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初の依頼を請けて サカヌキ村で初めて依頼完了を報告する

城門めざして進む。

城門は閉ざされていた。

まあ、もうとっぷりと日が暮れて、すっかり宵だから……。


「そこを動くな! 誰だ!」

城壁の上から誰何された。

弓矢で狙われている。


「あー、これは、『松明も点けずに忍び寄る不審者の一団』と思われたみたいだな」

「そういや、そうだな」


トモコが叫び返す。

「あたし達、サカヌキ村に住んで居る傭兵です! あたし、トモコです! 依頼完了の報告に参りました! 開けて下さい!」


番兵が城門の小さな扉を開けて出てきた。


「トモコ! お前か!? 先ずお前から、一人ずつ調べるから、こっちへ一人ずつ来い! それと武装を解除しろ!」

「はい! すみません! 今とります!」

と言って、ヘッドギアを外し、首環も外して背負い籠に放り込み、ショルダーガードの前を開けて、頭から脱いで腕に掛けた。


「じゃあ、行って来るわね、あたしの後から一人ずつ来て」

と言って、松明をかざす番兵の方へ進んでゆくのを見送り、俺達も脱ぎ始めた。


--


最後に入ったぼくの旅券の真贋確認と本人確認の両方が終わり、皆で一緒に城門内に並んで待機し、やけに検査が厳しいなと思っていたが、当直の指揮官らしき兵士が来た。


「任務完了、ご苦労だった。よく帰って来た。兵舎へ行っていいぞ」

ぼくたち一人一人の顔をみつめると、頷いて、踵を返して去った。


ふーっと緊張を解いて、兵士さんたちに

「それじゃ、失礼しまーす」

とこちらも中へてくてく入って行く。

急に疲労が出て来て、ふらりとよろめいたが、城壁に手をついて身を支え、仲間に遅れてついていく。


もう遅い時刻だが、一応兵舎に入って、依頼完了報告に参上した旨を当直の兵士に伝えた。

静かな書記さんの部屋で、寝ぼけまなこを擦りながら暫く待っていると、守備隊長さんが出てきた。


「報告します!」

「どうぞ」

急いでざっと立ち上がって、一礼して整列する。


トモコが進み出て、旅券をトモコだけ一応呈示してから、完成した依頼札Aを提出した。

眉間に皺を寄せた隊長さんがそれを受けとり、目を通して、頷いた。

「依頼完了、報告ご苦労」

「有難うございます」


すぐに傍らの兵士さんが革袋を出してくれる。

「確認してくれ」

「はい」

トモコが台の上で銀貨を数える音が、静かな室内に響く。


「確認しました。銀貨400枚ちょうどです」

「よし」


報酬のスタッグ銀貨400枚、きちっと支払ってもらった。

さすがに革袋ごと呉れるほど、気前よくは無かった。

トモコのお手製の紐編み巾着にも入れられるが、盗賊から奪った革の巾着を渡してあるから、それに全部容れた。


一人80枚の銀貨。

お手製の紐編み巾着は殆ど空っぽだから、楽々入るな。


そんな事を考えていると、守備隊長さんに訊かれた。


「ところで、君たちにとって、このサカヌキ村はどんな処だろうか。第二の故郷とも言えるのか、それとも単に住みやすいとか、逆にむしろとても不便だとかあるかな」


急に思いがけない質問を浴びせられて、ぼくたちは戸惑った。


「君にとっては、どうだろうか」


目の中を覗き込まれるように尋ねられたぼくは、


「お、私にとって……は……、あ……、やっと、どうにか辿り着いて、ひたすらなんとか食い繋いでて……で、皆でとりあえずの住処をどうにか作り上げて、それからもずっとこの五人でやってきて、近頃になってやっと色々少しずつ知り始めて、少しずつ馴染んできて……でもまあ、未知の土地という感じがまだまだ残ってます……」


「うむ……嫌いではない?」


「嫌いではありません、というのかどうか……まだ、俺は何処へ行っても、その土地の事について、よく知った気になった事がありません……」

「ふむ?」

「他人に何か、自分の、自分がその土地に感じていることを、言っても、それがもしかしたら翌日には、新たに知った何かによって、その、覆される……かもしれないので、自信をもって言い切れません」

「とりあえず、多少の愛着はあるのかな?」

「はい、それはあります。今すぐ他所へ移ってしまいたいとかは、全く思えません。何しろ一所懸命にやっと自分たちの家と呼べる住処を築き上げて、数年かけて内も外も育てて、馴染んできたんですから」

「成程……。君はどうだろう?」

以下、仲間に次々と訊いていった。


トヨキは

「そうですね、オレにとっても愛着はあります。但し、オレ達の拠点と、その周辺、それに隣接する部落と、あとまあ、この要塞くらいですね。拠点から見て川向うの下村の連中は、正直あまり近寄りたくありません、スコッレの連中以外は。傭兵稼業で稼いだら、できたらもう少し疎んじる人が少ない土地へ移れればと思っています」

「そうか……一部は嫌いだが、全体としては或る程度の愛着がある、くらいに肯定的に受け止めても良いかな?」

「まあ、たしかに全部ひっくるめて嫌いというわけでもありませんから、そうかもしれません」


トモコは

「とても大切です。もう第二の故郷と呼べると思います。村の方々とも、もう少し認めてもらって歩み寄れればと思います」

「うむ」


マサノリは

「ぼくは、ここよりは海辺の方が住みやすいと思います。それは美味しい海の幸がいっぱい獲れるし、風も水も温かいからです。でも、ぼくたちの家がありますので、帰って来る場所は此処です」

「たしかに冬は冷えるね、うん、うん」

隊長さんは頻りに頷いた。


エコは

「ここは怖い事もたまにありますけど、仲間が守ってくれるし、私も助けてあげられるので、今の皆が居る家が大好きです。隣の部落のお爺さんもとても良い人です。ここにも親切なお婆さんや小母さんたちが居ます。好きな人が多く居るので、好きです」

「そうか」


隊長さんは、応答を記録する書記の手元を時折確かめて、頷きながら、最後に

「分かった。それなら次からは配達の仕事を請けて貰ってもよさそうだ」

といって、出ていった。


「では、これで失礼します。夜分遅くに失礼致しました。」

と、ぼくらも残っている書記さんに一礼をして立ち去った。


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