依頼請負を望み、面接に臨む
「廊下の掲示板に出ていた仕事を請けたいんですが・・」
そう切り出したトモコを先頭に、俺たち五人が訪れたのは、サカヌキ村の兵舎の中にある守備隊長室だった。
書記の人には、予め話を通してあった。
書類の板切れの山が積まれた簡素な机と、椅子と棚。
室内唯一の飾りは、壁に掛けられた旗。恐らくこの国の旗なのだろう。
椅子に背筋を伸ばして腰掛けたままこちらに視線を向けたのは、眉間に皺が刻まれ、頬の肉が削げ落ちた厳しい顔つきの、灰色の髪をした中年の男性、瞳は褐色。
針金のように細く、贅肉は全くなさそうだ。
黒く煤けた、使い古されて細かな傷だらけの、比較的軽めに作ってある薄手の硬革鎧の胴部分だけ、それと同じく黒い革の手甲を、平時の最低限の防備として身につけ、傍の壁に長剣と盾を立てかけている。
その上の壁には銅の胸甲と兜が掛っている。
たっぷり一分間、俺たち全員を値踏みするように観察したあとで、首を横に振りながら、守備隊長はきっぱりと口にした。
「いや、お前達はまだ力が足りない。やる気があるなら、あと一年はしっかり鍛えて、出直して来ることだ」
「……わかりました。失礼しました」
「うむ」
兵舎から退出して広場に出たぼくたちは、それなりには成長した心算だっただけに、さすがに少しこたえていたが、敢えて胸を張って強がっていた。
「な、だから言ったろ?」
「はー、ッたく、しょぼっ」
「これで分ったでしょ、来年までなんとかがんばろ?」
「やりたかったなあ~……」
「まだ言ってる」
「だってさぁ、俺達もう子供じゃないんだぜ、エコ? 稼ぎたいじゃん……、はぁ~」
ぼくがやりたいと言い、トヨキがやれると言い張り、マサノリがそれに引っ張られる感じで、仕方なくトモコが当たってみるだけは当たってみようと言ってくれて、それで仕事を請けに行ってみたのだが、結果はまあ、残念だった。
狩りとスコッレの練習でもっと鍛えないと駄目だろう。
だが、怪我をしてもいけない。
狩りは特に安全に、罠で仕留めて、とにかく血肉となるものを得る手段。
それで改良された体格を基に、スコッレで他人の動きを見て動くのに慣れて、闘い方も工夫して、鍛え上げる。
やるしかない。
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そういうわけで、俺達は更に一年、できるだけ飢えにまで至らぬように食糧採集に努力して、日常的な空腹に耐えながら、排便の処理や掃除、漁や猟やどんぐり拾いなど食事の手間に洗濯と繕い物、家や備品の手入れと防備の拡張、薬草を摘んだり保存食作りや貯蔵、粘土や薪の採取に土器や炭の窯焼きなど、日常の様々な雑務を順繰りに総て一つ一つ自分の手でこなし、他人と時折交わり競った。
多少怪我とか病気とかトラブルはあったのだが、重大な事態にまでは到らずに済んだ。
一年間、弛まずに自分を鍛え上げる中で、遂には成獣の猪が率いる一家を見つけて、殺し間に誘い込んで、まとめて狩るまでになった。
準備も後片付けも、皮の処理も上手にできて、革素材が増えた。
それで去年初挑戦した時よりも余裕ができたので、愈々再挑戦することにした。
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六年目。
四年前に建てた石碑を今年も掃除して、手を合わせながら、心はこの先へと向かっていて、果たして今年こそ大丈夫だろうか……と不安に揺れる。
思わず、父さん母さんみんな、受かるように希っていてくれ、とすがるような気持ちになってしまった。
今回は少し前から兵舎を訪れてどんな依頼が出ているのかを調べ、幾つか目星をつけて、前日のうちに書記の人に話を通しておいた。
昨日はそれから念入りに住まいを片付け、旅に必要な物だけを携帯し、残りは家に整頓して収めておいたりした。
今日は夜明けに虫除けの為にしっかり燻煙しながら、念入りに周囲に苔や草を被せてカモフラージュして、そこに俺達の家があるのが分らないように隠蔽すると、最後に屋根の排気口の出口に炭を突っ込んで塞ぎ、土を被せ、苔を被せ、土ごと取ってきた草で覆った。
これで、そこに何があるか知らなければ、たとえ踏んだり蹴ったりしてもなかなか家や作業小屋の存在には気がつかないだろう。
いや、まあ、ここまで来れば防御壁や資材の存在で誰かが拠点にしていることはバレバレになるだろうが……。
さあ、行くぞ。
拙作をお読み頂き、実に有難うございます。
傭兵になるまでにメモ書きでは4年だったのに、作文したら5年経ってしまいました。
元々初日時点で小6から中一に上がるくらいの頃の年齢と想像していたので、中高の六年間を拠点確保と自立、最後の鍛錬に充てた感じになりました。
つまり五年目の始まる時点で面接に落ちたのは、飛び級に挑んで落ちたみたいな感じ……かな?
一年間必死に工夫を重ねて努力邁進したお蔭で、六年目の始まりに、つまり五年間の頑張りの末に、順当に(?)合格です。大学じゃないけど。
どちらかというと、旧制中学から旧制高校だな、五年制だから。
……へえ~、旧制女学校って旧制中学相当で、四年制だったのか……今知った。
でも、本当に大変なのはこれから。




