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初の依頼を請けて 帰路、カスコヨの街で市場見物

往路で最初にカスコヨの街を訪れた時には、城門付近の街路と官舎や兵営の面している広場、その近辺くらいしか廻っていない。

そこで翌日は市場や店などを見て回った。


結構な賑わいで、最初はトモとマサが荷物番をして、トヨエコぼくで見に行く。

荷物番は壁を背にして二人で油断なく立っていれば、まず問題ない。



兵士が何人も見張る市場の中へ、客であることを示す札を借りて首へ掛け、三人でぞろぞろと入る。


「あれ、まだ誰も何も売ってないね……」

「ちょっと早く来すぎちゃったかな」

「客の方はそれなりに入ってるのにな」


と見回していると、大蜥蜴に曳かせた橇の荷台から大きな袋を下ろした物売りの小父さんがやって来る。


木工職人の手になる組み立て式の商品台を取り出して、手慣れた手つきで素早く組み立てたところへ、粗い麻布を敷き拡げ、その上に品物を取り出して並べだす物売りを見ているうちに、次々にその場で丁寧に畳み直されてズボンや貫頭シャツが所狭しと積まれてゆく。

ズボンは濃色が圧倒的で、その中でも濃灰色が多く、次に褐色。

シャツの方は明るいクリーム色や薄黄色のゆったりしたのが多く、薄灰色の細身のもそれらに次いで多い。

新品か中古かはよく分からないけど、値段的にきっと中古だ。


更に台の上へ飾り枠が取り付けられ、そこへこれまた木工職人の手になる衣紋掛けに吊るされた胴着が掛けられる。

衣類を売る屋台の出来上がりだ。

台や飾り枠自体の見てくれも良く、立派なもので、衣類が引き立てられて見える。

客が早くも二、三人寄っていく。

ぼくらも一応観ていく。

「……」

エコが黙ってじぃーっと見ている。


そのうちに他の屋台もできる。

粗末な台で、枠に沢山の干物をぶら下げてるのは、平たく薄くのした乾し肉だろうか。

骨が四本しか入っていない団扇、みたいな感じに細い串を心持ち放射状に薄べったい乾し肉へ刺してあるが、きっと刺した状態で広げて乾したんだろう。

あれなら、ナイフで削り取らなくても、ジャーキーやするめのようなおつまみ感覚で食えそうだ。

旨そう。


「おォ、ああいう作り方もあるのかァ」

「手間かけてるよね~」

「俺達は量を作らないといけないから、ああいうのは難しいなあ……」


台の上にも山のように束にした同様なものを積んでいる。

どうも商品はそれだけのようだ。

乾物屋、いや、乾し肉屋らしい。


食い物なら、粗末な平べったい浅い小さい皿に入った具沢山──多分殆どは野菜──のスープを鍋から木製のお玉で掬って盛り付けて、客へ供している屋台もある。

ほかほか、温かそうだ。

そこで銅貨で支払いをして皿を受け取った客が、すぐ隣の屋台でこれは肉の腸詰めらしきものをスープの上に載せてもらっている。

二つ並んだ屋台は、同じ食い物屋のようで、支払いは最初の一回で済んでいるらしい。

食べ終わった客が皿をスープ屋台の方に戻し、銅貨一枚を受け取っている。

なるほど、そういう仕組みか。


「お腹空いて来た」

「さっき食べたじゃん」

「匂いが違うからなァ」


しかし、近くに寄ると旨そうな匂いが漂って来るし、腹が減って来るな。

これはどうもいけないから、他所を見に行こう。


或る質素な屋台には、鉄灰色の布の上に沢山の軟らかな革のサンダルと二足のブーツが載っていた。

どれも新品だ。

革自体が鞣された時であろう、タンニンで美しく染められているが、他に特に着色はされていなかった。

客は目を向けつつも、次へ流れてゆく。


「ブーツ幾らだろうな」

「……20スタッグだって」

「結構するなあ」


また別の屋台では、糸や骨針などの裁縫用品が、軟らかそうな木を削って作られた小箱の中に容れられていて、その近くの屋台では布地が売られていた。


「うぉぉ……新品の布地はさすがに高ェ……200スタッグだと……」

「まあ、見るからに上質の生地だし、晴れの上着用とかじゃない? しかし意外と売ってるもんだね」

「殆どは安い薄い生地のだけどね~」


「お、こっちは葛籠とか行李とかだ」

「どれどれ、ふーん……まあちょっと次行こうか」

「あ、箪笥だって。椅子もある」

「家具だな。良い仕事してるぜ」

「無理だ、次」

「そう言わないで、見ていこ~よ」


「あ、奇麗……」

色とりどりの石や骨、角や貝殻、珍しい珊瑚などで作られた装飾品が売られている。

「宝石は無いんだなあ」

「そりゃ、無いでしょ」

「あ、そうか」

宝石は基本的に換金用の資産だったんだっけ。

何処で取り扱っているんだろう?

やっぱり両替所とか街中にあるのかな。


市場にはその他にも、穀物や野菜や果物などの食糧や酒など色々売られていた。


しかし一番欲しかった鉄鍋や銅鍋、大工道具など、『かね』の道具は無かった。

武器も売っていなかった。

どこにも売っていなかった。


防具は上着や帯、鎧兜や盾などが売っていた。

硬革の品があったが、ぼくたちのお手製の粗末なのとは雲泥の差があった。

これもまた、やはり『かね』の鎧や盾などは無かった。



市場を一通り見て来ると札を返して退出し、次にエコとぼくで荷物番に立ってトモトヨマサが見に行った。

トヨは基本的に警戒役なので、両方行った。



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