初の依頼を終えて 家に帰る
兵営から出て来て、番兵から少し離れた篝火の近くに屯して、冷えるから防具をまた完全装備し直しながら、
「すっかり遅くなっちゃったな」
マサが困ったように言う。
「ど~しようか? 家に帰る?」
「いや、オレはもう疲れたよ……」
エコの問いにトヨが力なく首を振る。
「ぼくもだ、すぐにも足を休めたいよ。ここで寝ちゃっていい?」
「もうトオルのところも、そもそも家畜小屋の人ももう扉に錠を下ろして寝ちゃってるわね、きっと」
そうだろうなあ……今夜は家畜小屋には泊まれない。
ぼくだけならドミのところへ……それは駄目だ。
スコッレ友達のタカシのところのがまだマシだけど、そもそも家までは知らない。
「じゃあ、ここでもう、焚火にするよ?」
とぼくは枯れ枝の束を地面に置く。
「あたし、許可とって来る」
もう宵の口で、トオルも事務所を閉めてしまって、家畜小屋に泊まる許可は取れないし、兵営に許可を取って広場に泊まるか、今から暗い中を自宅に帰るか、だけど……。
もう疲れているので、すぐにも眠り込みそうだから、広場で寝る事に、なし崩しに決まった。
トモコが許可とりにもう一度兵営に行ってる間に、既にぼくたちは籠を並べる。
風除けの菰はカスコヨで樹上に置いて来たので、風を遮れない。
木の下で焚火して身体を寄せ合うのみ。
柴はサカヌキ村に入ってから、小休止中に枯れ枝を拾っておいた。
篝火から火を貰い、焚火にする。
松明で辺りの地面を焼いて虫を払い、場所を作って円座もどきを敷いて、腰を下ろした。
今は子供の頃と違って体力もついてるし、全身を防具で固め直して木の下で焚火の周りに身を寄せ合っていれば、一夜の寒さは凌げる。
「悪いけど、先に寝させてくれ」
とトヨが云うので、戻って来たトモがマサと二人で見張りにつき、ぼくとエコもすぐに眠り込んだ。
眠ったと思ったら、もう起こされた。
「え……何かあった?」
と訊いたが、マサによれば、ひと眠りはさせてもらえたらしかった。
夢も見ずにぐっすり眠っていたらしい。
寝ぼけまなこで起き上がり、用を足してきて、マサと交代する。
トヨも起こされて、トモと交代した。
トヨが見張りで、ぼくは火の番。
隣に座って逆方向に目を遣りつつ、ぼそぼそと小声で駄弁って、火を掻いたり、仲間が火を蹴っ飛ばさないように寝姿を整えてやる。
トヨは枝を削って焚火に放り込んで、眠気を堪えている。
未明にまたトモマサに見張りをお願いして、夜明け前まで眠り込む。
今晩はエコに朝まで熟睡してもらう。
空は次第に雲が出てきた。
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夜明け前、無事に一夜が過ぎた。
大金を懐にしているトモコはその重さが落ち着かないらしく、早く帰りたがっていたので、用だけ足してきてから、先ずは拠点へ。
谷間へ降りて、中央道を駆け抜けて、居るかも分からない尾行者を撒く。
まだ人が出て来ていない小部落前を過ぎて、と思ったらお爺さんは朝早くから素振りをしている。
「お早うございます、お精が出ますね」
「おはよう。そして、お帰り」
「只今戻りました。詳しい事は後程。御免」
「おう、それじゃ」
と短く挨拶して、尾行に警戒しつつ、まず仮拠点だった塹壕に入る。
荷物置き場の埃を手早く払うと、掃除道具から虫を払い落し、塹壕小屋の中を掃除して、炉に火を熾しておいてから、改めて尾行に警戒しつつ、さっさと移動する。
川沿いの小道を閉塞する今は完全に立派な藪に育った地点を乗り越える為に、隠しておいた梯子を払い清めて、緩みを直して、藪を乗り越える。
川を渡る橋の緩みを確かめ、罠とかが無いのを確かめつつ前進する。
トヨが警戒して弓を構える中、遊撃役のぼくが真っ先に橋を渡り、石段を登って拠点の安全確認をして、その間、背後はマサに任せていた。
トモエコは盾を構えてトヨを警護していた。
マサと二人で最初の確認後、トヨたちが拠点に上陸し、相互支援しつつ、作業小屋と家の戸口を開放して、内部の安全確認。
安全確認後、薄汚れていた拠点を掃除する為にまずは道具の手入れ。
主としてトヨが見張り番で警戒する中、残り四人で掃除に取り掛かる。
ここからは一日がかりの仕事だ。
トモエコがまずは家の蜘蛛の巣などを払い、虫を潰して焼いて、火を熾す。
他方でぼくとマサは外周りをやる。
地面を掃除して、枯葉をレーキで掻いて川に落としたり、枯れ枝を積み上げておいたり、地面を出して乾かす。
家の天井中央の開口部を封じていたのを開放し、換気を良くする。
外が或る程度落ち着いてから、家から外へ運び出せるものは運び出しておいて、内部を徹底的に焼き焦がして虫を死滅させ、それから炉だけでなくあちこちで小さな焚火を熾して、家の中を徹底的に燻し始める。
そうなるともう家の中から皆逃げ出して、煙を吸い過ぎないようにして、外に持ち出した寝台などで休んでから、今度は作業小屋についても同様にやる。
虫の巣になってしまっていた枯れた草束などは仕方ないから焼き捨てる。
燻すにも、燻し終わった後で開放して煙を追い出すにも、風が重要。
なので、タイミングを見て、やらなくてはならない。
しかも家と作業小屋と両方同時にやると、狭い拠点の中に居場所がなくなる。
万が一にも火事にならないように監視する為に、藪の梯子の上にぼく一人を監視員として残したまま、他の四人は仮拠点だった塹壕小屋やお爺さんの家に行ってしまった。
少し淋しい。




