傭兵志願者の一行
作業BGM:
『クリムゾンコレクション6 "Ardas" (Answers Your Prayers) 〜祈り〜』 by Singh kaur
『ちいさい秋みつけた』 by ボニージャックス
"Wicked Game" by Chris Isaak
『なごり雪』『まちぶせ』『『いちご白書』をもう一度』by石川ひとみ
"You Spin Me Round" by Dead Or Alive
"Angel 07(Video 1985)" by Hubert Kah <- Now in Heavy Rotation !!
今年から愈々、傭兵として活動を開始する心算だ。
今日からだ。
素人の狩りではできなかったことをする。
金を稼ぐのだ。
それができればぼくたちも愈々大人で、この村の者として税金が掛かる。
今まで小部落の人々に猶予してもらっていた入会権などの割賦払いも始まる。
傭兵は、要するに危険な便利屋ってやつだ。
まともな者ならやりたがらない危険な命懸けの仕事を引き受けて、その分高い報酬を受け取る。
危険度に応じて報酬は増すが、運も含めて実力が足りなければ命を失う惧れがある。
危険からうまく逃げのびても、依頼を達成できなければ信用を失う。
五度も失敗を重ねれば、「他所へ行きな」と云われるようになってしまう。
仕事は有る事もあれば、無い事もある。
簡単な仕事であっても、それなりの日数がかかるものばかり。
傭兵になるのに、誰の許可も要らない。
ただ、「この仕事を請けたいんだが・・」と依頼主に切り出せば、その日からなれる。
そうして一度生き残って依頼を果たせば、傭兵の誰それと呼ばれるようになる。
仕事の多くは護衛だが、街道巡回警備や戦争の助っ人であることもあるし、送致や探索もあるし、商人めいた買付、それにもっと難しい依頼であることもある。
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五年目の記念の祈りを済ませた後、ジンメ川に掛かる小さな橋へ歩いてゆきながら、トモコが口を開いた。
「今更だけど、本当に依頼を請けに行く心算なのね?」
「依頼があるかどうか分からないし、あってもオレ達に請けられる依頼かどうか分からねェけどな、やる心算では、いるぜ」
「なんだったらトモ一人で留守番していてくれても良いんだ」
「行かないなんて言っていないわ。人手は多い方が良いし、一人で残るなんて、不安でどうにかなりそうよ」
「ごめん」
「準備はしてきたし、ただのちょっとした確認よ。エコちゃんだって行くんだし」
「みんな一緒の方がい~よ」
「そうだね」
「それじゃ、上へ行こうか」
全員、キンタロ腹掛けと腰巻を着けた上に装帯を着け、板草鞋を履いて、手甲脚絆を着けている。
背中には背負子。
背負子は、腰につけた受け具で荷重を受け止めている。
背負子の上方の左右の縦棒に掛けた縄を、真ん中を広めにして、額に当てて、背負子のバランスを取っている。
背負子には肩紐もあるが、基本的には使わず、腰と額だけで支えている。
いざとなれば、顎を出せば額で帯状にしてある縄が額から外れて、ぱっと腰を動かせば背負子が後ろに落ちるから、逃げるにせよ、盾を取り出してダメージを減殺するにせよ、わざわざ肩帯から肩と腕を抜いてやっこらしょっとどっこいせってな具合にのったりと背負子を下ろしているよりも数段素早くやれる。
背負子には大籠を縛り付け、隙間に盾と菰を挿し込んで背負っている。
盗まれないように、一つ一つに紐を掛けた。
大籠には大笊で蓋をして結わえた。
籠の中には防具の胴鎧や肩防具等を納め、背負子の下には柴と薪の束を吊るし、背負子の上方には採集した草の束を括り付けた。
腹から胸にかけて着装している緩々の装帯には、小さな蔓籠を幾つか提げ、懐には巾着──紐で織った布袋──をしまっていた。
金は大部分トモコが握っていて、他の四人の巾着には銅貨が五枚ずつだけ入っている。
それがちゃりちゃり音がしないように、葉っぱとかを一緒に居れて挿んだりしてある。
トモコの懐には、大切な拠点建設許可証の木札も収まっている。
お殿様のお墨付きのやつだ。
装帯が緩々なのは、本来は鎧の上から装備するのに、今は大籠に鎧を放り込んで背負ってるからだ。
装帯は、腹に紐を編んだベルトを巻いて、ずり落ちないように肩帯を取り付けたものだ。
細い補強材を挿し込んで型崩れを防いでいる。
腹のベルトや肩帯の途中に小さな蔓籠を提げて、細々した物を分類整理して運べる利点がある。
小さな蔓籠は、掌大の大きさの小物入れだ。
蓋つきだから、うっかり蹴躓いたり、装着したまま寝転がって休んでも、物が転がり出て散らばったりしない。
ナイフや木の匙や火打石などの小道具とか紐のような用途の多い消耗品を容れておいたり、革製ミニ水筒に木の枝の蓋をしたものを収めていたりする。
女子は戈、男子は尖端を有する戈(尖端を有するので戟か?)を杖代わりにした。
トヨだけは、更に弓と棒網を背負子に括り付けていた。
棒網はスコッレ専用の道具だったが、今は縄の先端に石の錘を嵌めた骨を括り付けて、攻撃力を増していた。
広々とした場所でだけ使える武器だが、威嚇には持ってこいだ。
トヨが弓と棒網を追加で携行するように、ぼくは『棘棒』を携行していた。
原始的なWarPickで、こいつを大型にすればぼくたちが既に使ってる戈になる。
戈と同様に、柄に棘を一列に三本植えて、敵に正しい向きで叩きつけて刺し、撲る武器だ。
棘も戈同様に交換できるから、戈より小さい棘の予備も持って来た。
ただ、戦闘中に一々交換している閑はない。
棘が駄目になったらすぐに予備に握り替える為に、攻撃役の多いぼくは五本も携行してる。
あまり動きの邪魔にならないように、またどんな体勢からでもどれかは即座に引き抜けるように、身体のあちこちに縛り付けてきた。
マサは基本的に盾役なので、杖として使える戈以外には、用途の広い石斧を二本だけ携え、盾を補強する板材の予備をその分持って来た。
杖をついて道を歩くうちに、小さな橋に差し掛かる。
天気が良いので、川の水面がキラキラ輝いて、透明な水に川底が透けて見えて、面白い。
それで皆が石段を登りかけて止まっているので、
「はい、見てないで、転ばないように気をつけて渡ろう」
と注意喚起する。
マサが
「わかってるけど、見てごらんよ。ほら、キラキラと波が奇麗だ」
しっかり踏ん張りながら、ニコニコ笑顔で言ってくるので、ぼくは先に渡っておいて、空いてる石段に腰掛けて、橋の板材に手をついて、のんびり覗き込む。
「たしかに、下手すると、いや、上手く行けばか、もう何日も戻って来られないかもしれないしな」
「……」
「綺麗だなァ」
「ああ……」
すると橋を渡って来たエコに
「ほら、そんなに覗き込むと危ないわよ~」
と窘められ、感傷から引き戻された。
ふん、と鼻息を吐いて立ち上がり、苦笑して手を差しのべると、エコの手を取り、石段を下りるのを補助した。
拙作をお読み頂き、実に有難うございます。




