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初の依頼を請けて ラクマカの街で出ている依頼のことで相談する

官舎でメガネの小母さん職員に質問した。


「ええ? まだ請けるかどうかを決めかねていて、判断材料として、依頼された小荷物の大きさ、重さだけ知りたい、ということですね?」

「はい。依頼人の方のお名前が、つい先日護衛してきた神殿の方のお名前だったものですから、直接神殿にお伺いして訊こうかとも思ったのですが、失礼かと思い、それにこちらで把握しているかとも思ったものですから」

「ちょっと、待ってくださいね。きっとお伝えしても良いと思うのですけれど、念の為に確認をとりますから」

「はい」


それで廊下に出て、まだ依頼が残っているのを見て安堵し、少し待っていると、早くも呼ばれた。

「はい、お伝えして良いそうです。大きさはこのくらいで、とても軽い物だそうです」

「ははあ、成程……あの、もう一つ質問があるのですが」

「それは、どのようなご質問でしょうか?」

「ここで依頼を請けずに、該当の物が在る場所に直接赴いて、その時に送致が可能と判断したら其処で請けるというのは、無理ですか?」

困ったような顔になり、

「ん~、必ずしも無理ではありませんが、とても事務が面倒くさくなりますねえ。その場合、手数料をとりたくなります。いえ、たしか前例が……ええと、どこだったかしら……、うーん……、えーと……、たしかこの辺に……あ、あった! 一寸待ってくださいね? ええと………………そうか、うん、やっぱり」

顔を上げると、

「手数料、100スタッグかかりますが、それでも良いですか?」

うっ!

「ひゃ、ひゃくすたっぐ、ですか……」

「金貨一枚ですねえ。駆け出しの方には辛いのでは? つまり事務がそれだけ大変なんですよ。どうしますか?」

「今はまだ、請けますとは言えませんが、そのうえでもし向こうで請けるならそれだけ掛かる、という話ですよね」

「そうです。一応そういうことですとお伝えした、ということで、これはもういいのかな?」

「あ、そう、ですよね。はい、分りました。お調べして下さって、有難う御座いました!」

「当たり前ですけれど、あなたが請けようとした時に既に他の誰かが請けてしまっているということも大いにあり得ますからね?」

「それは勿論。本当にお手間をとらせてすいませんでした、こんな時分に」

「いえいえ、仕事ですから。お気になさらず。ちゃんと回答できて私も良かったです」

「では、失礼します」

にっと微笑まれ、ぺこりと会釈して去る。


--


落ち着いて歩きながら、もう一度考える帰り道。


荷物の内容からは、明らかに街道を走り抜ける飛脚が可能。

ぼくの脚力が充分ならば。


問題は、どんな危険が待ち受けているか、まだよく知らない未熟者だと言う事。

そして教えてくれる親切な者にも心当たりがない。


司祭様からすれば、ぼくのような未熟者が無理して挑んで、自分の物を失くされるよりも、手練れの傭兵が安全確実に運んでくれる方が良いに決まってるよな。


あ。


それに、配達とかって、傭兵としての信用が無ければ、そもそも請けさせても貰えないんじゃなかったっけ……うっかりしてたわ。

諦めよう。

はぁ、ガックリだ。


……。

くるり、と回れ右して、まだそんなに遠くなっていない官舎へ引き返す。


「すいませ~ん」

「あら、な~に~?」

メガネの小母さんがひょこっと顔を出した。

「そろそろ閉めるところだったのよぉ?」

「一つだけ、いいですか?」

「はい、どうぞ?」

「ええと、そもそも、送致依頼って、配達依頼と同じで、或る程度信用を得ていない傭兵には請けるチャンスなんて無かったんですよね?」

「まあ、確かにそれは、そうですねえ。ああ、でも……うん、貴方は依頼人の方との面識をつい先日得ていますし、もしも評価が悪くなければ、それも信用に足しこまれますので、請けられる可能性はありますよ」

「そうなんですかっ?」

「ええ、それと貴方がさっき言っていた、向こうで請けるという件ですけど、それなら今回の護衛成功での信用がサカヌキ村では付きますからね。それに今私も把握しましたから、こちらでも付きます」

「そうなんですか!」

「実はそうなんです。信用は依頼を請けた場所でしか付かないって説明を受けていたのでしょう?」

「はい」

「実は、噂や連絡が伝わるのが基本的に遅いから、すぐには付かないというだけで、実際には職員が認識した時点で信用が増していくんです」

「じゃあ、別の職員さんの場合には、まだ信用は無いんですね」

「そういう事です。今あなたに関する情報は、このラクマカでは私だけが新たに把握したという段階です。これから貴方の情報を更新しますので、その後なら全職員がそれを参照しますから」

「分りました。どうも本当に色々有難う御座いました。失礼いたします」

「はい、あ、更新かけるのは明日ですから! 私もう帰宅しますので!」

「何度も……! 重ね重ねすいません! わかりました、有難う御座います! 失礼いたします!」

「はーい!」


チャンスがあるという興奮と、定時ギリギリでお時間をとりまくってしまったのとで、冷や汗の出る思いで立ち去る。


--


「と言う事があったわけで、もしかしたら、ぼくは一人で請けるかもしれないから、一応、念の為、ぼくが急にいなくなってしまう心構えだけはしておいてくれ」

「やめてよ、縁起でもないことを言わないで!」

「うん、わかった」

「うーん、一人でも抜けるとなかなか大変なんだってのは、オメーも自覚あるンだろ? そこまでしてやりてぇもンか?」

「また、悪い病気が始まったんじゃな~い? 奇麗な子を見ると近づきたくなるんでしょ」

「い、いや、まさかそんな。ハハ、相手は司祭様だぞ? 幾らぼくだって、そんな、ハハ」

乾いた笑いしか出ない。


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