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初の依頼を請けて 護衛の目的地ラクマカの街を初めて訪れる

足元は白砂の波打ち際。

海鳥がクカ~と啼く青空を見上げれば、白雲が浮んでいる。

午後の日は、まだまだ高い。


怪我こそ無いものの、疲れてふらふらになった俺達は、ヨタヨタ歩いてロバに尾いてゆく。


早春の筈なのに、寒さも冷えも感じない。

海辺だからだろうか……いや、カスコヨやシズはもう少し冷えていた。

この海浜(かいひん)が特別に温暖なのか。

それとも、偶々(たまたま)そういう日なのか。


熱くなった胸元を吹き抜けてゆく、爽やかな風が、快い。


--


洞穴を抜けた後、街道は最初は左手の磯に波が砕け散っていたが、そのうち浜辺に変り、暫く白砂青松(はくしゃせいしょう)が続いていた。

それがなんだか右手の松林がスカスカになってきたなあ、と思っていたら、いつの間にか右手も海辺になって、今や左右両側から海が迫っている。

街道は白砂青松が続く砂州(さす)の真ん中を通っていた。


いよいよ砂州(さす)(はば)(せば)まって、(はば)(ひろ)も無くなった頃。

街道の左手前方、白砂(はくしゃ)の上に、木造二階建ての官舎が見えた。


元々はハイカラな白塗りの建物だったのだろうが、今ではペンキはぼろぼろに剥げて、下の黒ずんだ板が見えている。

官舎であることは、その前にそそり立つ太い石の角柱に刻まれた記号で判った。


そのすぐ手前。

松並木(まつなみき)が続く道の左右とも、すぐそこは海、というところで、街道の両脇に細い石柱(せきちゅう)が立っていて、『ラクマカの街』と刻んであった。

ラクマカの街の入口にやっと到着したのだ。



ラクマカの街は、この砂州をそのまま進んで抜けた先にあるらしい。

右手に広がる湾の前方に、それっぽい街並みが遠望(えんぼう)できる。


だが、官舎はここにぽつんと一棟(ひとむね)だけ建っている。

官舎の周りは石柱とのどかな白砂青松の街道しかない。

掲示板も広場もない。

他の建物すらない。

今までの村や町では官舎は広場に面していたが、ここではその辺りはどうなってるのだろうか?

というか、今が満潮なのだろうか?

少し潮位が上がったらこの官舎は海に沈んでしまうのでは……?

嵐の時とかあるだろうに、なんでこの官舎はここに建っていられるのだろうか??

なんとも不思議だ。



ともあれ、司祭様のロバに尾いてゆく。


風光明媚でのどかな砂の道には、まばらに人の姿があり、官舎やその先に用事があるのか、歩いてくる人とよくすれ違った。

北側の湾に目を遣れば、何艘もの船が海上をゆったりと動いており、浜辺を散策したり、釣りをしている者の姿も目に入ってくる。


--


北の湾に沿って円弧を描いて曲がる、右手に広がる浜辺を暫く歩いて、或る程度南側の海から離れると、道路沿いに並ぶ商店や民家の間にある狭い路地の一つで左折して、ロバは街に入っていった。


街中は、全体に道が狭くて、かなり雑然としている。

街の建物は全て平屋か、稀に大きな商家が二階家になっている。

三階以上の高さの建物はない。


サカヌキ村の物売りが(ひしめ)く一角のような過密な賑わいではないが、真直ぐに街中を通る、やや幅広の道はそれなりの人で混んでいる。

それと、この街には城壁というものがない。

なんだか、不思議だ。


そのうち大通りに突き当たった。

大通りの中央は石積みがなされていて、周囲より少し高い処に道が通っている。

そこは身なりの良い者ばかりが通行していて、乗騎の者や荷駄の動物は居ない。


そこにロバをつけて下馬し、高い歩道に上ると、依頼主は、


「有難う。御蔭で無事に辿り着けましたわ」

「いえ、こちらこそ、助かりました。本当に有難うございました」

「どう致しまして。ここからは、もう安全ですから、神殿まで行かなくても、護衛は終わらせてよくてよ。実際ここはもう神殿の一部のようなものですから」


それで、依頼を請けた時に言われた通り、依頼主が仕事の成績を記入した札Aを受領し、筆を受け取って確認の署名の後、札Bを渡した。

「概ね仕事に精励する新人。護衛の仕事ぶりには満足」

それが成績評価だった。


これで俺達は、あとはもう戻って報告すれば依頼達成だ。


ここまで、サカヌキ村からは7日かかっていた。

カスコヨの街からは5日。

これなら復路に足止め要素が生じなければ充分な余裕をもって期限内に依頼を達成できる。

それがわかってやっと安心する俺たちだった。


とは言え、防具が心許ない。

ここは一旦この街で作り直してから帰路につく必要があるだろう。

色々と未知の土地だから、用心しないといけない。

一体何日で帰路に出発できるか……。


帰路も、ぼくたちだけで帰る以上、往路以上にしっかり準備しなくてはならない。

食糧は、魚と海藻を獲れるだろうから問題ない。

長くても二十日、いや二週間程度の野営で、準備が調うかどうか……。

未知の場所だからなぁ。


ロバの手綱を牽いた付添人が振り返り、

「分ってるだろうが、帰りは洞穴へは近づくな。山越えをしろ。海辺で岩越をする手もないじゃないが、素人には危険だ。じゃあな」

最後に忠告を授けてくれてから、高い石積みの道の下を司祭様と同方向へ去って行く。


それを見送り、この大通りが見事に一直線に遠くまで伸びているのに気づく。

この先に司祭様の本来の居場所である神殿がある筈だ。

サカヌキ村の神殿を思い出し、ああいうのの大きなものがこの先にあるのだろうと想像する。

石造りで他の建物より抜きんでた高さの、灰色にくすんで、冷え冷えと静まり返り、城壁のように高い塔を持った……。


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