを知らないわけないので意図的なリークの可能性が高いでしょうね」

「聖女様とエリック殿下を我々の手勢で逃がせばどうでしょう」

「それこそ飛んで火に入る夏の虫だろう。王太子にしてみれば聖女様の大きな力を敵に回すくらいなら反逆者として殺してしまった方が安全だろう。多分、ヴァロア候の外側に逃亡を防ぐための包囲網を敷いているだろう」

「ということは逃げ道はないと?」

「ああ。私と聖女様が古代墳墓から帰らなければ処刑したのと同じ効果になるしね」

「もしエリック殿下が古代墳墓を制覇すればどうなります?」

「おそらく王太子はそんな可能性はないと考えているだろうが、もしそうなれば私を英雄扱いして王宮に縛り付けるだろう。私と聖女様を王宮の支配下におけば兄上と聖女様が婚約したのと同じ効果は得られる」

「さすがは王太子殿下だ、抜け目はないですね」

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