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初の依頼を請けて 最初の野営地の夜の戦いを終えて

マサノリとトヨキの動きを把握する。

それぞれが一匹ずつ相手している。

トヨキは要領を掴んだらしく、武器のリーチを活かして、全力で打ち込み、一撃でデカ虫を殺した。

上手いなあ!

マサノリは怪物の動きをなんとか盾と石斧で抑え込めているが、与えているダメージはそこそこで、どうも一撃が致命的ではない。

「ぴょんぴょん跳んでるのはデカい虫だ!一気に跳びこんで来ないなら、門に脚をかけたところで叩き潰せ!」

「おうっ!」「ああ!」

が、言い終わらぬうちに、またも跳び込んできたので、気色悪さにうっと避けると目の前に着地したデカ虫!

盾とウォーピックを構えた俺は、全身にトゲトゲしく生やした殺意を地面に突き刺して即座に突進!

盾ごしに体当たり!

激突!

一瞬、跳ね返されかけて踏ん張った!

硬い!

だが動きが止まった処へ、

「っいャァッ!」

気合を入れて最初からトドメを刺しに行く。

夜目で目測が狂うのか、それとも虫のグネる身体が異常なのか、一撃が急所に中らなかったけれども、ぐしゃ、と蟲がひしゃげる。

今だ!


盾で蟲を斜め上から地面に押さえつけつつ、ピックを叩き込む!

ピックは棘が折れ、欠け、抜けて、殆ど単なる枝切れに近くなっている。

もう一度激しく目と目の間へ叩き込む!

蟲は、びくっとして、だらりとのびた。


トドメをブチ込んだまま、歯の欠けたウォーピックを手放し、すぐに予備の棘棒(ウォーピック)を右膝から抜き出す。


狭いから二人に任せるかと一旦後退してきた俺達だが、このままだと二人が疲弊しちまうかもな。

俺もやっぱり行こう。


土塁にまた駆け上がると、丁度怪物どもが次々にマサたちに襲い掛かろうとしてたのへ、間に合った。

鎧と武器の重量を支えながら二人の背後をすり抜け、マサを一寸後ろに追いやってタンク役を代わりに引き受け、マサと一匹ずつ受け持つ、途端に自分の盾に齧りついて来た気色悪い怪物の頭に、間髪入れずに棘棒を目と目の間らしき箇所へ、イカを〆るイメージで棘の一本を叩きこンで即死させ、そのまま振り抜いて地面へ払い落とす。

クリティカルヒット、かな?

あまりの悍しさに却って感覚がマヒして無感動になったか、冷静にそう感想を抱いて、次の怪物へ立ち向かう。

が、横からビシャッと返り血が右腕から下に……右斜め後ろに位置するマサの盾から飛んできた、くそっ。

……前へ出過ぎたか。


トヨキに

「代わる!」

と声をかけ、

「おう!」

と叫ぶトヨと左腕を擦り合い、入れ替わる。

やはりトヨには、俺達の中央の位置、司令塔に立っていて貰いたいからな。

奴に前衛に出ずっぱりになってもらっちゃ、折角の長所も活かせない。


前衛が二枚になって、安定した。

気色悪い怪物を盾で受け止めて、石斧や棘棒で即死させるだけの簡単なお仕事です。

「ふんっ、ビビりさえしなければ、コイツら弱いぜ!」

叫んで、また一匹、目と目の間を〆て、そのまま地面へ叩き落す。

土塁の下の地面には怪物の屍骸が溜まっていて、いくら全身を鎧に包んでいても、絶対に落ちたくない。

キショイ……ッ!


気付くとトヨキは後方、閉塞位置の更に後方で、トモエコと一緒に戦っていた。

いつの間にかまた、バリケードから粗朶の束を越えて閉塞位置のバリケードも越えて、後方へ流れてた奴が居たらしい。

こっちが一段落ついたので、マサを促して応援に駆け付ける。

トモコが戈でエコの盾から払い落とした奴にトヨが戈でトドメを刺す。

マサが足でそいつを後ろへ蹴り込みながら、早くもまた跳び込んできた次の怪物へ跳びかかった。

俺もトヨが横へ転がした奴へ襲い掛かる。


--


俺たちは力闘を続け、デカ蟲がもう周りに居なくなるまで、次々に叩き潰した。


それでも、もしかしたらまだ数匹臆病に立ち回った怪物が残ったりしていて、こちらが油断した瞬間を見澄まして襲い掛かってくる、などということも想像されて、夜通し警戒を続けなければならないのか、と気を抜けなかった。

俺たちには夜闇の中を見通せる能力など無いのだから、いつ終わったと言い切ることもできなかった。

初めての夜間戦闘ということもあり、食い殺しに来た群に襲われるのが初めてでもあり、とても疲れた。


ただ、死体の山が残されていると、別のおかしな怪物が引き寄せられてやって来ないとも限らない。

それで、少なくとも門扉内部の死体は総て濠に投げ入れようかと思い、司祭様の処へ報告に行った。

すると、女司祭の付添い人が

「そんなに警戒しなくても、もう大丈夫だぞ」

と云うので、俺達はやっと心が安らいだ。


「外の犬は放っておいて、とりあえず虫の屍骸だけ一か所に集めておいて、休息を取れ」

と言って貰えたので、虫の屍骸を入口バリケード左脇に集めてから、草束をたわし代わりに、じゃんじゃん跳ね釣瓶で水を汲み上げては全身の汚れを洗い流した。

しかし、気持ち悪い体液は洗い流せても、その跡に青黒い穢れが装備にも身体にも沁みついたように残り、いくら洗い流しても消えない。


当惑してると、トモコが怯えた顔で

「魔物だわ……」

と呟いた。

「どうすればいいの?」

「たしか神官様しか祓えないって……」

とトモコが云うと、司祭様がやってきた。


司祭様は少しの間、何かの場所を確かめていたようだったが、立ち位置を決めると、印を組んで祈祷を始めた。

それで俺達も黙って観ていると、やがて眼には見えない白い輝きが感じられ始めた。

異様で不思議な感覚に、仲間と互いに顔を見合わせ、口から言葉が零れだしそうになるのを堪えて黙り続けていると、そのうちに輝きが止んだ感じになり、気がついてみれば、そこら中にあった穢れが総て消えていた。

そうして疲労もかなり癒えていた。

また、浄化された虫の怪物の屍骸もすべて塵と化して、風に吹き散らされて消えていった。

有難さに、思わず俺達は全員がひれ伏して司祭様を拝んだ。


その後、残った犬ころは付添人が一人で片づけたのを知らされた。

あらためて篝火に薪をくべて、新たに焚火を作って周りで暖まり、熱でしゅうしゅう湯気を立てる鎧の破損に気付いて頭を抱えながらも、とりあえずは一息ついた。


--


その夜は交代で見張りを続け、犬の屍骸から容易に切り取れる肉だけ採って、焼いて腹いっぱい食ってから寝た。

犬のガラは濠に放り込んだ。


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