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カスコヨの街角から

昨日の夕暮れには少し晴れ間がのぞいたが、夜の内にまた空一面が雲に覆われてしまった。

今朝は空一面がのっぺりとした青みがかった灰色の雲で埋め尽されている。


マサノリとぼくは深夜から見張りを続けている。

今日は朝に市場で野菜スープを食べてから出ようというので、トモコとトヨキはまだ眠っている。

一番身体と歩幅が小さくてカスコヨまでの逃走で一番必死に走らねばならなかったエイコが、昨晩の見張り番を免除。


風除けの菰がないから、籠を並べて少しでも風除けにしたところへ、焚火で内側を少し乾した防具を纏った身体を寄せ合って夜の冷え込みと夜露を防ぎ、焚火の熱で暖めて冷気を遠ざけている。

火の番のマサが壺に新しい湯を沸かす。

その前に火の番をしていたトモが湯を沸かしてくれた壺は、蓋をして既に湯冷ましになってる。


深夜に目覚めた時には、火の番はいつも通りトモだった。

用を足して戻ってくると、目覚ましの草汁を淹れてくれてあり、それを湯呑に貰って飲んだ。

前回の旅でお気に入りの鉢と温石のセットを失ってしまい、けれどもその後どうにかなったので、今回は最初から鉢は持って来ていない。


旅の荷物はできるだけ軽い方が良い。

湯呑だって本当は木製にしたいけれど、木製の湯呑を作るのはかなり難しい。

細い石鑿は難しくてまだ作れていないし、焼き焦がして、炭化して脆くなった部分を削り棒で丹念に削って、少しずつ削り窪めれば作れるが、他事にかまけてまだ作ってない。

カスコヨの市場で物売りが色々な雑貨の中に木製カップ二個を1スタッグで売っていたが、出来は良かった。

きっと職人が良い道具を巧みに用いているのだろう。


さっきからこの辺りをふらふら歩いてるおかしな奴が居るので、警戒している。

泥棒かもしれない。

きっと不用心に一人で眠り込んでいる旅人を見つけて懐を探る類だろう。

旅人が目覚めると親切ごかして、こんなとこで一人で寝ていると危ないよ、とほざく手合いだ。

油断させておいて強盗に早変わりするかもしれない。

こっちもこれ見よがしに棘棒をぶらぶらさせて、近付くなという意志を示しておく。


--


「お、起きたか」

「おう……」


トヨが目覚めたので、そろそろ活動開始だが、トモはまだエコに抱きついて眠っている。

寝起きが悪そうなトヨの為に、マサが草汁を淹れてやった。

無言で感謝の身振りをして、トヨが啜り、その後で公共の便壺へ用を足しに行く。


水場で洗顔してサッパリした様子で戻って来る頃には、トヨも目覚めていて、草鞋を履いて、手甲脚絆を巻くと、

「獲って来る」

「ありがと」

弓と漁用の矢を拾い上げ、一言残して漁へ出て行く。

ぼくは警備を続け、マサは早くも炙る為の串を準備する。


--


暫くして、全員で朝食を取った後、交代で水場に行く。

二人ずつ水浴びをして、エコの作った薄い手拭で身体の水気を切り、腰巻一つで焚火に当って身体を乾かし、仲間が暖めておいてくれた防具を装着する。


それが終わると、物干しにしていた戈を木の上へ隠してしまい、焚火を消して、皆で体操の後軽く格闘や連繋行動の訓練をして、市場へ。


今日も出ていたお目当ての、野菜の味付け汁の屋台へ行き、隣接する屋台で肉の腸詰も付けてもらった。

スリの用心の為に壁際に場所を取ってる仲間の処まで二往復して持って戻り、分配して、腸詰を咥えて嚙み千切ると、口の中に熱い肉汁が弾けて溢れ出し、それがまた塩やら草やらで上手に味付けされているので、唾が湧き上がってくる。

「うおお、うめーっ!」

ズビーッ!

口の端から垂れる涎を啜る音が響く。

「こんなに旨かったのか、これは食わなきゃいられないな」

「この前、ケチらずに頼めば良かったかしらね」

「うん」

「これだけでも、傭兵始めて良かったよ!」

とマサが感激して、あとは物も言わずに食べきってしまった。


「今すぐもう一杯食べたい」

と垂れて来た洟を手の甲で擦りながら熱望するマサへ、トモコが

「じゃあお代わりは自分で頼んで」

「一人一人が懐から出すと危なくないか?」

「それなら、またぼくがお遣いに行ってくるよ」

「じゃあ、誰がお代わりするの? あたしする」

「オレも「あ、ぼくも……「えーと、わたしも」

「なんだよ、みんなじゃないか」

ドッ! ワハハ!


「じゃあ、また俺が運んでくるよ、トモ、お金ちょーだい」

「はあい、じゃあ隠してね……」


食べ終わったマサとトヨがごそごそと位置を変えて目隠しの衝立になり、蔭でトモコが懐から今では二つある革の巾着のうちの一つ、買い物用に銀貨一枚と銅貨全部を入れてるのを取り出して、お金を数えて、壁役のマサの背後で御遣い役のぼくと受け渡し。


ちなみに、もう一つの巾着は銀貨三枚だけ、枯草を詰めて充分に消音して、容れてある。

買い物用の巾着が盗まれたりする場合に備えた予備だ。


実は片方の巾着は、以前エイコが人攫いに襲われた時に、ぼくがそいつを殺して奪い取った物だ。

手入れだけして隠し持っていたのを、ガントリッシュ緑道で盗賊を殺戮した際に、死体から剥いだ物の中に紛れ込ませたので、以降は堂々と使ってもらえるようになった。


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