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初の依頼を請けて 最初の野営地の夜

風が凪ぎ、また吹きだして、夕空に輝いていた上弦の月も沈んでしまい、一際暗くなる。

篝火のゴオォ…ボオォ……と風に鳴る音と、パチパチと爆ぜて漂って来る煙の匂いだけが風景に変化を与え続ける。


「エイコ、代わるから、食っておけよ」

「有難う、もうそんな時間だった……」

「何か変わったものはなかった?」

「無さそう、多分」

「うん、わかった」


エイコと見張り番を交代して、篝火の光に照らされない場所に立つ。

満天に星々が瞬く中、空には何も飛んでいないが、山肌には一部、雲が棚引いていて、不気味だ。



疲労から緊張が緩んで寝てしまわないように、見張り番を何度か交代しながら朝まで見張る。

休む時にも、いつでも即座に戦えるように武装したままなので、眠りはそもそも浅い。

起こされても眠いままだ。


寝ぼけた頭を刺激する為に、手指を動かし続ける工夫をしないと、眠り込みそうだ。

それで俺は薪をナイフで削る。

樹皮を剥ぎ取り、角を面取りし、鉋屑みたいにナイフの刃で薄く削り取る。



時間が来たら俺達もマサノリとトモコを起こして交代して貰おう、そう思っていたが、案外トモコが先に目覚めて、マサノリを起こして交代しに来てくれたので、後を任せて寝た。


--


薪の削りカスを下に撒いた地面の菰と頭上に張られた菰との間で転寝していた俺は、マサノリの怒鳴る声とトモコがカンカン打ち鳴らす版木の音で、何かの夢の中から現実へ叩き出された。


「起きろぉ! 敵だぁ! 起きろぉ! 起きろぉ!」

カーンカーン!カンカンカン!


「うるせえな!なんだ!?」

と、いつの間にやら誰かが被せてくれていた,夜露を凌ぐ追加の菰を払い除けながら立ち上がると、

「犬ッ! 多分! 野犬!」

と叫びながら、入口左側の見張り場所での監視を続けるトモコ。

「なら、やっちまうかぁ!……ふわぁ~」

と隣でトヨキが欠伸しながら伸びをする。


「あとなんか、変な影もあった!」

「えぇ? ダイジョブかあ!?」

と声を挙げながら、戦の前に腕や脚を曲げたり伸ばしたり振り回したりして備えると、

「隙間に誘い込んで首を打ち落とそうぜ!」

と、篝火の火を松明に移しながら叫ぶトヨキに、

「いや、ここ戸口じゃねえし!」

と言い返す。


「犬なら出口を塞げ! あと、多分飛び越えてくるぞ!」

と付添人が叫ぶ。

「じゃあ、どこで待機すればいい!?」

「お前たちは入口の左脇へ固まれ!」

松明の火を未点灯の篝火の一つに移したトヨキが弓矢を手に土塁上の入口左の射撃位置に駆け上がり、手にした松明を入口外の坂道へ放り込む。

入れ違いに右側の土塁上から降りて来たマサノリと急いでバリケードの出口に駆けつけて、閉塞の場合に備えて配置しておいたバリケードの最後の一枚に二人で体重をかけて押し込む。

これでこの野営地のバリケードは全部が仕事中になった。


それが済むと同時に、入口左脇の土塁上に駆け上がる。

バリケードの内側で、戈を構えて襲撃者に備える。

吊った盾は脇にやっている。

俺の近くへ上がって外の暗闇を観察していたエイコが

「来たよ!」

と叫ぶと、盾を構える。

戈も持って来てるが、土塀に立てかけている。

土塁の上の限られた場所に五人が犇めいているので、盾で防御に専念することに決めたらしい。

それを見て、吊った盾を首からはずして、

「これ、必要なら使えっ」

とエイコの傍に立て掛け、土塀の上から外を見る。


濠と土塁としっかりした土塀に堅く守られた野営地へ、襲撃者が唯一入って来易くなっている坂道を、犬の群が貪欲さを隠さずに唸りをあげて駆け上がり、それと何かが妙な動きをしながら這い上がって来る……!


心臓がドキドキ強く打ち始めて、落ち着かなくなり、俺は大声で叫ばずにはいられなくなった。

「やるぞおオオ!」

俺が叫びだすと、トヨキとマサノリもうるさく叫びだした。

女子も金切り声で叫んで応えた。

これは練習中に気合入れて叫びまくっていたスコッレの影響かもしれん……来た!


勢い良く坂道を駆け上がって来た犬がバリケードに阻まれるが、跳び越えてくる!

すかさずトヨキが土塀とバリケードの挟角から弓を射る。

方向さえ過たなければ、必ず当たるほど群れている。

ギャイーン!

先ず一匹を矢が貫き、犬は悲鳴をあげて濠に転がり落ちた。

坂のバリケードを跳び越えた犬も突進の勢いを殺されて、野営地入口の高さのあるバリケードを跳び越そうとしてもなかなか越えられない。

体当たりをしたり、地面を掘ったり、バリケードに跳びかかって爪を立てて更にジャンプを試みようとしているが、猫のように鮮やかには登れずに、惜しいところで落ちて行く。

このバリケードの絶妙な高さは、先人の経験が生きているのだろう。

「これなら楽勝だろ!」

とトヨキが叫び、次々に射てゆく。

たしかに、群とは言っても二十匹も居なさそうだ。


出番が無くて閑なので、後方にトヨが放り出していた棒網を取りに行き、待ち伏せ位置後方でヒュンヒュン振り回してみた。

音が威嚇的効果を発揮するといいなあと思ったが、別に効果は無かった。

襲って来る犬ころが減るにつれて、トヨも狙いづらくなってきて、あまり射たなくなってきた。

棒網を置いて、再び戈を手に仲間の処へ行く。


そこへ

「来るぞ!」

と、俺達の対面、入口の右側に陣取っている司祭様の付添人が警告してきた。



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