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初の依頼を請けて カスコヨの街を初めて訪れる

海に面するカスコヨの街は、入り江が山の間に複雑に入り組んだ地形をした港町で、街路は多くの人で賑わっていた。


休んでいるロバから降りて、まだハアハアと肩と胸を上下させている司祭様は、

「明日の、日の出前に、広場で」

と言い残して、その時に何かに気づいたらしく、青白い深編笠の内に手を入れて顎を拭うような手ぶりをすると、懐から出した何かでその手を拭うようにして、ロバを牽く付添人と共に去っていった。

恐らくは宿屋へ。



俺達も、いつまでも城壁にもたれかかっても居られない。

とりあえず、背負子ごと素材もかなり失ったので、修繕すら難しい。

それでも明日の夜明けにはまた始まる行軍に追随する為に、履物だけでもなんとかしたい。


一応予備は腹に括り付けているし、草鞋やつっかけ草履もある。

でも、ぼくの草鞋などはそれごと防具が破損していたりして、明日また戦闘があれば、それを切り抜けたとしてもその後がギリギリで、余裕が全く無くなってしまう。


既に日暮れを迎えて空は橙色から赤く変わりつつある。

素材集めは早めにしないといけない。

松明も全員が背負子とともに失ってるし、夜の活動は……広場は篝火があるだろうが、何かは手持ちの明かりの一つも欲しい。

急がないと。


「おい、どうする。二手に分かれて松ぼっくりとか採って来るか?」

マサが効率重視の思考を示すが、ここは安全第一だ。

「莫迦いうなよ。トールの忠告を疎かにするのか? 未知の場所ではどんな危険があるかもわからん。況してやここは街だ。サカヌキ村よりもっと危険だ。絶対に全員が一緒に行動して、はぐれないように固まるんだ。トモとエコは中に入れて、俺達で囲んで、群れて来る奴に攫われないようにするぞ」

トヨも頷いた。

「そうか、わかった、それなら俺は後ろで尾いていくぞ」

トモコが前、エイコが後ろ、それを先頭にトヨが立って、後方左右をマサとぼくで護衛する隊形で動く事にした。

「おい、もう歩けるかエコ? クタクタだろうけど、早くしないと暗くなる」

「うん、行けるよ……」

苦しそうだったが、立ち上がるエイコ。

一緒に鍛えてきただけのことはある。

トヨもトモコに促して、先頭組も立ち上がった。

「皆、履物は大丈夫か?」

一応注意喚起しておく。

ぼくも含めて全員が過酷な使い方をし続けてきたので、あんまりダイジョブじゃなさそうだったけど、一応はまだいざとなれば走れそうだった。


「先ずは、門限を門番に確かめて、可能なだけでいいから修繕用の草を」

「おし!」


そんなわけで、ぼくたちはすぐ背後の城門へと取って返して、例によってトモコが番兵に訊いて、あまり時間がないと知ったので、急いで城壁の外へ出ていき、すぐ近くで草を摘み始めた。

時々立ち上がって振り返り、大声で

「ヘイタイさーん! まだダイジョブですかー!?」

「まーだだよー」

と遣り取りして存在をアピールし、門限時刻に気付かずに城門を締め切られてしまわないように、割と必死だった。


どうにかまあまあ修繕の足しになる程度の草を各自で採ると、

「おい、そろそろ戻るぞ」

「待ってー、あと少し~」

とエコがやはり遅れ気味で、じゃあってんで、その間にマサとひとっ走りして松ぼっくり5,6個と松明用の枝を二本、さくっと採って来た。


そうしているうちに、遂に

「ヘイタイさーん! まだダイジョブですかー!?」

の応えが

「そろそろだぞー」

に変ったので、急いで城門へ戻る。


城門のトンネルをすんなり通り抜けようとしたが、さっきからお世話になってた番兵さんに、

「なあ、お前たちは、司祭様の護衛だな?」

と呼び止められた。

「はい」

あまり迂闊にぽろぽろ零す訳には行かないので、返事だけするトモコ。

「いや何、さっきは血相を変えて何かから逃げて来ていただろう? 何かあったのかってな」

「それは、何か恐ろしいものに追いかけられていたそうです。私達も正体は見てません」

「そうか。どこで見たんだ?」

「ジンメ渓谷のくびれ目です」

「あんなところからか! それは大変だったな。お疲れさん。今夜はゆっくり休んで行けよ」

ただの疑問と同情だったらしい。

賄賂を要求する小役人の言いがかり、とかでなくて良かった。

良い人だ。

「はい、有難う御座います」

一礼して去り、城内へ入る。


--


旅人にとっては掏りや強盗や美人局や詐欺師など繁栄につきもののリスクもあるカスコヨの街だが、さすがに官舎の傍ならば比較的治安が良い。

官舎の前に、明日の待ち合わせ場所に指定された広場があった。


俺たちには殆ど所持金がないので、宿屋になど泊まれない。

仕方なく、広場の隅で菰に包まって互いに寄り添い、風や人を避けて休憩した。


持参した携行食糧を装帯の蔓籠の一つから少し取り出して、ナイフで削ってぼりぼりと齧り、そればかりだと喉に詰まるので、街の水道から流れ出ている水を手に掬って、口に含んで飲み下した。

ここでも水道や水浴場は無料なのが本当に有難い。


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