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初の依頼を請けて 帰路、シズから藪道をぬけて

濃霧(ガス)なので、皆起きて、装備着装中。

「今朝は、メシはどうしようか」

「うん? 獲りに行くけど?」

「そっか……でも出発が遅くなるだろ」

「遅く……そか、あそこにまた隠れるんだよな……間に合うんじゃね?」

もちろんガントリッシュ緑道の『竜』のことが念頭にある。

「俺が司祭様に聞いてきた話だと、暗くなると出て来るらしいから、あまり遅く辿り着きたくないし、盗賊相手にどうなるかって問題もある」

「盗賊については何か言ってた?」

「隙を見せずに押し通るんだってさ」

「ん……、俺達だけだと、襲って来るかもなァ……」

そこが読めない。

「あと、朝飯だけどさ、今ガスが出てるし、トヨだけ獲りに行って、装備がびしょ濡れになるけど、いいのか?」

「ん-、まー、しゃーねーよ」

「いや、よくねーだろ?」

「野犬や盗賊も大変だけど、竜ほど恐ろしくはないでしょ? やっぱり竜に間に合わないのが一番マズいんじゃないの?」


結局、濃霧の中で、久しぶりに携行食糧を湯戻しして少量食べると、すぐに物干し場やら焚火やらを片づけて、出立することに決めた。

未明だから、ガスの中、松明を掲げる。

ところが、ガスが酷いから、物干しに使った櫂三本を片づけに行くだけでも難しいので、櫂三本は最後尾のぼくが引きずって、広場の端へ持って行くだけにした。

引き摺った後を辿って、皆の許へ戻る。


みんな、互いの装備を確認し、最初に遭遇する事が予期される野犬の群に対しては、戈は振り回しづらいので、俺の背負子に縛り付けて行くことに決定。

丈高くなるけど、藪の道は天井は塞がってなかったと思うし、歩けるはずだ。

杖をつく音が野犬を引き寄せるんじゃないか、とも恐れた。


男性軍の右手には石斧や棘棒が握られ、霧の闇の中からいつ野犬に襲い掛かられても即座に殴り殺せるように備えている。


今日の旅程を一応再確認してから出立。


松明は女の子が掲げていくことにして、一列に先頭からマサ、エコ、トヨ、トモ、俺の順に、前を行く者の籠に軽く手をかけて進む。

松ぼっくりはラクマカ官舎前で60個かそこら、とにかく充分拾ってきたから、問題ない筈だ。



--


暗闇で、猶且、三尋先が見通せない濃霧(ガス)が渦巻く中を、身を屈めたマサが、背後のエコの松明で辛うじて先を見通しながら、ゆっくりとシズの村の出口を探して歩いてゆく。

ロバのペースより遅い。

俺達だけだと、こんなものか。


まあ、一定ペースで進んでるだけでもマサはよくやってる。

「がんばれ!」

つい励ましてしまった。

唸るような声が返って来た。


ゆっくり、ゆっくり、ぞろぞろと数珠繋ぎで進む。

やっと、墓に行き当たり、それで大体見当が掴めたので、出口へ曲がりくねる路を辿る。

その先には、藪道だ。


藪の道に入ってすぐに右への曲り道になっていて、初めてシズを訪れた時にそこが夕陽に照らされていたのを思い出した。


--


皆、黙って静かに進み、野犬が近づいてこないか、今は自分の耳で警戒しつつ進む。

誰もが、小石一つ蹴とばさないように、忍び足だ。

揺らめく影を投げかける松明がうるさく感じられる。


暫く進むうちに、ガサガサ聞こえた気がしたので、

「来るぞっ」

と潜めた声で警告しながら、背負子の紐を引っ張り、体を揺すって背負子を道の右側へ落とし、藪へもたせ掛ける。

同時に皆立ち止まって、左側に盾をかざす。


来る方向は、分からない。


「左」


途端に左の藪から踊りかかって来た。

「っ!」

息を呑む声、真ん中あたりで誰かが倒れたか。

相次いで反撃と骨の砕ける音。

相次いで藪から跳びかかって来て、俺とトモコの盾にもぶつかって来た。

予期してたので、踏ん張り、強く当て返し、即座に右手の石斧を叩きこんで、絶つ。


前は棘棒だったが、今回は石斧だ。

頼れるバックアップが居ないから、一撃必殺でないと間に合わないのだ。

生き残れたら、ラウタに着いたら手入れするつもりだ。

それまでに全損しなければ。


次々に襲って来る野犬に、道を出ない程度に右へ退いて盾と松明で身を護るトモエコに背後を護られたトヨキが奮戦し、俺は適当に噛みつかせておいてトヨに集ろうとする犬どもを排除してゆく。


今日の俺たちは、前回とは違うのだ。

いくら手甲脚絆に噛みつかれても、野犬の顎程度、びくともせんわっ!

オラッ!


また一匹、背骨をカチ割り、トヨキの頭から排除する。

そして後ろのトモコに振り向き、トモに噛みつこうとして松明で追い払われてる奴らに一撃!

そしてまた一匹、血祭に挙げる。


全身犬に集られて、いい加減身体が重たい。

両脚の後ろにがっぷり牙を立ててる奴らが居るので、肩の高さへひょいと振り上げた石斧を、適当に背後へぶん! と振り下ろして、ガツンと喰らわせ、骨へ食い込ませて、また振り上げながらトモの盾にどんとぶつけて刃から肉を引き剥がし、暗闇の中に居る次の奴へ一撃。


盾より二刀流で殲滅速度を上げるべき、と思い、盾をトモコに掛けてやり、右脚で押し付けておいて、一匹に石斧を打ち込みつつ左手で棘棒を抜き、トモコの周りから犬を排除、

「トモコ、エイコを護れ! トモコ、分ったか!?」

「ええ!」

言いながら、トモコの周りの犬をまた排除して、とりあえず一匹残らずこっちで引き受けた状態になったので、全速力で先ず自分に集ってる犬どものうち前面の奴らを次々に叩き殺す。


それが終わると、もう一度松明の明かり二つが無事なのを確かめ、奮戦中のトヨキへ援護に行く。

「ッ!」

無声の気合、石斧の刃でトヨキに噛みついてるのを斬捨てる。

気合を声に出してしまうと別の群を呼び寄せるのが早まりそうな気がして、叫べない。


棘で引っ掛けた奴を石斧でカチ割り、トヨの前を通り過ぎて、これも集られているマサを手伝いに歩み寄る。

「ッ!」

また一撃、マサの右腕の奴を斬捨て、振り向いて、トヨの右腕にも居ないか確認。

屈んで膝をつき、トヨの足元の奴らへ棘棒を打ち込んで、剥がれた犬ころを引きずり出して、石斧で打ち殺す。

間違ってトヨに一撃入れたら不味いので。

トヨの周りから剥がし終わると、マサの周りから同様に剥がしてゆく。

棘が無くなって棍棒に成り下がった奴は道の右側へ放り出しておき、次の棘棒を左手で握り、無言でマサから剥がしては斧を打ち込む。

結構な数が居た気がするが、防具が硬くなったお蔭で思いきった対応ができた。

終わった。

「すぐに出よう」

「ああ」

石斧と棘棒を収め、放り出した棍棒を拾い上げ、背負子を担ぎ直す。

歩きだしながら、棍棒に棘を植え直してゆく。


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