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プロローグ
「婚約は破棄する!」
広間に響くその声を私はぼんやりと聞いていた。
いつかその日が来ることは覚悟していた。
もう1年も前に私の魔力測定で私には何の魔力もないということが明らかになってからは侯爵家からは何の連絡もなくなってしまったのである。もう今はいつ婚約が破棄されるか、それを待っていた日々であった。
「ラミレス・デニア侯爵令息は今後、クリスティーナ・シンクレア伯爵令嬢との婚約を破棄し、妹のミランダ・シンクレア伯爵令嬢との婚約を結ぶものとする」
ーああ、異母妹のミランダが新しく公爵家との婚約することになったのね。
貴族の結婚は政略結婚である。侯爵家も魔力のない私との結婚には利益がない。ミランダは今年の魔力測定でめでたく魔力が確認されたのである。そうなれば、魔力のない私との婚約を破棄して魔力のある妹と婚約することは当然のことであると言える。
私は力無く立ち上がって、周囲の人が意図的に視線をそらすなか、どこを歩いたのかも記憶にないまま自宅に戻ったのである。