初の依頼を請けて 帰路、ガントリッシュ緑道で
向こう側から、三人の男が両手に杖をついて歩いて来る。
見覚えがある。
盗賊の斥候という奴らだ。
「どうする?」
「殺っちまうか?」
「殺ろう」
「よし、決まりだ」
先手必勝。
但し、伏兵が無ければ。
でも、伏兵が居るようなら、ぼくたちだけだとナメられて、どの道襲い掛かって来るだろう。
だからやっぱり先手をとって攻撃し、せめて眼前のコイツラだけでも先に始末しておく。
その方が逃げるにしても逃げ切れる確率が上がるからな。
「トモとエコは、知らん顔していて、襲う瞬間、とにかく盾でオレたちごと背後を庇え。伏兵が居るかもしれねェ」
「うん」
「わかった」
トモは声が硬い。
緊張しているな。
「マサは斧で襲うか」
「だな」
「オレたちはこっそり蔭で準備して、一気に殺る。ぬかるなよ?」
「おう。背負子を一瞬で振り落としざまに先頭の奴に跳びかかって斧で一撃だ」
「よし。オレは二番手、マサは三番手な」
「ああ」
俺達は盗賊が弓に手を懸けないか、気をつけて見続け、トヨはこっそり弓をマサの身体の蔭で握り、矢を番える。
「トモ、ここでやっておかないと、良くて奴隷だと思え。相手が優しい慈悲のある男だと思うなよ」
「分かったわ……」
「だから、緊張するな。バレちゃうだろ? とにかく、トモはトヨの背後を護れ、それだけだ」
「うん」
これで少しは緊張を見せずに居てくれればいいんだが……。
もうこれ以上は声をかけてはいられない。
何食わぬ顔で道の脇へ寄り、相手の通過をぼーっと待つような振りをしつつ、何処かで監視役が斥候を見守っていないか探るが、この角度だと視界が制限されるなあと思いながら、こっそり背負子の胸紐を解いて左手に握ったまま待機。
これでもう手を緩めて踏み出せば勝手に背負子は背後に落ちる。
右手は秘かに腹の石斧を抜いて、刃の向きを指先で確かめて、しっかり握り込む。
三人が来た。
こちらをじーっと見つめながら、身を屈め気味に両手の杖をさっさっと動かして歩いて来る。
他の連中の姿とかは見えない。
マサも女の子も特段警戒している様子を見せずに突っ立ち、その蔭でトヨとぼくが秘かに攻撃準備をする。
ぼくは背負子をまだ下ろしていない。
対応する動きを見せて警戒させない為だ。
機会が来た。
三人が眼前を通り過ぎる、今!
襲うには邪魔な盾を蹴り上げて、先頭の奴めがけて一気に跳び出す。
ブンッ!
素早く振り上げた左右の杖は、予期してやがったか!?
こちら側の手の杖は腹をついて距離をとるべく、遠い側の杖で顔面を突きに来た。
が、散々野犬に鍛えられたんで、大して早く感じず、ちょっと屈み気味にして避けるなり、そのまま跳び込んで肩を掴み、喉元に確実に石斧の刃を叩き込み、斜めにぱっくりと口を開いた赤身を打ち捨て、次の獲物へ跳びかかる。
既にトヨが一人を素早く射殺して、マサがとびかかって押し倒した奴に跳びかかっていた。
トモエコはちゃんと盾で自分の背後を庇いながら、トヨマサの背後に位置取りを決めている。
じゃあ、いいや、と俺は周囲を見回し、何処か遠くからでも誰かが見ていないか、それをひたすら探る。
が、居なさそうだ……。
でも油断をせずに見張りを続けて、邪魔な楯と背負い籠を傍に下ろす。
「トヨ、終わったか?」
訊ねると、
「ああ、片付いたぜ。トドメも刺し直した」
「見張りもいなさそうだ、早いとこ剥ぎ取ってズラかろうぜ」
「おっし!」
「見張り代わってくれないか?」
「先ず剥いでからな」
わらいながらとりかかるトヨ。
あまり時間をかけず、取り終わったらしいトヨが
「いいぞ、俺が見張るから」
というので、俺は早速まだ何か無いか探る。
襤褸布の継ぎ接ぎのような軽鎧、中身は継ぎ接ぎの革鎧、貰おう、背負子へ。
「マサ、背負子とって」
「おう」
次、手甲脚絆、麻紐使ってるのが惜しいが、汚ねえな、要らねえだろ。
笠と蓑、汚ねえから要ラネ、次。
草臥れた短いブーツ、おっ、中に銀貨を仕込んでありやがったぜ、三枚も。
「マサ、鎧のボロは要らないけど、革は使えるから、背負子に」
「分かった」
一応笠と蓑にも何か仕込んでないかもう一度チェック、無し。
あとはもうトヨが回収したっぽいな、何もない。
「じゃあ、岩陰に捨てて来る、一人でいい」
と三人の片脚ずつ脇にまとめて抱えて、下方の岩陰へ緑の草の絨毯の上を滑らせて引き摺って行く。
「ッ!!」
岩陰まで近づいた時、男が跳びかかってきたッ!
咄嗟に緩斜面の下の方へ身を投げ出し、首か胸元へ突き立つ寸前で、危うく刃を躱す。
初手を外されて勢いでつんのめって斜面へ手を着いた男が身を翻して、バックハンドで再び素早く襲い掛かって来る刃へ、頭は斜面の下側ながら、既に膝を立てた俺は、コンパクトに膝下だけで蹴り上げて上腕へ当て、狙いを逸らしてやった。
そうしなかったら、俺の股間が串刺しになっていただろう。
おっかねー。
一尺ほどの刀身の剣先は俺の腰の脇の地面へ突き立った。
蹴り上げながら起き上がっていたので、すかさず手首を両手で地面へ押さえつけ、足を伸ばして胸を蹴ってやった。
敵は他方の手で別の武器を探ろうとしていたので、手首を両手で抑えつけたまま、蹴った足を敵の胸元に擦りつけながら今度は顎を強く蹴とばした。
足裏は八割れ板草鞋なので、木切れで衝撃を与えたわけで、かなり強い衝撃がダイレクトに脳天に直撃したらしく、のけ反った相手の力が緩んだ。
じゃあ、ってんで、石斧を引き抜いて、腹に叩き込んで致命傷を与え、剣から指が完全に離れたところで、地面に突き刺さってる石剣を抜いて、鳩尾から上に突き上げるように、刃先が背中へ出ないように心臓にトドメの一突きを呉れて遣った。
他には居ないだろうか?
辺りを念の為に歩いて見て回ったが、もう居なかった。
もしかしたら、まだ遠い岩陰とかに潜んでいるのかもしれないが、もう離脱した方が良いだろう。
手っ取り早く剥ぎ取って、引き揚げる。




