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藪道を野犬を退けてシズへ

はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……


逃げに逃げて、ずっと山の下の方まで駆け降りて、岩陰へ隠れる。

息が切れてしまって苦しいので休んでいたぼくたちだったが、もう竜の足音が聞こえなくなると、今駆け降りてきた長い斜面を引き返して、食い散らかされたであろう盗賊の死体を、残党に警戒しながら漁ろうかと、ちらっと思ったが、お互い顔を見合わせると、以心伝心で首を横に振り、止めておこうと目で伝え合った。

まだ怖さの残響が大きく、声を出す気になれなかった。


盗賊との衝突で、少しだけ傷を負っているようだったので、装備を脱いだ。

腰巻一つになってみると、左肘と左腕と左脇と左腿と左尻、右肩と右腕と右脇と右腰と右腿と、あとは左の頬骨にも、浅い刺し傷や切り傷や打撲傷が幾つかあったので、自分で処置できない箇所はエコに薬草で応急処置してもらった。

トヨやマサもそれぞれに傷ついていた。


装備も槍や斧や剣や鎌などで傷つけられた痕があり、幾つかは修繕を要したので、岩陰で休みながら直せるだけ直した。


籠に容れてきた予備の串で、防護パーツの破損した補強材を取り換える。

切り裂かれた草も綴り足して応急処置。

減った串はその分、携えて来た僅かな柴から削りだして少しでも補充しておき、予備が皆無で応急処置不能という事態に陥らぬようにしておく。


盾は直せる作りにはなっていないが、無用の長物になってしまうほど重大な破損は無い。

最も被害を蒙ったマサの盾は、左上部の縁が斧の連打を受けて破損していたが、盾前面に補強の板を当てているので盾として機能しなくなるほど深く完全に破壊されてはいない。

その分、補強の細長い板が一枚破壊されていたので、予備の板と取り替えたいが、そんな重たく嵩張るものはマサも持って来ていない。

そしてガントリッシュ緑道には木は生えてないと言ってよい。

仕方なく、前面に張っている三本の細長い板切れのうち、比較的無事な右側の板と入れ替える。

更に、破壊されている板は上下を入れ替えてとりつけ、そのままではぶらぶらしてるので紐で盾に縫い留める。

左上の破損した縁の部分は、半割きにした灌木の編み込みがなし崩しに外れたうえに更なる攻撃を喰らって切り裂かれ切り飛ばされへし折られて、バラバラになってしまっているので、それらを紐で束ねて押し込み、無事な部分に綴り繋いで応急処置。

左側の補強板はそれから上に当てて縛り付けた。

これでもう一度同様な連打を喰らっても同様にマサを守れる。

マサの盾の修理には、結構な時間を食った。


盾も防具も、槍や剣による刺突での破損は大したことが無いが、斧による破損はそれなりに大きかった。

肉体への損傷は槍による突き傷と斧による切り傷が一番大きかったが、防具で曲がりなりにも全身固め、特に厚めに固めたマサとぼくが──敵が野犬並の実力しかない盗賊だったお蔭で──前衛の仕事をよく果たせた為に、運よく重傷者は出なかった。


休憩の間はトモコが見張りに立っていたが、幸い何も近づいて来なかった。


配達依頼の荷物も、背負い籠に上から盾を載せておいたお蔭か、無事だった。


--


応急処置と修繕と休憩を終えてから、野犬が潜んで待つであろう低地の藪道へ、街道を更に進みだす。

先頭はマサ、最後尾がぼく。トヨが真ん中で、間にトモとエコが挟まって護られる隊形。


修理に随分時間を食ったので、小走り20・速足30で、小休止を入れずに足早に進む。


野犬の群の接近する気配を察知。

「来るぞ!」

と小声で叫び、走り出す。

走る事で、街道前方から来るのであれば、マサが正面で受け止めるが、それ以外であれば、敵に背後から追われる状況を作り出す。

走りながら先頭のマサに中央のトヨと場所を入れ替わってもらい、更にマサに最後尾まで下がって来てもらって、全員が背後から追跡してくる野犬の方へ向き直る。

その場で邪魔な背負い籠を下ろして女の子たちに預け、ぼくの盾もエコに与えて、疾走してくる野犬の襲撃を迎え撃つ。


腰を落としたマサが盾で身体の左半分を守りつつ、右手の石斧で犬を正面から絶つ。

背後を守るぼくが左の藪から跳び込んできた犬を左手の棘棒で叩き伏せる。


「マサ、下がれ!」

横手から跳び込む奴が出てきたので、打ち払いながら一間ほど後退するのを三度ほど繰り返し、できるだけ敵を街道正面に寄せて戦う。


マサがうまくそれをやってくれて、囮としての務めを果たしてくれるので、援護するぼくとしても大変やりやすい。

犬が横っちょの藪から跳び出してくるのを見たトモエコらも以心伝心、既に籠を提げて街道の先へ距離を取って後衛としての任務を果たしてくれていたので、安心して充分に後ろへ退()けた。


荷物を預けたトモエコはしっかり自分とトヨを守ってるし、それでトヨも流れて来る犬に集られることなく一匹一匹打ち殺せるので、後衛を前衛が心配せずに戦えた。


十匹も居ない、小さな群れだったので、40秒もかからずに撃退できた。

何匹かは逃げて、六、七匹の犬が死んだり重傷で転がってる、それを放置して、すぐにまた背負い籠を拾い上げて担ぎ、休むことなく足早に先を急ぐ。


--


その後もまた野犬の小さな群が襲ってきたが無事撃退し、息切れした皆の為に、屍骸がまだ少し遠くに見えている場所で、思いきって小休止。

少しするとまた小さな野犬の群が現れたが、大半は犬の屍骸に食らいつく。


三、四匹だけ涎を垂らしながら唸ってこちらへ迫って来るので、体力に余裕のあったぼくが一人で右手に石斧、左手に棘棒で迎え撃ちに出て、防御は防具に任せて次々に殺し、仲間の処まで近付けさせない。

ぼくの周りに転がった新たな死体からまた少し距離を取ると、小休止を続け、全員の息が調ったところで、足早に街道を進みだす。



夕暮れ前にシズに着けた。


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