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カスコヨの街からラウタへ

あのエイコ誘拐未遂事件も、その後数年経ってからやっと、曖昧にぼかして、

「前にエイコと二人で川向うへ出かけた時に、目を離した隙にエコが人攫いに襲われてたことがあって、石を投げつけたりとかして、なんとか追い払ったことがあったよ」

「何それ、怖い」

「そんな奴が居るんだ」

「その時にこんなのでエイコを縛って攫って行こうとしてたから、エコを助けた時に手に入れた」

と人攫いがエコの頭から被せていた毛布の厚地の袋(紐付き)や、子供をすっぽり入れられる大きさの麻袋、エコを縛っていた縄などを出して、それらもそれ以降は堂々と使って貰えるようになっていた。


その時に、いつ頃とか何処でとか具体的な事は言わないで済ませておいたが、もしかしたらトモコとかトヨキとかは、ひょっとすると勘づいたかもしれない。

でも何も言ってこないから、まあ、きっと問題ない。

精々がとこ、ぼくの人物評価が多少下がる程度だろう。

まあ多分、きっと。


今回トモが籠で運んでいる送致依頼の荷物も、梱包の上から更にその毛布袋で包んで保護している。

麻袋はいつもエイコが畳んで自分用に持ち歩き、薬草摘みで他の容器が一杯になってしまった時に使っている。

危うく自分がそれに放り込まれる破目になるところだったわけだが、敵から奪って利用できるものはなんでも利用してやる気概はもうエコにも備わっている。


他にも人攫いから剥いだ物はまだあるが、多くは血で汚れた衣類で、それらはさすがに目に触れさせられないから、家の隅の棚の上の端に、ぼく個人の小さな専用籠に容れて安置して、年に一回くらい、こっそり洗って乾して、畳んでしまい直している。

火打石と火口や腰袋、木製栓の捻じ込まれた革の小さな飲料容器はぼくの装帯の中だ。


小さな革容器には酸っぱくなった古いカシス酒が入っていたが、捨てて良く洗った。

フラスクみたいな入口が極端に狭いタイプではない、本当に小さな容器なので、毎日のように中に指を入れて水洗いして、水を容れ替えて一口水筒として使い続けている。

水場が無いのに喉が渇いてどうしようもない時の備えとして、五人が一口ずつ水を舌下に含むくらいの液量は容れておけるから、いざという時には重宝する。

閑話休題。



五人前の皿を一旦返して、更に五人前を頼み、充分に食べて満足してから、五人分の皿を返して銅貨五枚をトモコが受け取る。


さすがに今朝は他の屋台や店などを見物しているほどの余裕はない。

一旦広場に戻って、装備と荷物を点検する。

ぼくはまた背負子付きだ。

最後に一応もう一度依頼を確認するが、やはり変化はない。


ラウタめざしてのんびり出発した。


--


前半はのんびり歩いていたが、天気もそんなに良くないし、道程の後半からは誰云うともなく訓練としてラウタまで小走り20,速足30歩の足早なペースで進み、ラウタにやや早めに到着した。


村に入る岬の付け根で一旦ゆっくり休み、配達中の品物を検める。


ぼくが自分個人の請負分の品物を検めていると、同様に改めていたトモコが

「あれ、それは何?」

と訊いて来たので、

「まだ言ってなかったっけ? サカヌキ村で軽い仕事を請けて来たんだ」

「そうだったの? じゃあ、ラクマカの街で仕事を終えても、次の仕事で更に遠くへ行く心算は無いの?」

「無いよ、家に戻って色々やらないと、家が駄目になっちゃったらいけないから」

「そう、良かった」


それから広場へ移動し、魚を獲ったり海藻を採ったりして、食事にした。


獣から必死に逃走してすり減らした体力と気力も、これで充分に回復した。

装備も荷物も問題ないし、草を採って履物の手入れをする。


トヨが板草鞋の底を見つめて、

「これ、もう取り替えないと駄目だよなァ……」

「ああ、うん。大分擦り減ってるね。これだといつ割れるか分からないな」

「家に帰ってから手入れしなかったからなァ……」

「うん……部品は持って来てる?」

「ああ、部品だけは入れて来た」

忙しくなったことに少し責任を感じたので、底板交換を片方やってあげた。


それを見た他の皆も、自分の擦り減った底板を気にしだして、次々と今のうちに交換しておこうとし始めたので、ぼくは結局全員の交換作業を大なり小なり手伝うことになった。



それも終わり、次第に薄暗くなってゆく広場の隅、兵営の壁の前で、焚火の周りに集まって憩う。

兵営に場所の許可は取った。

ついでに依頼を見てみたが、やはりカツトやワサジフへの配達依頼はあるが……な状態。護衛依頼はない。


今日は一日中曇天で、あまり気温は上がらなかった。

手の空いていた者が菰を少し作り、背負子に張ったり、背負子の枠の左右に繋いで連ねて、多少の風除けとしてくれていた。

五人の背負い籠と合わせて、焚火とぼくたちの周囲を囲んだ。


「明日は愈々またガントリッシュ緑道だ、早く寝なくちゃ」

「明日の今頃は、またあの狭い岩場でずーっとじーっとしなくちゃならないのね……」


このラウタは比較的安全なので、見張りは一人だけにして、交代で眠ることにする。

今晩はマサは見張り番免除にして、最初は昨夜ゆっくり寝たエコが見張りに起き、トモトヨぼくの三人も先に寝させてもらうことにした。


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