スカーフの少女
時は少し遡る。
あのスカーフの少女は、人を焦らし玩ぶ類の少女だったが、次第にべったり尾いてくるようになり、困るのに退いてくれないし、苛々させられた俺はつい、彼女の手を引いて
「来いよ」
「ちょっと痛いわ、どこへ行くの」
「いいから。怖いのか?」
「別に、でも強引で」
「厭か?」
「……」
「厭でも連れていくからな」
そうして小さな橋よりこっちは小石だらけなので履き物を履いて、背中におぶるとしがみついてきて黙ってしまったので、そのまま仮拠点だった塹壕小屋に連れ込み、既に行きがけに燻しは済ませてあったので、
「何これ、あれは何?」
と何にでも興味を示す彼女に適当に教えてやりながら、誰も来ないし、押し倒して割と強引にやってしまった。
「か……帰して」
「もう、遅いよ」
「やめて……やめて……」
「計算ずくだろ?」
「や……やめて」
少女は叫びながら、俺の掌をよけようとする。
「そんなに暴れるなよ、ドミニクさん」
「…………!」
少女の目が大きく見開かれた。
「悪いけど、君の事は少し調べさせてもらったんだ、ほんの好奇心からね」
「やめて……お願い!」
掌の熱が少女のお腹に伝わり、じんわりと温めてゆく。
「叫ぶなよ、どうせここまで来たからには、君の方にだって下心があったってことだろ? 今更、じたばたすんねいッッ」
「ああ……たすけて……」
心地良く温められた内臓が、ぐにゅるぐにゅりと蠢き出すのが掌に感じられた。
「女はいつもそう言う、けど、男が欲しいのがミエミエさ」
「いや……いやあ……」
「ふ……可愛いな、おまえ。いや、いやって言いながら、反応してるぜ」
「言わないで……」
「欲しいんだろ?」
「あ……やめて……」
「今、気持ち良くしてやるぜ」
「おねがい……いや……ゆるして……」
「観念しろや、オメーもう二度と元の身体には戻れねぇぜっ、オラッ」
「はぐぅっ……、あああ……」
「どう、こことか良い?」
「あああっ」
「おっ、いい反応じゃねえかよ、鳴けオラ」
「ああんっ」
「そら見ろ、感じちゃってるじゃないか」
「ああ……」
「他には誰も居ねえよ、幾らでも良い声で鳴いていいぜ」
「誰か……、助けてぇ……」
「ふふふ、誰も来ねえよ、こんなとこ」
「もう許して……いやあ……ゆるしてぇ」
「逃がしゃしねえよ、へへ……」
「はあっ、はあっ」
「ん~、これはどうだ?」
「あうぅっ……はぁっ、はぁっ」
「そうか成程、あれの後でここをこうするといいのか、面白いなあ」
「あー、あーっ、イグゥーッ! ふーっふぅーっ」
「イけよ、牝はイけばイくほど味が良くなるんだぜ」
「あっ……あっああ」
頭の働かなくなった少女を玩具にし続けて愉しみ、気がつけばもう日が暮れていた。
このまま無断外泊なんてことになれば、下手すると誘拐犯にされてしまう。
草試合のギャラリー仲間にドミと呼ばれていたその少女は、未亡人の母親と二人暮らしで、元々多少奔放だったようだが、さすがに真っ暗になる迄家に帰らずに居たら、どうなるか。
それで急いで本拠にとんで帰り、一言
「ごめん、急な用事で、今夜は家畜小屋泊まりかも! じゃあな!」
「えっ!?」
と驚く仲間に言い残すと、大急ぎで取って返して、塹壕に一人残して来た腰の立たない少女をおぶって、念の為に家から持って来て両手の間に渡した二本の松明に彼女のきれいなハート型のお尻を載せて、走っている間にずり落ちないようにして、ぼくも既に結構消耗していたのに、どんどん暗くなってゆく中を必死になって走り続けて、つっかけで尾根道を登り、門番に言い訳して入れてもらい、彼女の要領を得ない指さし説明に従って夜の要塞内を駆けずり回り、やっとで母親が心配して待つ家に送り届けた。
そして母親が若い男を家に入れるのに難色を示すのに少女がごねて「もう夜遅いから」と無理に母親にせがんでぼくを泊めさせてくれて、精魂尽き果て倒れ込みそうだったぼくも大変感謝して土間に寝かせてもらったのだが、それだけでは終わらずに、真夜中に目覚めると少女がぼくに添い寝していて、今度は少女の方から彼女の寝床に引きずり込む形でまたおっぱじめたので、それに気づいた眦をつりあげた女盛りの母親が乱入すると腕づくで止めさせようとした(当然だ)が、彼女に唆されて、ぼくは母親まで襲ってしまい、娘の言によれば男日照りだったらしい母親は所詮は一匹の牝豚だったことが判明。
その最中に少女に
「ねえ、お母さんと一緒になってあげてよ」
とお願いされ、
「どういうことなんだ?」
「お母さん、若い時にあたしを産んでから一人で苦労してきたから、もう男の人とはずっとご無沙汰なの。あなたなら凄いからあたしたち二人でも相手にできるでしょ、ね」
休まず突き上げて肉の海原に波を起こしながら
「俺には仲間が居るんだよ。お前たちの相手ばかりしていられないって。忙しい身体なんだよ、これでもさ」
と断ろうとしたが、家族になって呉れれば財産があなたの物になるわよ、と耳元で囁かれ、でも家の財産というものはぼくの好きに出来るわけではなくそのくせ管理の責任はしっかりあることを知っているので、迷いながらも難色を示すと、もう黙ってありとあらゆる軟らかな膚で攻め立ててきたが、土台体力が違うのであっさり返り討ちにしてやって、ものが考えられなくなってしまった牝が二匹泥のように眠り込んだその家の主(むしろ前後から揺さぶられる神輿?)になるべきなのかどうか、悩みかけて、でも疲労困憊して寝不足気味のぼくの軽くなったおつむでは、幾ら考えても碌な結論は導けそうも無いから、ひとまず問題に向き合うのを先送りして、ぼくも二人の間で朝まで眠り込んだ。
翌朝、凄く久しぶりに他人任せで朝食にありつき、なんだか胸に迫る物があったので、涙を零すまいとして、でも無理で、自分の匙でスープを掬って味わいながら頬を涙が流れ落ちたのを少女に見つかり、
「どうしたの?」
「なんか、こういう普通の朝食が凄く有難くて、胸が締め付けられたような気がした」
途端に、二やぁ……、と伏目で口角を持ち上げるタチの悪そうな笑顔になると、
「あたしたちのものになれば、これからも毎日、こうしてあ・げ・る♪」
ハァ、と溜息をついて、気持ちを切り替えると、
「あ、もしもその場合には、俺はお前の母親じゃなくて、お前と一緒になるからな?」
「へ?」
「嬉しそうだな」
「だって、え? あたし? お母さんは?」
「お母さんの相手もしてあげるよ、心配するな」
「わあ、それいいわ、いいわよ、結婚してあげる!」
「結婚となれば色々面倒だろ? 年の差があると普通は年嵩の方が先に逝っちまうから、手続きが煩わしいんだよ。同じくらいの齢の方がその点気楽だ」
「ねえ、本当にいいの?」
「『もしも』って言ったろ? まだ充分考えてねえんだ。こういう事はきちんとしなくちゃいけないし、だからこそしっかり考えねえとあとで苦労するんだ。少し考えさせろよ」
「わかったわ、あたし待つわ、少しなら!」
「一年も待たせる心算はねえけど、二、三日ですぐって訳には行かねえよ、気長に代りの奴も探して待ってろよ」
「ふふふ……」
「なんだよその笑いは……」
とりあえずその日は有難く朝食を済ませて片づけを手伝うと、もうそれ以上絡みつかれて引き留められる前にさっさと少女の家から引き揚げて、仲間の待つ拠点へ戻った。




