表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/215

初の依頼を請けて シズの村を初めて訪れる

逆光で黒く影になったロバと司祭様が、夕陽に照らされる街道から逸れて、シズ村へ入って行くS字に軽くくねる細い道を辿る。

その後ろをぼくたちも尾いて行く。


路の両脇にお墓が並ぶ場所を抜けると、竪穴住居が不規則に多数あり、そこがシズ村だった。

中央が広く空けられ、広場らしく、高床式の大きな家が一つ建っていて、官舎らしい。

「今日はご苦労様でした。また明朝、夜明け前にここで会いましょう」

一礼して、官舎に入って行く司祭様を見送る。


その後ロバとともに司祭様を待っている付添人と少し話した時、ここにはスラムがあるから、村の北側、海に向かって右手には近づくなと言われた。


--


ぼくたちは野犬の群を撃退した高揚感がまだ残っていたし、まださっきの現場から近かったので、

「じゃあ、さっきの犬ころンとこ行くかっ」

とトヨが言い出したのにすぐに同意して、小走りに戻った。


するとまだ生き残っていた野犬が数匹いて、屍骸に齧り付いていた。

「あ、この野郎!」

とマサが石を拾って投げつけるが、外れる。

ぼくとトヨやエイコも石を投げつけて、マサとぼくとで盾と戈を構えて突進していくと、生き残りどもが唸っていたが、後ろから三人も走って来て、ぼくらが奴らから肉を奪う為に本気で殺しに行ってるのが判ると、ぎりぎりまで踏み留まっていた犬も逃げ出し、その直後にぼくの戈がそこへ突き立った。

「ちっ、逃した!」

肉の取り分が減ったなあ、と思って悔しがったが、まだ遠巻きに唸り声が聞こえる。


「オイ! オレたちで見張ってるから、とりあえず肉だけ切り取れ!」

トヨが叫んで急かす。

俺もトヨとマサと三方に展開して、戈を振り回して藪を叩き、しつこい野犬どもを威嚇しながら、肉を捌いているトモとエコを警護する。

「本当なら肩の骨くらいは欲しいけど、しゃァねえよな!」

「ああ! 依頼請け負ってる間は無理だ。諦めよう!」

「そうだよ、あんまり欲かかない方がいいや」

俺とマサも同意する。


時々思い出したように藪をバシバシ叩いて、野犬にこちらの戦力の存在をアピールし続け、姿を見せた奴には石を投げつけ、そうしてるうちにエコが

「トモ、こんなとこでいいかな~?」

「うん、もういいでしょ」

と立ち上がるので、

「よし、引き揚げるぞッ!」

とトヨが先導して、マサとぼくが最後尾を護衛しながら撤収した。


--


とりあえず集落の西の石積みの石段を下り、広がっている浜辺に降りて、落日の海に感動を覚えつつも急いで肉を海水で洗い、流木や海藻を拾ってこれも洗い、広場へ引き揚げた。

このあとトモが交渉するので、トモは自分の汚れた手と道具だけ洗い、肉の処理はトヨとエコがやった。


ここには官舎だけあって、兵営が無かったので、官舎の人に広場での焚火と野営の許可を貰った。

水場を訊いたら、なんとこの村の中には無くて、近くの小川から水を持ってこないといけないらしい。

「ぅわ、めんどくせェ」

「なんてシケたとこだ……」

とトヨもぼくも呆れたが、そういう土地なんだな。

仕方ない。


もう日暮れも近いので、急いでぼくがトモエコから壺を一つずつ受け取り、左右の手に握って水汲みに走る。

小走りに教えられた南の方向へ行くと、割と近くに小川があったので、足場を探し、水汲み場らしき場所があったので、すぐに駆け寄ると、隣の草藪でがさがさと音がする。

はっとして、壺を足元に置くと膝から棘棒を抜き出して構える。

左手にも腿から棘棒を抜き出して、二刀流にしたが、何だか様子が犬とかとは違って、これは……男の喘ぎ声?

ん?


恐る恐る近づいて覗き込むと、一人の少年と目が合った。

あ……気まずい。

「ごめんっ」

途端に少年が立ち上がって、こちらへ駆け出して来て一言、

「くそっ」

と小さな声で呟くように苛立ちを吐きだし、逃げ去っていった。

はぁ~、一人で慰めていたわけね、それにもっと早く気づいていれば、覗くような無粋な真似をせずに済んだんだけど、さぞかし今の俺はマヌケづらをしてるんだろうな……やれやれ……。

なんか、寝不足やら格闘の疲れやらが一度にどっと出てきた気がして、疲れた。


まあ、野犬とかじゃなくて良かった。

とでも思わないと、やってられないぞ、っと。


疲労の自覚とともに、今更からだのあちこちが傷んでいるのにも気づいて、特に首の痛みに顔を顰めたが、

「さ、急いで水を汲んで行ってやるか!」

と気合を入れ直して、壺二つを水で満たすと、水と土器の合わさったのが二つも肩をもごうとするような重さに、歯を食いしばって一歩一歩慎重に歩いて戻る。

思っていた以上に酷く疲れていた。


--


石段にぶつけないように、壺を一個ずつ上へ置いてから、また両手に提げて広場へ。

仲間が焚火を既に熾してくれていた。

これから肉を炙ろうと串を肉に刺している。


「水、水だよお~!」

やっと持って帰って来られた。

ここには絶対に住みたくない。


ぼくが置いて行った荷物を使って、菰を拡げて囲み始めたトモコが

「おかえりなさい、お疲れ様」

とねぎらいの言葉を掛けてくれる。

「ありがと、よっこいしょ」

とやっと水から解放されて、よろめきながら焚火に近寄り、とりあえず座り込む。

疲れた。

そのままごろっと横になると、腕を枕に忽ち寝入ってしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ