初の依頼を請けて ラウタ村での休息
トヨと行った水場では何かおかしな白昼夢を見たような気がしたものの、まずは夕食に戻り、腹ごしらえをすると、草汁を各自の湯呑に作って啜る。
一息ついたところで、今日これからどうするかを話し合う。
「寝る時の夜露除け風除けの菰だろ? あとは行進に必要な各自の履き物と防具な。できれば夜間戦闘での消耗分も考えて予め用意したいなあ……。それと飯は、まあとりあえずはもういいとして」
「いや、良くないよ。ぼくはもっとお腹いっぱい食べないと、力が出ない気がする」
「マサくんの気分の問題でしょう、それは~」
「本当にもっと食べたいんだけど、我慢するよ、それじゃ」
「あと、ぼくとしては背負子をもう一度作り直しておけば、運びやすいかなって」
「いや、またすぐ逃げ出さなきゃならない破目になるかもしれねえじゃねェか、無駄、無駄」
「そか?」
「う~ん、一応一つだけならいいんじゃない?」
「分かった、ぼくが作ってぼくが担ぐ」
「まァそれならいいか。けど今日はできるだけ休んだ方がいいンじゃねえか?」
そんなわけで、とりあえずは女の子たちが集めて来る草で菰や履物や防具を手入れしたり作り直したりした。
防具と海藻は乾し続けた。
ぼくはそれに加えて一人だけ背負子を作り直す。
ここで作り直した日用雑具とか、採取した素材の使い残しを無駄にしないように、束ねて括り付けて持ってゆく心算。
その為の紐も作らなくちゃならない。
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そんなこんなでやっていると、今日も又、忽ち夕方になってしまった。
「早いなあ、もう日が暮れるぜ」
「ああ、じゃあもうそろそろ鎧を着込まないと駄目か……やだなぁ、ずっとこうしてのんびりしていたいよ……」
「はははは、置いて行っちゃうぞ!」
「とりあえず、水場でもう一度水浴びしてからにしたら?」
「でも……ま、いいか。行こう」
小さな籠に小物優先で防具を詰め込み、作りたての背負子にできるだけ薪や枝きれなどを括り付け、防具の総重量の半分以上を占める胴鎧と肩防具とヘルメットを籠と肩の前後に担ぎあげる。
忘れ物がないか確かめると、道がきれいなので裸足で村の中へ行き、水場へ。
水場ではサカヌキ村と同様に、公然と裸になって水浴し、ここの水は切れるような冷たさがないのでとても快適で、少し長めに楽しんでから上がり、腰巻だけつけて広場へ。
兵営に許可を取って、広場の隅、兵営の壁に防具をひっかけた戈や盾、背負子を立てかけさせてもらって、そこで焚火を熾す。
岬で松葉や松の枝を伐って来たので、火の点きがとても良い。
「やっぱり手拭は欲しいぜ……」
「ああ、水浴びの後、必ず火に当らないといけないもんな、身体を拭けないと」
「ん~、まあ、草でも結構水気は切れるけどね」
「いやいやいや、現にこうしてさァ……」
「防具は湿り気あると辛いよね~」
「うん」
「でも、どのみち焚火は熾すよね」
パチパチ、と焚火が爆ぜる。
「宿屋に泊まるのに濡れたままじゃ不都合でしょう」
「いや、その頃にはオレたちだって手拭くらい買ってる筈だろ」
「売ってる処を見つけられないうちに、お金だけ貰って、夜になっちゃったらどうする……」
「お金貰ったら、最初に市場に行って手拭探そうよ」
「そうしよっか」
次第に明るさを失ってゆく空の下、冷えて来ないうちに早く身体を乾かしたくて、皆で肩を寄せ合うように焚火を囲む。
ただ、同じ早春であっても、山間のサカヌキ村と較べるとこのラウタ村の黄昏時は、それほど冷え込みは厳しくない。
きつい冷え込みに慣れた身にとっては、腰巻一つで焚火に当ってるだけでも結構快適だ。
既に一応の菰は完成しているので、幾つも連結して長く一枚にしたそれで、火に当るぼくたちの周りをぐるりと囲んで、少しでも安心して休めるようにしてある。
菰一枚を隔てて、内側はぼくたちの一夜の仮の宿。
菰は背負子で壁に抑えつけて立たせてある。
風が強く吹くと不安だが、背負子に紐で括り付けてあるので飛ばされたりはしない。
ただ焚火まで吹き寄せられたら火事になるのが怖いだけだ。
暗くなり、膨らんだ月が上って来ると、風向きが変わった。
少し冷えだす。
エイコが真っ先に身体が乾いて、腰巻の上にキンタロ腹掛けを着けだした。
なので悪いけど、エイコに最初に見張りに立ってもらい、その分残りのぼくらは更にくつろぐ。
のんびり紐を作り、串を作り、防具を修繕し、履物を手入れして、傷んだ身体を男女で労わりあって安らいで眠り込み、癒す。
ぼくは白昼夢を見た所為で、何か罪悪感を覚えていた。
それで、できるだけマサに休んでもらい、一人で見張りに立つ時間を長くした。
見張り中は、腰巻とキンタロ腹掛けに手甲脚絆だけつけて、棘棒片手に火の番をしてのんびり過ごした。




