初の依頼を終えて 家で休む
午後、四人が連れ立って戻って来た。
こちらはもう煙を追い出したところで、木蔭のコットで寝転がって休んでいた。
トモトヨもぼく同様に疲れていたので、塹壕小屋で転寝してきたらしい。
トモは既に大金を炭入り壺に容れて、掘り出した貴重品と入れ違いに埋めて隠したので、気が緩んだようだった。
二人とも、まだ眠たそうだ。
反対に、休んでないのに、エコマサは元気そうだ。
「お爺ちゃん家で話して来たよ~。ケーちゃんに今の薬草摘んでもらって、今度お土産持ってくんだよ」
ケーちゃんというのは、お爺ちゃんのお孫さんのケイコちゃんの事で、エイコの薬草友達だ。
エコマサの二人でお爺さんとこへ報告に行って、家に上げられてお茶を貰って色々喋って、ケイコちゃんも交じってお喋りして、そこで今年も春になった今の旬の薬草情報をもらって、忙しくて摘みに行けないエイコの代わりに摘んで処理までしておいてもらい、あとで代価になりそうなお土産を持って行くらしい。
皆で家に戻り、トモの淹れてくれた茶を飲んで、それじゃと遅くなったが夕食に出かける。
夕食後、川で水浴びして身を浄めた。
エコがラウタ村で作ってくれた手拭で身体の水気を切れて、気持ちが良い。
日が暮れて、家の炉の周りで身体を乾しているうちに、やっと安心して憩えるようになったので、トモとトヨがまた相次いで眠り込んだ。
「風邪を引くよ」
「いや、大丈夫でしょ」
まあ一応、とよく燻し終わってる菰を二人に掛けてやり、休んでいると、まだ元気なエコとマサが寝台に二人で転げ込んで、睦み合いだした。
ぼくは火の番で作業小屋と家とをのんびり往復して、鳴子を仕掛けておき、あちこち点検して過ごした。
作業小屋を閉めて来て、家の戸口の前に鳴子を仕掛け、戸口を閉めて閂を掛け、まだ二人が盛っている。
火の番をして、暖まりながらうとうとしていると、目覚めたトモが菰を除けて起き上がり、用を足しに行った。
戻って来ると、エコをちょっと撫でてあげてから火の傍へ戻って来て、伸びて来ていた爪の手入れを裸のままし始めた。
そのうち、トヨも起きたが、二人がまだ絡みあって雰囲気を出しているし、焔影揺らめくトモの姿を観て催してきたので、トモの前にこれみよがしに堂々と立ち上がったけど、まずは用を足してきてからとトモコにいなされて、その後用を足したトヨがすんとした顔つきで戻って来たのが滑稽で、思わず笑ってしまった。
その後は、一寸語るのが憚られるような盛り具合が続いた。
ぼくは皆その調子だと凄く喉が渇くだろうから、とお湯を沸かして、各人の普段の湯呑を並べて冷ました草汁を淹れておいた。
思い起こせば、耳の底にまだ司祭様の声が響いていて、またこれから通り抜けなければならない道中の危険が、繰り返し記憶に刻み込まれる。
明日か、遅くとも明後日には送致依頼の件でサカヌキ村の神殿を訪れ、小荷物を受領して、また旅立たねばならない。
できるだけ軽い荷物で、まずはカスコヨの街まで、またしてもジンメ渓谷の街道を一気に走り抜けて行かねばならない……今のうちに鋭気を養っておかなければ。
火の番はしなくても大丈夫、あいつら四人ともまだ涎を垂らして盛っているから。
ぼくは先に一人眠り込む。
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翌朝、外で啼く鳥の声で目覚めた。
どうやら暫く留守にしていた間に、拠点の何処かに小鳥の巣を作られてしまったらしい。
可愛らしい声が響いている。
まだ、ぼく一人だけしか起きていない。
ぼくたちはどうやら全員が朝まで熟睡してしまったようだった。
家に帰って、すっかり安心しきってしまったらしい。
まあ、またすぐに請け負った仕事で出かけるのだから、これくらいは良いか……。
その後、皆が次々に目覚めて、また狂ったように猛烈にヤり始めたので、炉に柴をくべておいて、先に外へ出た。
命を危険にさらす恐怖が今更にキているのか?
仕方がないから、敢えては止めたりせず、気が済むまでさせておく。
久しぶりに、ぼくが漁に行って来よう。
準備をして、出かけた。
まだ春だから、獲るのは少しだけに留めて、漁から戻って調理した。
手を洗ってきて、皆に声をかけておいて、一人でポツンと食事。
同じ部屋で皆が破廉恥に騒がしく激しくシていても、ぼくは黙々と食べ終えた。
そのままズズーと草汁をすする。
美味い。
良い素材で適切に淹れた草汁は、どんな時でも美味いのだった。
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そうしているうちに、外では雨が降り出した。
ぅゎー……
食事を始めた皆だが、まだ繋がったままで、これからもまだ一日中ヤル気まんまんらしい。
目が濁っていて、性臭が凄い。
ヤリたい盛りだから仕方ない。
これではとても無理だから、一人で雨の中、今日は仕事の話だけして、受領と出発は明日だ、と一人で決める。
雨だし、今日は背負い籠もなしに、身軽な恰好で行ってこよう。
旅券はいつも懐だし、神殿で仕事の話をする為に、依頼札だけトモコの枕辺から貰っていく。
久しぶりに防寒着を着込み、古くはなったが、よく燻された樹皮の撥水性を雨具として利用する。
その上から装帯を着ける。
いつもの手入れ済みの板草鞋を履いて、古い、薄く軽量の手甲脚絆だけ念の為につける。
石斧は腹に挿してあるし、これでいいだろ。
頭には雨避けつきヘッドギアを被る。
「じゃあ、ちょっと神殿へ、仕事の件で行ってくる」
と声をかけると、それまで荒い息だったのに、なぜかその時だけは律儀に、
「おう、気をつけて!」
とトヨがいつもの調子で声をかけて来たので、邪魔して悪いと思いながらもアテになりそうなのが彼一人なので
「悪いけど、閂よろしく!」
と一声かけて、返事がないから戸口の嵌め戸を閉めながらちらっと見れば、軟体動物よろしく絡みつくトモに口を塞がれているので、頭を振って、嵌め戸を外側からできるだけしっかり引っ張って或る程度しっかり嵌めておき、せめてもの用心の為に──あの状態ではあまり効果は期待できないが──鳴子を仕掛けていく。
できれば戸口も、外から施錠・開錠できる仕組みを……なかなか思いつけないなあ……。
雨で滑りやすいので気をつけて石段を下りて、橋の上を歩き、梯子で足を滑らせないように登って下って隠し、仮拠点だった塹壕小屋にも通りすがりに一応炉に火を入れてから立ち去る。
小さな橋を渡って、裸足になって雨風に晒されっぱなしの中央道を、少しずつ水が中に沁みて来るのを我慢しながら暫く歩き、ドロドロの足を道端の草を踏んで拭い、また履物を着けて尾根へ上がり、城門をくぐった。
神殿に行き、裏手の小さな出入口に回って呼びかけ、出てきた者に用件を告げると、少し待たされてから、中へ通される。
神官様に丁寧に挨拶して、依頼内容の説明と、こちらの今日の都合を告げ、神官様からも説明を受け、明日早朝の段取りを取り決めた。




